第2話(2)ライバル?

※前の話のラストを少し修正しました。


赤みがかった髪をツインテールにした女子→赤みがかったロングヘアーで小柄な女子




「ふふふ……」


「誰だ?」


 真珠が目を細める。


「まさか、フットサルを始められているとは……」


「か、語り出した!」


 円が戸惑う。


「学園中、どこも探してもいない、登下校のルートを張っていてもいない、ご自宅をアポなしで訪問してもいない……ないない尽くしでまったく途方に暮れていましたわ……」


「さりげなくヤバいこと言っているわね……」


 雛子が顔をしかめる。


「そんな中、フットサルチームに入ったという噂を耳にしましたわ。初めは何かの冗談かと思ったのですが……本当にいらっしゃいましたわね」


「……」


「ふふっ、驚きのあまり声も出ませんか……」


「……どちら様ですか?」


「なっ⁉」


 ロングヘアーの女子が愕然とする。


「なんだよ、知り合いじゃねえのか?」


「ええ、そうだと思いますが……」


 真珠の問いに最愛が首を傾げる。


「すみません、練習中ですので……」


「どうぞお帰り下さい」


 円と雛子が女子に伝える。


「ちょ、ちょっと待って下さい! 溝ノ口最愛さん、まさか忘れたのですか⁉」


「なぜわたくしの名前を……」


「それは当然、ワタクシは貴女の宿敵であり、ライバルだからです!」


 女子が最愛をビシっと指差す。


「同じような意味じゃねえか」


 真珠がボソッと呟く。


「なんだ、宿敵いたんじゃん」


「どうやらそのようですわね……」


 円の言葉に最愛は若干戸惑いながら頷く。


「自覚していないってどういうことなのよ……本当にライバル?」


 雛子が呆れ気味の視線を女子に向ける。


「ほ、本当ですわ!」


「な~んか疑わしいわね……」


「怪しいな……」


 雛子と真珠が揃って腕を組む。円が尋ねる。


「なにかライバルだと証明出来るものはありますか?」


「え? 最愛さんとは同じ学園ですわ、ほら、学生証!」


 女子が制服の内ポケットから学生証を取り出して見せる。


「ふむ……そういえば、制服も同じ……」


「待て、円、学生証を偽造した可能性もあるぜ」


「そんな面倒なことは致しませんわ!」


「その制服もコスプレの可能性が……」


「そんなことも致しません!」


「う~ん……」


「やっぱり怪しいわね……」


 真珠と雛子がまじまじと女子を見つめる。


「あ、貴女がた、初対面だというのに随分と失礼ですわね……と、というか、最愛さんからもなにかおっしゃって下さいな」


 最愛が戸惑いながらも口を開く。


「ええっと、付属の初等部の子でしょうか……?」


「確かに小柄ですけど、そこまで小さくありませんわ!」


「中等部一年生の……」


「違いますわ!」


「二年生の……」


「違います!」


「三年生の……」


「何故中等部で細かく刻んでくるのですか⁉ ワタクシはれっきとした高等部ですわ!」


「ええっ⁉」


 最愛が後方に軽くのけ反る。


「そ、そんなに驚くことかしら⁉」


「こ、後輩の方?」


「だから違います! 年下から離れて!」


「ああ、先輩でしたか、これは失礼しましたわ」


「同級生です!」


「えっと、留年なされた……」


「留年などしていません! 何故に同い年だということを頑なに認めませんの⁉」


「同い年……」


 最愛が顎に手を当てる。


「そうですわ」


「端のクラスの……」


「違います‼」


「隣のクラスの……」


「だから違います‼」


「それとは反対側の隣のクラスの……」


「違います‼ 同じクラスですわ‼」


「え、同じクラス……?」


「何故それを忘れることが出来るのですか⁉」


「前の方の席に座っていらっしゃる……?」


「いいえ!」


「ならば、後ろの方の席……?」


「いいえ‼」


「どこの席の方?」


「貴女の隣ですわ!」


「ええっ⁉」


「こちらがええっ⁉ですわよ! ほぼ毎日顔を合わせてどうして忘れられるのですか⁉」


「う~む……」


 最愛が女子の頭を見つめる。女子がハッとなる。


「! まさかと思いますが……これでどうかしら⁉」


 女子がロングヘアーをツインテールにする。最愛が両手をポンと叩く。


「ああ、誰かと思ったら、鷺沼魅蘭さぎぬまみらんさん!」


「やっとお分かりに⁉」


「雰囲気が違うから分かりませんでしたわ」


「もしかして……今までワタクシのことをツインテールで認識していたのですか……」


「まあ、そうですね」


 最愛が頷く。


「~~! な、なんということ! この屈辱は今度晴らしてみせますわ!」


 魅蘭が最愛を再びビシっと指差して、その場を去る。ヴィオラとすれ違いになる。


「あら、あの子は確か……」


「ヴィオラ、知っているの?」


「ええ、今度の試合の相手チーム所属の子です。挨拶に来たのかしら?」


「えっ⁉」


 円たちがヴィオラの言葉に驚く。


「試合……」


 最愛が笑みを浮かべる。

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