第3話(1)新メンバー加入
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「では、改めて、ご挨拶をよろしくお願いいたします……」
「鷺沼魅蘭ですわ、どうぞよろしく!」
ヴィオラに促され、魅蘭が挨拶する。
「……」
皆が拍手する。
「……というわけで、我らが川崎ステラに頼もしい仲間が一人増えました。非常に喜ばしいことですね……」
「ってかよお……」
「どうかしましたか、真珠さん?」
「良いのかよ、ヴィオラ?」
「良いのかとは?」
ヴィオラが首を傾げる。
「いや、なんというか……」
「この間の試合で皆さんもご覧になったように、実力の程は申し分ありません」
「それはそうかもしれねえけど……」
真珠が頭を掻く。
「なにか問題が?」
「ってか、アンタはそれで良いのか?」
真珠は魅蘭を指差す。魅蘭が首を傾げる。
「どういうことですの?」
「溝ノ口がライバルなんだろう?」
真珠が最愛を指し示しながら尋ねる。
「ええ、そうですわ」
魅蘭が頷く。
「それが一緒のチームになっちまって良いのか?」
「まあ、対戦相手というのも良いものですが……ワタクシ、気付いてしまいましたの」
「気付いた?」
「ええ」
「何に?」
「一緒のチームならば、いつでもどこでも手合わせが出来るではありませんか!」
「て、手合わせって……」
真珠が戸惑う。
「そうは思いませんこと⁉」
「ま、まあ、言わんとしていることは分からねえでもねえけど……」
魅蘭の勢いに圧され、真珠は頷く。
「柔軟やストレッチも済んだところで……ランニングをしましょうか」
ヴィオラが指示を出し、六人が二列になって、コートの周りを走り始める。
「はははっ! ワタクシがトップですわ~!」
「ま、待て!」
猛ダッシュを始める魅蘭に対し、真珠が声を上げる。
「待ちませんわ~!」
「な、なんだと⁉」
「おほほっ! 捕まえてごらんなさい~!」
「このおっ!」
「む!」
「うおおっ!」
「ワタクシに着いてくるとは、なかなかやりますわね!」
「負けてらんねえんだよ!」
「ならば、こちらも!」
「なっ⁉ 更にペースを⁉」
「いかがですか⁉」
「へっ! まだだぜ!」
「む! まだ着いてこれますか! ならば!」
「おおおっ!」
「お二方とも、盛り上がっているところたいへん恐縮なのですが……」
ヴィオラが口を開く。
「ええっ?」
「なんだよ、ヴィオラ!」
「これは競争ではありません。ペースをいたずらに乱さないで下さい……」
「はっ、なにを言い出すかと思えば!」
「ああ、オレらの迸る情熱は止められねえぜ!」
魅蘭と真珠が笑う。
「ペースを落として下さい……!」
「「はっ⁉」」
ヴィオラの静かに響く低音の声に魅蘭と真珠がはっとなる。
「……二度も同じことを言わせないで下さい……!」
「え、ええ……」
「わ、分かったぜ……」
魅蘭と真珠はペースを落とす。
「よろしい」
ヴィオラが笑顔を見せる。
「はあ……アホが増えた……」
ヴィオラと最愛の後方を走る雛子がため息交じりで呟く。
「ははっ、さすがはヴィオラ、もう手懐けちゃったね」
雛子の隣を走る円が笑う。
「呑気に笑っている場合でもないでしょう……」
「そう?」
「そうよ」
「結構賑やかになって良いと思うけど……」
「え?」
「なんだか良いムードメーカーになってくれそうじゃない?」
「サークルクラッシャー属性もあるけど?」
「う……」
円が言葉に詰まる。
「それでもいいのかしら?」
「ま、まあ、その辺には目を瞑るとして……」
「人が良いわね、色んな意味で……」
「いやあ……色んな意味で?」
円が雛子の顔を見る。雛子が魅蘭に向かって顎をしゃくる。
「あの子の実力は見たでしょ?」
「う、うん……」
「ポジションの適性とかもあるだろうけど……」
「あっ……」
円が何かに気付く。
「ようやく気付いたようね……」
「うん、このままだと……」
「そう……」
「真珠の相方……取られちゃうね、雛子」
「だ、誰が相方よ! って、そうじゃなくて!」
円が首を傾げる。
「違うの?」
「違うわよ!」
「分かっているよ……レギュラーでしょ?」
「そ、そうよ……」
「このままだと一人は確実に漏れちゃうね」
「そういうこと」
雛子が頷く。
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