第6話:聖子。
ある日のこと、
柊一郎は会社の用事で詩織の学校の前をバイクで通りかかった時、偶然に
詩織と聖子が下校して来るところに、出くわした。
詩織と聖子は自分たちの後ろにバイクが止まった気配がしたので、危ない
と思って避けようと振り向いた。
「お〜今、帰りか?、詩織」
そう言って柊一郎は被っていたフルフェイスを脱いだ。
「え、うそ」
詩織は無言で聖子の腕をひっぱって、柊一郎をシカトしようとした。
「なんだ、なんだ・・・無視か?、そこの女子高生」
「詩織、あれ誰? なに者?」
詩織は自分に新しい家族ができたことは聖子に話していたが
具体的なことは何一つ話してなかったので、何も知らない聖子は、
柊一郎を怪しんだ。
「もしかして・・・キミノカレシ・・・とか」
「まじで、まじで?・・・どうよ」
そう言って聖子は親指を立てた。
詩織は眉をしかめて慌てて首を横に振って手で違う違うって
意思表示して見せた。
「彼氏なんて、とんでもない」
「なんて言うか・・・あの人、私のお兄ちゃんって言うか・・・ 」
「お兄ちゃん?って言うかって?、あんたひとりっ子でしょうが」
「いろいろ訳があって・・・」
「あとで、ちゃんと話すから・・・」
「あ、あんたんちのお母さん再婚したって言ってた・・・」
「新しい家族って・・・もしかして、あれ?」
聖子は柊一郎を指差した。
詩織は、そうそうって言うようにうなずいた。
「そこの女子ふたり・・・お取り込み中のところ、なんですけど・・・」
「ここにいるイケメンを置いてきぼりにしないでくれる?」
「どうやら俺たち赤い糸で結ばれてるみたいだからさ、そこの喫茶店で
コーシーでも飲んでいかないか??」
「おごるぜ」
「まじで・・・」
その言葉に食いついたのは聖子だった。
「あの急いでるんじゃ、お仕事ほうっておいていいんですか?」
すかさす詩織が言った。
「いいのいいの、仕事ったってほとんど 午前中に終わっちゃてるから・・・
どうせ帰ったって、暇だし、じじいとにらめっこしてても気分が
落ち込むだけだしさ」
で、三人で喫茶店に入って柊一郎と詩織の関係を聖子に語って聞かせた。
「ふ〜ん、なるほどね・・・ 」
そう言って聖子は、改めて柊一郎を品定めするように見た。
「ちゃんと見るとさ、この人けっこうイケメンじゃん 」
「兄妹ったって血は繋がってないんだから・・・いい関係になったりして?」
「ありうるっしょ」
柊一郎と詩織はふたり揃って、ありえないって否定した。
「ほら、ふたりとも息ぴったりじゃん」
つづく。
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