第十三話: 乱戦、終わりなき攻防
大柄な戦士ケオニAの全身を丸ごと飲み込んだ猛烈な火柱は、ほんの数秒ほどで消え去った。
後に残されたのは、四肢を投げ出して地面へ倒れ伏す戦士Aだ。
猛火に
立ち上がるどころか、動きだす気配すらない生死不明の重体である。
……いや、これはいくらなんでもやりすぎだ。僕も頭に血が上りすぎていたかも知れない。
全身に
なにせ、生きたまま
ともあれ、もはや戦士Aに戦う力がないことは疑いようもない。
僕はどうにか思考を切り換え、戦士ケオニ隊の最後の一人である戦士Cの方へと向き直る。
先ほど片腕を斬り飛ばしたはずの戦士Cは、駆けつけてきた月子と既に交戦していた。
いつの間にか腕が元通りにくっついているが、まぁ、今更それくらいのことでは驚くまい。
と、気付けば、ヒヨスが食い止めていたはずの元弓ケオニ隊の三人も
「くっ、このままでは月子が挟み撃ちか」
ひとまず彼女の背を守れる位置へ向かわなければ。
始めに見ていた限りでは、ヒヨスに
改めて見てみれば、奴らが手にした棍棒は、戦士ケオニが持つものよりも遙かに短いものの、硬く軽そうな
金属製甲冑が発達した中世において、衝撃を
――ドゴォ!
「ギギィ! ギーッ!」
死角から撃ち込まれてくるヒヨスの尻尾に反応し、元弓ケオニは
毎回確実に受けきれるわけではなさそうだが、攻撃を受ける頻度が減れば奴らの肉体はすぐにダメージを回復でき、衝撃で吹き飛ばされる距離が減れば陣形はいつまでも崩されない。
結果、攻防に優れた
その進路を塞ぐようにして割り込み、両手でスコップを構えて相対した。
背後には月子の背があり、全体の大まかな位置関係は、透明化したヒヨス、三人の元弓ケオニ、僕、月子、戦士ケオニCと縦一列に連なったように見える。
左右一対の
強力な精霊術を
背中で感じる「ゲッハァ!」という昂奮しきった
……ああ、あいつもダルマの刑かな。
ともかく、それならば僕はヒヨスと共に数の多い元弓ケオニたちを減らしていくとしようか。
ちょうど良く、見えざるヒヨスの尻尾による横殴りを受け止め
「ギイィヤッ!」
だが、体勢を崩しているにも
いや、ただ受けるだけに留まらず、そのままスコップを斜めに流し、僕の体勢を崩しにくる。
まずいっ!
「ぐうっ!」
一瞬の攻防でがら空きになった僕の胴体へ、元弓Aは軽やかな振りで
幸いにも、僕が防寒具の下に装備している胴鎧は、コルクのような軽く柔軟性のある木材――
けっこうな痛みをもらいはしたが、動きに支障が出るほどの
「
「ごほっ……大丈夫だ! 何も問題はないっ!」
が、僕を案じる月子との短いやり取りを遮ろうというのか、元弓Aの更なる攻撃が襲い来る。
斜め下から脇腹を狙ってくる振り上げをかろうじてスコップの柄で受ける……も、
スコップの柄が曲がってしまいそうな予感を覚え、
あっぶな! 振りは小さくとも威力はでかい! これ以上、おいそれと貰うわけにいかないな。
やや間合いが開く。
僕に一撃加えた元弓Aは、BとCの
無理な追撃はせず、仲間との連携を重要視しているようだ。陣形が崩れた隙を狙ったヒヨスの攻撃もこれまで通りに危なげなく
安定感のある動きは、適当に暴れていた戦士ケオニより明らかに一枚も二枚も
……まずはその陣形を崩すのが手っ取り早いか。
自分の中にある手札を再確認しつつ、僕はこの戦いに幕を引くシナリオを練り上げていく。
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