第2話 中央フリーウェイ
とりあえず国道を目指して県道をひた走る。道路はかなり荒れていて、落石なども放置されたままだ。10kmほど進むと、車が玉突き事故を起こしていて道路を塞いでいた。
「もう少しで国道なんだけど、まいったな」
俺はそうひとりごちて、事故車を力いっぱい持ち上げてみた。上がる。レベル26でもレベル1の一般人と比べると膂力は数十倍になるのだから当然か。5分ほど作業して、軽自動車1台がすり抜けられるだけのスペースを確保した。
国道も同様に荒れていたが、片側2車線なので通り抜けられないような箇所はない。
しばらく進むと路上に熊が現れた。レベルは21。このあたりにヒグマは生息しないので元はツキノワグマだったはずなのだが、グリズリーぐらいのサイズ感がある。車を壊されたら敵わないので、すぐに車を止めて下車する。そしてこちらに向かって突進してくる熊を【アイスランス】で串刺しにして倒した。
レベル26と言ってもスキルが育っているので、この程度の相手ならば楽勝だ。
「さてと、このまま東京まで行ってみるか」
たしか
その時、遠くで灯りが見えた。中央自動車道の陸橋のあたりだ。一般道を走っている車は未だに見ていないが、高速道路を使っている人は結構いるのかもしれない。俺は最寄りのインターチェンジから中央自動車道に乗って、東京を目指した。
しばらく走ってから、談合坂のサービスエリアでちょっと休憩することにする。他に車はいないので路肩に駐めて休憩しても問題なさそうだが、習性というやつだ。自分がよく知っている場所がどのように変化したのか確認したい。
サービスエリアにはたくさんの車が止まっていたが、多くの車は放置車両のようだった。だが、3台の大型トラックがエンジンを掛けたままの状態で停車していて、3名の男女が集まって話をしていた。
俺の車を見た瞬間、彼らは銃を取り出して身構える。
おいおいここは本当に日本か? ずいぶんと物騒になったもんだ。
「敵意はない。撃たないでくれ!」
俺はゆっくりと車から降りて、両手を上に挙げた。一方で魔法を放つ準備も怠らない。
「チ、レベル26の強者だ。こんな拳銃じゃ役に立たん。M2を持って来い」
レベル18の男がレベル14の男に指示する。もう1人は女でレベル15だ。M2とはブローニングM2、つまり俺が持っているのと同じ重機関銃だ。あんな物で撃たれたらかなわん。
俺はアイテムボックスからM2を取り出すと彼らに向かって狙いを定めた。
「探しものはこれかな?」
「なっ……! アイテムボックス持ち……あんた、一体何者だ!?」
「最初に言ったように敵意はない。それにこの状況になったらもう勝ち目が無いのはあんたにもわかるだろ?」
自分たちの下半身が石化しているのに彼らはようやく気づいた。レベル14の男がパニック状態になって拳銃を乱射してくるが、一足早く俺のほうが動いていた。手刀で拳銃を叩き落して、M2をその男の頭に突きつける。
「殺すつもりはないって言ってるだろ。お前たちも銃を捨てろ。そうすれば石化を解いてやる」
レベル18の男とレベル15の女は顔を見合わせてしばらく考えていたが、嘆息して銃を手放し両手を挙げた。俺は彼らの銃を回収してから、約束通り石化を解く。
「敵意はないと言われてもね。こんなところで見知らぬ人間に出会ったら十中八九強盗なんだからしかたないだろう?」
本当に敵意が無いのが分かると、レベル18の男が安心したように言った。
「あんた会社の人間じゃないだろ? レベル26だったら世間でもそこそこ名が売れてそうなもんだけどさ、初めて見る顔だよ」
女の方が続けていった。
「会社?」
「ええ、エンジェリック・トランスポーテーション。天使直轄の運送会社よ」
しばらく留守にしている間に、
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