第22話 すばらしい残念賞

 彼女はただ色っぽいだけじゃない。圧倒的な強者であるのは一目瞭然だった。機嫌を損ねてはならない。衣服からはみ出しそうになっている乳首をコリコリとつねってみたかったが自重する。


 天使ラクスティーケの額にも紋章はあるが、それは自分たちや魔物のものとは全く異なる複雑な幾何学模様だった。


「ではくじを引くが良いぞ」

 瞬く間に至近距離まで近づいてきたラクスティーケはそういうと前かがみになって両手を開いた。このようなポーズを取られるとどうしても胸に視線がいってしまう。


 普通の状態だったならば神々しさに圧倒され、邪な欲望はもたなかっただろう。だが、今日は朝からオーク肉を食べている。昨晩は一番上等なオークオフィサーの肉だった。俺の意図を無視して下半身にあるとある器官が垂直に近い角度で独立を宣言する。


「あらあら、うふふふ……♡」

 怒られるかと思ったが、天使ラクスティーケはむしろ嬉しそうに舌なめずりした。


「だが、ただの人間と目合まぐわう訳にはいかぬ。亜神に進化できたならば相手してやってもよいぞ」

 亜神? と疑問に思ったが、その疑問を口にする前にラクスティーケが動いた。彼女の両手から神々しい光が放たれると、目の前にスロットマシンが出現する。


 ストップボタンが付いたタイプのものだ。こう見えて大学生の頃はパチスロにはまったことがある。一時的に大儲けしたが、最終的には赤字になって夏休みのバイト代が飛んだので自慢できることではないが、一応経験者だ。


『777』の状態だったスロットマシンのリールが回転し始める。常人ならば残像しか見えないようなスピードだが、今の俺はレベルアップのお陰で動体視力がかなり良くなっていた。


『7』以外のコマにはゴブリンやポーションなどのイラストのあるダンジョン仕様――俺は自分自身に知力向上のバフを掛けて、極限まで集中力を高めた。リールに描かれたコマの順番を暗記するためだ。


「そこだぁ!」

 まずは1つ目の『7』をゲット。とはいえ左側のリールは『7』のコマが多く、連続しているところも多いので当然だ。

 2つ目も順当に『7』を引き当てる。問題は最後のリールだ。『7』が1つしか無いのでかなり難しい。だが、パターンは暗記している。


「どおりゃぁっ!」

 俺は裂帛の気合でボタンを押下した。

 最後のリールが減速し、『ポーション』『スライム』と来て『7』が表示される。


「よっしゃー!」

 そう喜んだのもつかの間、リールは無情にももう1コマ回転し『ゴブリン』のコマで止まった。


 経験値やアイテム稼ぎのために虐殺しまくってきたゴブリンにまさかこんなところで手痛い反撃を食らうとは……。


「くそっ、もう一回やってやる。すぐにもう10枚集めてやる!」

 すっかりギャンブラー脳になっていた。


「あら、残念。惜しかったね~。だけど先着11名さまには豪華粗品をプレゼント中だぞ。良かったね!」


「豪華だったら粗品じゃありませんよ?」

 と思ったが、無論口には出さない。期待に胸を膨らませて待っていると、スロットマシンが虚空に消え失せ、その場所にゴーグルが現れた。


「ちゃっちゃらーん♪ 叡智のグラスぅ!――レベル8の【鑑定】と【分析】スキル付き。魔力感知もできるぞ」

 そう言うとラクスティーケは「あら、かわいい猫ちゃん!」と叫んで、アヤさんをモフりだした。場の緊張が緩和される。


 圧倒的な神気に気圧され、アヤさんは借りてきた猫のように緊張していた。が、しばらくモフられていると徐々にリラックスするようになった。今はゴロゴロと喉を鳴らしながらラクスティーケの乳に自分の額を押し付けている。


「お、あんなところにほくろが! アヤさんGJ!」

 顕になった「かけまくもかしこき突起」を俺は脳裏に焼き付けた。これだけでご飯3杯はいけそうだ。ぐふふ。



******



うっかり一話飛ばして投稿していたため急遽連続投稿しました。

先に23話を読んでしまった方、申し訳ございませんでした。

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