第四十三話: 立ちはだかる巨体
第二部のほぼ全話に
一.脳内の
一.モンスター・ゴブリンの呼称をザコオニに(地の文とシェガロのみ)。
大したことではありませんが、どうかご了承ください。
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いくら
眼下に広がる湖はよく水を
湖水は極めて透明度が低い
ここがダンジョンの奥地という特殊環境でなければ、様々な利用価値があっただろうが……。
その湖上を、ほとんど駆けているのと変わらないほどの早足で進む一団があった。
何故か誰一人たりとも水に足を沈めることなく、吹き抜ける風に波立つ水面を踏みしめていく。
数羽掛かりで非常に大きく重そうな荷を
「「「メエェーエ」」」
「うへぇ、静かにしてくれよう」
「早く早く、早く早く……ハァハァ……」
「メエーっ」「んヴェェェエ!」
「オラオラ、ひよっこども!
今更言うまでもないだろうが、このアメンボのような一団の正体は我らがエルキル探索隊だ。
護衛の【草刈りの
縦一列に連結された荷車三台に載る荷は高木――根と葉をそのまま残す、あの
「水ん中を近付いてくる奴はいないよ! アンタらの方でもよく気を付けててほしいけどね!」
「周りにも敵影は無し。精霊術【
相も変わらず上空にて
幸い、襲撃などを受けることもなく、
だが、異変が起きたのは、皆が地に足付けて一息
「全員! すぐに水辺から離れて! 何か上がっ――」
僕のその声を
高さ数十メートル、思わず
噴水が宙へ飛び散っていった後に残されたのは、鎌首をもたげる長大な
太さは前世で見掛けた風呂屋の
湖岸に向かって大きな波を立てながら、蛇体はぐんぐんと
とは言え、僕らとて、いつまでもそんなものを
重荷を抱えているため、さほど移動速度は出せずとも、巨体を水中に
『いや、駄目だ! これは、まずいぞ』
「みんな、もっと急いで!」
膨大な量の水を
速度の方も水中にいたときとは比較にならず、あっという間にこちらとの距離を詰めてくる。
「……チィ、やっぱりそうなるわな」
「真っ直ぐ追ってくるのかい!? すると目当てはこのバロメッツかねえ!」
チラリチラリと振り返って確認する冒険者たちが、一様に苦々しげな表情を浮かべる。
「ギガント・ロクソドン……相手にしたくはなかったぜえ」
鎌首をもたげた
これまで幾度か、遠間で目にしていたが、先ほどまではどうやら湖の中を泳いでいたらしい。
初めて近距離で拝むこととなった巨体は、地面から頭の上までの体高にして三十メートル超。僕がかろうじて棒立ちで浮かんでいられる高度のトリプルスコアに達する圧倒的
鼻の長さだけでも二十五メートルを下ることはあるまい。これは精霊術の射程距離をも上回り、あの内側に入らなければ、僕は攻撃を仕掛けることすら
その鼻の太さは平均して直径
「ちょ!? とても倒せそうな相手だとは思えないんですけどぉ!」
「ハッハー! だから前に忠告しただろう! 腕っ
「いやいや、
前世の建造物でたとえるなら、十二階建てのマンションといったところか。
そんな物が四本足でずんずん歩き、後を追いかけてくるとか、本気で勘弁してもらいたい。
背後より迫るジャンボとの距離は
単純に考えて、奴の一歩はこちらの二十歩にも相当し、追いかけっこをして勝てるはずがない。
どうにか
凄まじい地響きに
『そろそろ覚悟を決めるべきだろうな。どう考えても逃げきれそうにない』
「ぬぅん、このバロメッツ、今回は諦めるしかない……か」
僕と同じことをマティオロ氏も考えたようだ。
奴の狙いがこの牧羊樹だと決まったわけではないが、どのみち大荷物を
「自生地はもう分かってんだ! また
「やむえまい! 貴様ら、荷車を――」
しかし、僕らがそれを実行に移す暇もなく、事態はまったく予期せぬ方へと動き出した。
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