私の脱獄日記

能依 小豆

第1話 なんでよ!

「被告人に、終身刑を言い渡す。これにて閉廷。」


私は何も言えないまま私の人生を決められてしまった。


そのまま私は後ろにいた警察官に手錠をかけられ、連れて行かれた。


「1036番!お前はここの部屋に入れ!」


連れて行かれた刑務所で待っていたのは、ひたすらにうるさい看守と私を嘲笑うような目で見つめてくる同室のメンバーだった。


「あんた何しちゃったのぉ〜?」


そう話しかけてきたのは髪を金髪に染めた同室の人だった。ここでは1033番と呼ばれている。


「わ、私は……何も……してないのに……」


「あ〜そう言うタイプか〜そういうこと言ってる奴は大体悪いことしてるからさぁ〜もうそういういいよ〜」


「ほ、本当に!何も!」


「あ〜うるさい。看守がくるから。それしか言えないなら黙っててw?」


どうやら私の言うことは信じてくれないらしい。

ふと月を見る。今日は三日月だった。


「なに〜?あんた外に出たいのぉ〜?」


「い、いえ。む、昔から月が好きだったので。」


咄嗟に嘘をつく。これが私の癖だった。この癖のせいで私は中学、高校と孤立していた。


——脱獄しよう


そう決めてから私は必死に言われた仕事をこなし、模倣犯として独房に入ることができた。その独房は改修工事がされておらず、あまり綺麗とは言えないものだった。


「これなら勝てる!」


そう思ってから、初めから空いていた穴(直径五センチほど)を少しずつ大きくし、ついにはあと少しで通れると思った。


——脱獄前日。


私は与えられた小さい窓から空を見上げた。空にはいつも通り大きな丸い月が浮いている。この月は私に何度も勇気と希望を与えてくれた。。


「かぐや姫は何を考えて私に勇気を与えてくれたのかしら。」


そっと中学生の時の授業を思い出す。


「『今は昔、竹取翁と言うものありけり——』だったわね。」


声に出して読むと孤立していた時期の記憶が蘇ってくる。


「今までいろいろあったけれど、ここから出たら生活は終わりね。でも絶対に冤罪を証明してみせるわ。」


そう言って私は何度目かわからない独房での眠りについた。

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