赤霧の少女 ~勝手気ままな少女の冒険譚~

星ノ夢

第一部

第一章 孤児院編

第1話 プロローグ

 炎が広がり、その熱が空気を焦がす。

 建物は焼け落ち、瓦礫は炭となり、地面にはクレーターができあがった。

 人々は逃げ惑い、叫び声を上げながら走り回る。

 暴れまわる、無数の化け物。それは、まるで地獄絵図だった。

 だが、この惨劇はまだ始まったばかりである。




 ――それから、どれほどの時間が経っただろうか。

 辺り一面、火の海だ。

 燃え盛る建物、倒壊した家々。そして、死屍累々と横たわる人々。

 阿鼻叫喚の声が木霊する中、化け物は一人の少女へと群がっていく。

 少女は、まだ幼い少女であった。

 しかし、そんな少女が、今、化け物に食われようとしていた。

 それを止める者はいない。

 ――なぜならば、もう、生きている者は、少女しか残っていないのだから……。




 化け物の手が、少女に触れる寸前。

 突然少女を中心に赤い霧のようなものが噴き出し、彼女の身体を包み込んだ。

 それは徐々に広がっていき、やがて周囲の景色を赤く染め上げていく。

 その光景を目の当たりにした化け物は、思わず後ずさった。

 やがて霧の中から姿を現したのは、真紅のドレスに身を包んだ美しい少女の姿だった。その瞳は真紅に輝き、髪もまた鮮やかな赤色に変化している。化け物は唸り声を上げると、再度少女に向かって襲いかかった。

 だが次の瞬間、突如発生した紅蓮の炎に飲み込まれ、一瞬にして塵となって消えた。

 それを見ていた周りの化け物たちが、怒りの雄叫びを上げながら一斉に襲いかかってくる。

 すると、少女の体から噴き出る炎が一層激しく燃え上がり、彼女を包み込むようにして巨大な火柱が上がった。紅蓮の炎は、たちまちのうちに化け物たちを飲み込み、焼き尽くす。

 化け物たちは断末魔の叫びを上げながら、次々と消滅していった。

 辺りに静寂が戻り、そこには少女の姿だけが残されていた。赤い霧は消え去り、少女の姿も元に戻る。そして眠るように瞼を閉じると、その体はゆっくりと地面に崩れ落ちていった――。




 騒ぎを聞きつけたのか、複数の影が近づき、倒れる少女を見下ろした。

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