第38話 サラマンダーの反撃
火柱が消えた空間の中にポツンと居たのは一匹のモンスター。
赤黒いサラマンダーと言う蜥蜴のモンスターで、何故暴れ回っていた。
その様子を疎ましく思うレイユ。眉根を寄せてポツリと呟いた。
「如何してこんな所にサラマンダーが居るの。おかしいでわ」
「レイユ、私はあんまり知らないけど、サラマンダーって暑い所に居るんじゃないの?」
無知な未来はレイユに訊ねる。するとレイユも「そのはずよ」と頷いてくれた。
けれどその間も表情は変らず、疎ましさのあまり苛立っているようだった。
「本来なら火山地帯みたいな所に生息しているモンスターよ。精霊としての側面もあるから、滅多に姿は現さないし攻撃的になったりしないの」
「でもさっきは攻撃的だったよ?」
「縄張りに入った敵には容赦しないの。人間だってそうでしょ?」
「あー、それ分かるかも」
未来は桜の花見や運動会の場所取りを想像した。
熱くなる人は熱くなっちゃうから、頬をポリポリ掻いてしまう。
理解しやすい例えが出て来たは良いものの、サラマンダーがここに居る理由にはならない。ここは火山でも何でもないし、近くに温泉がある訳でもないらしい。
だとしたら意図的にこんな湿った土地にやって来るだろうか? いいやそれは高確率出ない。
未来とレイユは一つ結論に至った。
「「誰かが連れて来たんだ」」
お互いが同時に言ったので見事にハモった。
けれどそうしている間にもサラマンダーの苛立ちメーターはコクコクと上がっていき、再び火柱を発生させようとしていた。
赤黒い体が灼熱色に変色し出し、背中から炎が揺ら揺ら高温で揺らめき始める。
「レイユ、明らかにヤバいよ? 如何する」
「如何するも何も、残念だけど倒すしかないでしょ」
「だよね。それじゃあちょっと行って来るね。こう言うのは速攻でやらないと!」
手遅れになる前に速攻で蹴りを付ける。
一撃与えて離脱する。ヒットエンドラン戦法を使うことにした未来は、翼を尖らせて槍のの様にする。
全身を回転させてエネルギーを蓄えると、サラマンダーの体を貫きに向かった。
落下するエネルギーも加わって相当の破壊力になったはずだ。
これなら楽勝。未来はもう勝利を確信していたが、サラマンダーはそう甘いモンスターじゃなかった。
「ブビィィィィィィ、ハッッッッッッッッッッ!」
未来が突っ込んでいると、サラマンダーは炎をぶっ放した。
強烈な熱波が槍の様に体を包んでいた未来のことを押し返す。
ただの波じゃない。熱を持った波だ。あまりの熱さのせいで未来は発狂した。
「熱い熱い熱い熱い! 熱い、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
未来は槍形態を解き放ち、青空へと一気に上昇した。
翼をはためかせ、全身を焼かれそうになった状態から解放された。
あまりにも苦しい。痛い、痛い、痛すぎる。未来は絶句して死を覚悟したが生き残り、頭を抱えて動けなくなってしまった。
「痛い。苦しい。本当に死ぬかと思った」
「大丈夫? 私、怪我は治せないからよろしくね」
「そんな魔法使い……じゃなかった。あんなの近付けないよ!」
「そうね。これだと倒すどころか近付けないわ」
レイユも苦汁を舐めていた。サラマンダーは火柱を作るための魔力を未来の迎撃に使ってしまったせいで諦めたらしい。けれど残った魔力は完全に未来とレイユ用に取っていた。
如何やら未来が牙を剥いてしまったせいで、サラマンダーを本気にさせてしまったらしく、一層手強い相手になった。
かと言って張本人の未来は一切近付けない。ここはレイユが頼りだと視線を飛ばすと、早速魔法を放つ用意をしていた。
流石レイユ、一発で仕留めてよ。と心の中で応援する。放たれたのは氷属性の魔法だった。
「《
先程よりも大きな氷の塊、氷塊ができた。
杖から放たれた魔法がサラマンダーに向かって飛んで行く。
これだけの大きさならきっと倒せる。そう思ったのも束の間。一瞬でサラマンダーに溶かされた。強烈な熱波にはレイユの魔法すら効かないらしい。
「チッ。やっぱりダメね」
「レイユ、水の魔法はやっぱり……」
「使えないわよ。私が使えるのは、炎と氷と雷だけ。この三つで三現象なのよ」
「だよねー」
もう諦めの境地に居た。今ある武器でサラマンダーを倒すしかないのだ。
それが分かっていてもできない。何ともむず痒い状況に立たされた。
未来とレイユは考えた。サラマンダーの攻撃が止んでいる隙を突くしかない。
「こうなったら遠距離攻撃で」
「分かっているわ。合わせるわよ」
「任せてよ。私も出し惜しみしないから」
未来は羽根を飛ばした。まるで剣のようで、何本もの羽根が飛んで行く。
レイユも氷属性の魔法、《
二つの技が重なり合う。未来の追尾する羽根剣が凍り出し、サラマンダーの体を貫く。
「これで当たってくれないともう勝ち目が……」
「安心しなさい。効いているみたいよ。微かにだけどね」
レイユの言う通り、微かにダメージが入っていた。
サラマンダーの体を何本もの羽根が貫いて、小さな穴を空けた。
けれどサラマンダーはまるで屈しない。空けられた穴を利用して炎をガスバーナーみたいく噴射すると、余計に隙が無くなって攻撃できなくなっていた。
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