第三十話: その扉はトルコ石
僕たちを乗せた三台の
「チューン、チュン!」
「「チュン! チュン!」」
「よーしよし、おまえたち、よく
かなり大きな建物だ。最近増築された我がエルキル家の
「ふおおおお! 今日、ここに泊まるのっ!? ファル、
「人の家じゃなくて宿屋だよ。村にだって一軒あるじゃないか……小さいけどさ」
「フッ、ノブロゴ殿。少し時刻は早いですが、まずは喫茶と参りましょう。日も昇ってきました」
「ですな。……おい! てめえら、羽車を預けてこいや」
「「へーい」」
他の羽車に乗っていた若手従士たちは、到着早々、ノブロゴ翁の指示でのそのそと動き始める。
宿に着いたと言っても、まだまだゆっくり休むには早すぎる時間帯だ。
僕たちはひとまず一服して英気を養った後、手分けして用事を片付けていくつもりだが。
「マジ、死ぬわ、これ……」
「はぁ……はぁ……つ、つかれたぁ」
「うおっし! やっと休めるぜ!」
「何、言ってんだい! 護衛は町ん中でも終わりゃしないよ! この後は交替で羽車の番してな!」
石畳に崩れ落ちる絆たち。ずっと歩きっぱなしだったので、
まぁ、見張り番なら何もなければ楽な仕事だし、若いんだから大丈夫だろう、きっと。
僕らが本日から
建物は三階建て、一階では食事処と酒場も営む、この城郭都市モットス一番の
広い敷地内に車庫と
観光客を当て込んだ現代的な宿泊施設とは異なり、サービスなどはほとんど期待できない。
しかし、お世辞にも快適とは言い難い羽車の荷台、落ち着かない野営、そんな生活を三日間も
――カラン、カラン!
入り口のややくたびれた木製自在扉を押し開け、ドアベルの音と共に中へ入っていく。
護衛のジェルザを先頭に、ノブロゴ翁、僕、アドニス司祭とミャアマ、大鎌の
店内は
おそらく建物が光と風だけを上手く取り入れる造りとなっているのだろう。
「いらっしゃいませえ! お食事でしたら空いてる席へどぞお! お泊まりならカウンターまで来てくださあい!
と、僕らを出迎えた元気な声の主は、奥のカウンター席から立ち上がった黒髪の
カウンターの向こうには、やはり黒髪をしたバーテンダー風の男が一人、グラスを
雰囲気からすると、向かって左側が食堂、右側が酒場と別れているようだ。
左右を隔てる
とは言え、この国では一般的に昼食を
片手で数えられるほどの客と距離を置きつつ、僕たちは食堂側壁際の大テーブルへ着く。
「あらあ? なあんだ、ノブロゴさんじゃないですかあ」
「よお、また世話んなるぜ。まず適当に茶ァな。それから今日明日の夜で二泊だ。人数は――」
どうやら
「フッ、私たちは数に入れなくても結構。神殿を頼りましょう」
「そんじゃ、俺とガキんちょ二匹……水の使える三階の中部屋だな。後は――」
「アタシらはまとめて二階の大部屋で構わないよ!」
「いや、ジェルザとシイリンは別にしときなよ」
「女で小部屋一つ、残りはひよっこ連中が三、冒険者どもが五と二か……大部屋二つでいいな」
「あいあい、お部屋は
たぷんたぷんと、いろいろな部分を揺らしながらウェイトレスは離れていった。
そうして半刻(約一時間)ほどティータイムを楽しみ、僕たちはそれぞれ午後の用事へ向かう。
僕? 僕は観光だ。仕事のある
「ね、ね、最初どこ行く?」
「うーん、ぶらぶら歩きながら考えようか」
あちこち見て回ることになりそうだし、
その長い
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