#27 あなたの精気、吸い取っちゃうぞ♪

 私の最期は、快楽の頂だった。


 頭が真っ白になって、気が付いたら、真っ白な空間にいた。しばらく惚けていると、目の前に『あなたは転生しました』と表示された。転生の意味が分からなった。


 とりあえず、シャワーを浴びたいと言うと、必要なものは、イメージすれば具現化できると言われた。意味がよくわからないけど、温かいシャワーを思い出して、手をかざすと、シャワーヘッドから、温かいシャワーが出てきた。


 ボディーソープも、シャンプーも、イメージすると掌に沸いて出る。これは便利だ。


 さっぱりしたので、服が着たいと言ったら、それも自分で具現化してくださいと言われたので、今日、着て来た服をイメージすると、みるみる服が出来上がった。すごい。毎日の服選びに気を使わなくてすむかも。


 帰りたいと言うと、転生したので帰れませんと言われた。VTuberになるか、消滅するかの二択らしい。消滅するのは嫌だし、VTuberってよく知らないけど、それしかないので、VTuberになった。


 さて、これからどうしよう。




 春花はるか夏海なつみ秋月あきつき冬雪ふゆきの元に、迷子の転生VTuberがいると連絡が入った。本人は、VTuberに転生することを選んだが、今でもこの世界は夢で、現実に帰りたいと駄々をこねているという。




「はじめまして」

「あんた、誰?」

「この、サイバー空間でVTuberやってる、春花はるか夏海なつみ秋月あきつき冬雪ふゆきよ」

「春花…、なんだって?」

「春花って呼んで。よろしくね」


「VTuberってなに?」

「説明するより、見てもらった方が早いかな」


 春花は、いろんなVTuberの動画を見せた。




「要するに、このアニメみたいなキャラクターになって、動画配信するって感じ?」

「そうだね」

「…」

「やれそう?」

「やらなきゃ、今度こそ、本当に死んじゃうんでしょ」

「そうだね」

「じゃあ、やるよ」

「まず、アバターと名前を決めないとね」

「アバターって?」

「キャラクターって思ってくれていいよ。女子高生とか、先生とか、看護師とか。人外だと、悪魔とか、エルフとか、猫とか」

「ほんとにいろんなキャラがいるんだね」

「あなたの性格に合った方が、やりやすいと思うよ」




「私さ、売れないアイドルだったんだよね。中学生で有名なグループに入ったんだけど、ダンスレッスンとか、ボイストレーニングとか、とにかく頑張ることが大嫌いでさ。そんなんだから、グループ内でも浮いた存在で。顔だけは良かったから、セールスポイントはそれだけ。何年かやって、グループ、クビになって。表向きは卒業だったけど。枕で仕事とってたけど、結局、人気は出なくて。悪い男友達のところ、点々として食いつないでた。最終的に、薬きめてやってるうちに死んじゃったんだと思う」


「それは、苦労したんだね」

「同情して欲しくて言ったんじゃないよ。そんな私にできるキャラクターってなんだろうって思ったの」

「どうしてアイドルになろうと思ったの?」

「顔だけは良かったからさ、楽して稼げるかな、と思ってさ」

「好きなことは?」

「う~ん…。セックス?」

「それはまた」

「エロいネタやってるVTuberもいるね」

「YouTubeの規約範囲内でね」


「確か、エロい悪魔いなかったけ?」

「サキュバスのこと?」

「それ。私、サキュバスになる」

「そう。良いんじゃない。くれぐれも、規約は守ってね」

「名前は?」

「そうね。サキュバスは女の悪魔だから、ラ行が語感が良いかも」

「ラ行?」

「らりるれろ。ね」

「アハハハハ! 良い、おもしろい。らりるれろって名前にするわ」

「さすがにちょっとひねった方が。『ラリィ=ル・レロ』なんてどう?」

「うん、良い」

「アバターもあたしが描いてあげる」

「絵、描けるんだ」

「生前、漫画描いてたから。同人だけど」

「へぇ。漫画家さんだ。儲かった?」

「大儲けはしなかったけど、生活できる程度には稼いでたよ」

「そう…」




 数日後、ラリィ=ル・レロのアバターが完成し、ニュースピリチュアル所属としてデビューした。




ラリィ=ル・レロ●ライブ


「みなさん、はじめまして。ニュースピリチュアル所属。ラリィ=ル・レロです」


 『エロい』

 『なんかエロいひときた』


「男の精気を吸いとる悪魔。サキュバスです。あなたの精気、吸いとっちゃうぞ♪」

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