第四十六話: 生命からがら、あれこれ土産
天空から降ってくる大質量隕石……そんな絶望的な光景を想起させながら巨大クチバシが迫る。
「
ほとんど反射的に、僕は背後の空へ向けて
クチバシの主――鳥のジャンボにとっては、せいぜい豆電球ほどにしか感じられないだろうが、それでも
あまりも大きな、それでいて鋭いクチバシは、ただ何も無い虚空を
小さく振り返り、見上げてみれば、あのゾウのジャンボですら比較にならず、もはや
クジャクのような尾羽を持ち、胴体と脚はどことなく
そいつは、大きく斜めに首を
何故か、その眼の奥に、激しい怒りの炎が燃やされているかに思えてならないが……。
「あいつ、どうして怒ってるんでしょうね? 明らかに僕らのことを狙って飛んできたような?」
「あー、それなんだがよう……さっきまでいた大岩がよう……」
釣られて視線をそちらへ向けてみると……。
遠くに見える
『ああ……そういうことか。あれは、岩なんかじゃなかったんだな。察するに――』
「卵!? は、ははっ、つまり、この岩山はあいつの巣だったのか。もう、ツイてないったらない!」
――グルルァァァアアアアアアア!
並の家屋よりも大きな卵の上に陣取った鳥のジャンボは左右の翼を空を覆わんばかりに広げ、
「ゾウから逃れたかと思えば! 結局、追ってくる奴が更にでっかくなっただけだよ!」
ここから再びの逃走劇が始まった。
僕たちは、日が暮れた後の寝る間さえ惜しみ、強行軍でダンジョンを駆け抜けていく。
一帯の
加えて幸いだったのは、鳥のジャンボの襲撃頻度が怖れていたほどではなかったことである。
奴は低空飛行を苦手とし、
翌日【森ノ刻(夕方頃)】、エルキル探険隊は誰一人欠けず
五日間に
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
半ば
「あなた、シェガロちゃん。ご無事で何よりですわ。……女神よ、感謝いたします」
「おかえりなさい! パパー!」
「「ぱぁぱ!」」
久しぶりの領地は未だ
ごくささやかながら
とは言え、まだまだ先行き暗く、誰も彼もやることが山積みという状況は変わっていない。
翌日には浮かれていた雰囲気など
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……さて、何から話したものかな」
「オトモシャポテン!」
早朝、いつものように
褐色肌の
「うん、まずはそいつのことからかな。気になって頭が回らなくなりそうだし」
「あたまさわって?」
「あはっ、オトモシャポテン!」
額に黒いボタンを付けたクリーム色のアンゴラウサギ――この
理由はいくつか挙げられるが、一つはこいつの目標が僕個人であると判明したことだ。
近くにいる間は大人しくじっとしている。逆に、引き離せば延々と僕のことを追いかけてくる。
そうなると、どことも知れない場所に放したままでいるのは逆に不安というもの。
当然、領内にはその危険性が周知徹底され、注意喚起の立て札も村の至るところに設置された。
このウサギさまの身分は領主一族と同等。万が一にも傷つけた者は、最高で死罪まであり得る……ということで、村人たちからは必要以上に恐れられてしまったようだ。
昼間と夜中は
「あたま……さわって?」
「キャキャッ、オットモーだって! オットモーシャポテン!」
「あたま……あたま……」
「オットモー! オットモー!」
「ちょっ、ファル。あんまり手荒にしちゃダメだってば」
『逆にこの
これでもかなり強力なモンスターだ。背中で子どもが暴れたくらいじゃ
……まぁ、それほど嫌がっている様子もなさそうだし、好きにさせておいても大丈夫か。
「
「ヒツジ見たいの? 白ぼっちゃん」
「ん? ああ、
「やったぁ! ヒツジおいしいもんねー」
「まだ食べないよ?」
ヒツジというのは、もちろん、あの
そう、なんと、あのメリーゴーラウンドのような不思議植物が、村の畑に根付いてくれたのだ。
ダンジョンと違ってほとんど
何日も掛けて運搬し、さんざんヒツジたちにも無理をさせたこと。
こうした事情を考えれば、十中八九、植樹は失敗するだろうというのが大方の予想だったのだ。
よもや最初の一本で根付くとは……非常に嬉しい誤算である。
「ダンジョンで手に入れた大量のザコオニ魔石にあんな使い道があるなんてね」
当初、ぐったりとして元気なかったヒツジたちだが、たまたま近くを運搬中だったクズ魔石に物欲しそうな目を向けてきたため、試しに幹の根元へばら
そう言えば、ダンジョンの宝箱から手に入れた苗木――赤く燃える
だが、こちらはまだどのような樹木なのかも分かっていないため、扱いは慎重を要する。
村の状況が落ち着いたら、王都の学者にでも手紙を送ってみようという話になったようだ。
「イナゴの死骸もあらかた片付いたし、ぼちぼち今後のことだけに全力を傾けていきたいね……よし!
「あー、キラキラ、ちょうちょ!」
そんなこんなで、ほとんど独り言のように近況を確認しつつ、一通りの朝仕事を終わらせれば、時刻はそろそろ【火ノ一刻(午前八時頃)】になるだろうか。
村の
「ああ、ファル、いつものが来るよ。
「やだぁ! ……みゅう」
――ズズズズズズズズズズズズズズゥゥゥゥゥーーー……ンンンンン!!
轟音を伴って大地に凄まじい激震が走る。
数分もの間、前世日本での基準に照らし合わせれば震度六はあろう揺れに耐えながら思う。
『この
乾期が訪れるまであと二ヶ月強、ホント、そろそろ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます