第五十一話: 雲中に遊ぶ、巨鳥と兎馬と幼児たち
雷鳴の
雲を
体高二メートルを超え、体長では三メートル近くもあるが、姿形に目立った特徴はない。
全身を覆う
だが、見た目がいくら普通であろうと、空中を走ってくるそれが単なる動物のはずはなかった。
「ぶるるるい」
のんびりとした足取りで間近へ迫ったロバは、まるで挨拶するかのように小さく鼻を鳴らす。
「これで一緒に遊べるねー。ずっと白ぼっちゃんのこと見てたもんねー」
『何故、精霊術でモンスターが現れる? ……いや、この状況でそれはどうでも良いが』
「ふひひひぃーん!」
「え、背に乗れって? 良いのかな? うん、助かるよ」
お
僕はファルと二人、その広い背中に
『察するところ、雨雲を散らして回る鳥のジャンボは、稲妻と関係深いこの
「何にしても、僕たちにとってはまさに恵みの雨が降ってきたようなものさ」
「ルフ来るよ! あそぼ!」
ファルの言葉に下方へと目を向ければ、先ほど、激しい雷に打たれ墜落していったジャンボがゆっくりと舞い戻ってくる姿を確認することができた。
まだ微妙に感電の影響を受けているのか、どことなく飛び方はふらふらとしている。
相変わらず
僕らの乗るロバがいくら大きいと言っても、通常の大型馬とそこまで変わるほどではない。
にも
「……って言うか、よく僕らは無事だったなぁ」
「ぶるる……」
僕の呟きに対して答えるようにドンキーは小さく鼻を鳴らし、ゆっくり歩み始めた。
一歩、また一歩、踏み出した
それは
「あぶなっ……って、あれ? ぜんぜん
「ふわぁ、きれいねー」
不思議なことに放電はドンキー自身とその背に乗る僕らには何ら影響を与えないようだ。
次第に加速していく馬体は、気が付けば、全身
周囲に立ちこめる雲の中を突っ切り、後ろへと残されてゆく白い軌跡は、羽ばたく大きな翼、あるいは大空に伸びる
――ヒイィーーーホオオオォーッ!!
加速が頂点に達し、もはや流れゆく周りの景色も単に真なる白としか認識できなくなった瞬間、ドンキーが耳をつんざく高らかな
頭の先から尾羽の端まで、大電流を帯びたドンキーの
自身の燃え立つ羽根では
立て続けのダメージにより傾きつつある戦いの
『追え! 立て直させるな!』
声にならない僕の意を
秒速二〇〇メートル以上、マッハ〇・六に達するだろう速度で真っ直ぐ飛翔する巨鳥の後方、縦横無尽ジグザグに電光の軌跡を残しながら
業を煮やしたジャンボは飛行速度を落とすと、ホバリングによる迎撃態勢を取る。
その身を覆う
一旦、距離を離したドンキーは、上空へ向かうも即反転、一筋の落雷と化して突っ込んだ。
都度、まるで一つ一つが火球のような猛烈な火花が辺り一面、無数に舞い散る。
「
「白ぼっちゃん、頑張って! ふぁいおー! ふぁいおー!」
「ええい、
二体のモンスターが激突する中、僕も一方の背でただ震えているだけではなかった。
精霊術を
一見、優位に戦っているドンキーだが、敵の巨体、火炎、暴風、いずれも恐るべき脅威だ。
今はまだ、僕とファルも含めてさしたる被害はないものの、一歩間違えれば大惨事は免れない。
たとえ微力な支援であろうと、できることがあるのならするべきだろう。
……とは言え、やはり最終的に
周囲に存在する雲の大きさに応じて攻撃力を増す
いくら乾期が近いと言っても、この
加えて、僕の雨雲も未だ健在……どころかドンキーにより刻一刻と発達させられてさえいた。
「あ~あ、火、消えちゃったねえ」
ジャンボの首筋に取り付いたドンキーがいくつもの
『やったのか?』
「クエエエェ……」
それっきり動きを止めた巨鳥は、翼を大きく広げたまま滑空し、ゆっくりと降下し始めた。
やがて雲の底を抜けると、遙か下方には、あの
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