第6話 妹のお弁当を持って行った

≪どうだった?友太の様子は≫


≪やっぱり、何かありそうです。≫


≪そうか……。≫


 イギリスにいる友也さんと今日の出来事についてLINEをしていた。


 友太君が植野さんに料理を作ってもらっている間私はこっそり見つからないように二階から見ていたが、植野さんとてもかわいかったなぁ。それに二人とも仲が良くて楽しそうだった。


 正直私も混ざって植野さんと仲良くなりたかったな。ふらっと出て行って驚かしても良かったかな?でもそうすると友太君、もう口聞いてくれなくなりそう……。


 それにしても植野さんが言っていた、私のせいで友太君が友達を作らなくなってしまった出来事ってなんなんだろう?とても気になるけど、友太君からは喋ってくれなさそう。どうしようかな……。


 私はスマホのキーボードをたたいて友也さんに返信する。


≪絶対、その出来事について調べて見せます。≫


≪よろしく頼む。≫


 絶対に知らなきゃいけない……。例え友太君が拒んだとしても!!



 次の日の朝何時ものように起きると、リビングの机の上にはランチクロスに包まれた弁当箱が置いてあった。

 

 そういえば昨日お弁当を作るねって言ってたな。お昼は学食で買ったり朝学校へ行く前にコンビニに寄ったりでこれまた出費がつらかった。

 

 本当にクレアはありがたい存在だ。


 俺はリュックに弁当箱を入れて家を出る。だが俺は後悔する。この時中身を確認しなかった事を……。




「クレアちゃん一緒に行こう」

「はい!」


 私は二人の仲良くなった女子二人とともに次の授業のために別の教室へと向かう。


 転校してきたこの高校はイギリスに住んでいた時に通っていた学校と違って生徒が多く、校舎内も広くて迷子になりそうだった。


 だけど仲良くなったこの二人の友達のおかげで迷子にならないで良くなりそうだ。

やっぱり日本の人は親切と言うの本当だった。


 いつか友太君と並んで行きたいな……。


「ねぇ、クレアちゃんってどんな男の子がタイプなの?」

「え……えっと……その……」


 いきなり恥ずかしい質問をされて顔が赤くなっていくのを感じた。ど、どうしよう……なんて答えたら……。


「いきなりそんな質問したらダメだよー。困ってるじゃんクレアちゃん」

「えーだって気になるじゃーん」

「えっと……じゃあ秘密という事で」


「ぶー」と友達は落胆していたが、今は秘密という事にしておこうかな。


 そんな談笑をしていると目の前を友太君が通りかかる。私はと手を振るが友太君はちらっと見て小さく会釈をして通り過ぎて行ってしまった。


 他人の振りをしてすごくかわいいな友太君……。そんな友太君を二人はなぜか疑い深い目でずっと睨みつけていた。なんであんな目で友太君を見てるんだろう……?


「友太君っていつも一人でいるんですか?」


 まずは軽い疑問から投げかける事にする。いきなり本題に入るのは私の中ではご法度だからだ。


「そうだね、いつも一人でいるね」

「なんか感じが悪いって言うか、寄ってくるなオーラを出してるよねー」

「そんな事ないんじゃ……?」


 あまりの言われように少しムッとしてしまったがなんとか堪える。


「まぁそうだと思いたいのは山々なんだけどねー」

「小学生の頃の黒い噂もあるし……」

「え……?」


 それってもしかして昨日植野さんと話してたこと……??なんでそれが黒い噂に発展するんだろう……??


「まぁ一応同じクラスだしクレアちゃんも知っといた方がいいかもね……」


 その子は私の耳元で静かに友太君の黒い噂を話し始めた。





 昼休憩俺はリュックからお弁当箱を取り出す。


 思い返してみれば学校の教室で弁当を食べるのなんて何年ぶりなんだろう……?小学生ぶりくらいだろうか?あの時はたくさんの友達と……。


 いや思い出すのやめよう……。


「お、弁当なんて珍しいなー」

「学食とかばっかじゃ食費馬鹿にならないしな」


 小原はずっと俺がランチクロスをほどくのを焼きそばパンを頬張りながら見ていた。別にそんな見せもんでもないと思うけどなぁ……。


 ランチクロスをほどくとお弁当箱を二段となっていた。おそらく上はおかず類、下はご飯類となっているのであろう……。


 さてまずは上の方から開けると、そこには色とりどりのおかずが入っていた。からあげや卵焼き、タコさんウインナーと言ったおかずはもちろん。プチトマトやレタスなど野菜も豊富に入っていた。


「結構いい感じじゃん」

「まぁ、惣菜だけどな」


 そう言いながら次はご飯の入ってる層の蓋を開けると、なんとそこには綺麗なハートの形をしたおにぎりが2つも入っているではありませんか……。


 て……うわぁぁぁぁぁ!!俺は急いで蓋を閉めた。やばいハートはまずいですよクレアさん!!これじゃあ誰かに作ってもらった弁当ってバレちゃうじゃん!!


「なんか見ちゃいけないものをみた気がする……」


 小原は愛想笑いをしているが……、ダメだ小原それが俺に一番効く……。

とりあえず何か言わないと。


「いやぁー今日朝からテンションが上がっちゃてさー、なんかハートのおにぎりを作っちゃてさー」

「お……おう……」


 まずい……今考えた渾身のネタが滑ってしまった。これはきまずいな……。


 俺が頭を抱えていると、教室にいた男子がざわつき始めた。なんだろうと思って見て見ると、そこにいたのはお弁当を持った植野だった。


「お弁当を作って来たんだけど、良かったら食べて」


 机に置かれたのはピンク色のランチクロスに包まれた、俺が持ってきたと弁当箱と同じ大きさのものだった。


 それを見た小原は俺に「彼女かー?」とからかうように聞くと、それを聞いた植野が「違いますから」ときっぱりと言い俺の前の席に座る。


 俺はクレアの弁当を見られたらまずいと思い、植野が座る直前に隠すが少し遅かった。


「何隠したの?」

「お弁当ですよ」


 小原はニヤニヤと笑いながら、そう言うと植野は「見せてよ」と睨みつけるように言ってくる。


 これは観念するしかないな……。俺は隠した弁当箱を植野に見せると、すかさずふたを開けて「誰に作ってもらったの?」と質問する。


「コンビニの惣菜の寄せ集めだよ……」


 俺がそう言ってると植野は、今度は下の層の蓋を開ける。


 するとハート柄のおにぎりを見た植野は「本当に自分で作ったの?」と疑いの目を向けてきた。


 あーこれは終わった……。ハート型のおにぎりは言い訳できない……。いや男久野原ここもなんとか乗り切れるはず!!


「いやー、さっきも話したんだけど朝からテンションが上がっちゃてさー」

「は……はぁ??」


 植野と小原は二人そろって俺の話に困惑している様子だったが、クレアが作ったとバレなきゃそれでいい……。


 その後俺は植野とクレアが作ったお弁当を両方ともなんとか食べきることができた。クレアも植野も両方とも美味しかった。めっちゃお腹膨れて苦しかったけど……。

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