第十一話: 氷の瞳を持つ少女
月子が対峙している戦士ケオニBの表情は、長いボサボサ髪に隠れた獣のような顔であっても、何を考えているのかが丸わかりだった。
……と言うか、その全身を
「ゲッハァ!」と大声で
――あのヤロウ! まさか月子に欲情していやがるのか!!
一瞬、我を忘れ、奴を丸焼きにしてやろうかと思いかけるが、相対している月子の様子が目に
激しい勢いで迫られながら、いつも通りに美しい
ただ、その
「
突然! 地面から突き出した巨大な握り拳が、Bの股間をアッパーカットの形で突き上げる!
「――ッゲ……ハ!?」
勢いよく前のめりになっていたところに決まった華麗なるカウンターの一撃が、大男と言って良いほどの巨体を数十センチも浮き上がらせ、ただの一撃で白目を
見ていた僕の身まで思わず
だが、それだけではまだ終わらない。
意識を飛ばし、宙へと浮き上がっているBは、続いて地面から突き出したもう一本の手によりガッチリと右の上腕を捕まれ、アッパーカットを決めた手にも左の膝上を捕まれ、一瞬のうちに空中
それが、地面から生えた二本の岩石手を自在に操る地の精霊術【
宙吊りにされてもピクピクと震えるだけのBを、月子がゆっくりと見上げていく。
「あなたの態度は不快です。特にその目……、その嫌な目を二度と私に向けないでください」
いつもの
そして、冷たく
「血が溜まりすぎなのではありませんか? 頭だけと言わず、全身を冷やして差し上げましょう。
温度と無関係に液体の状態を変える水の精霊、温度を直接操作できる火の精霊、両者に対する
出来上がったのは、巨大な氷塊から角付き兜を被った頭だけが突き出された奇妙なオブジェだ。
「くすっ、まるで
赤子の手をひねるようにBを無力化してしまった月子を確認し、とりあえず安心する。
なんとなく
男であれば、おそらく分かってもらえると思う。
「……ともあれ。なるほど、あれは最上の手かも知れないな」
と言っても、
普通の生物であれば凍死してもおかしくない状況である。
となれば、月子ほどの威力を持たない僕の精霊術で同様のことを試みるのは少々難しいだろう。
さて、すぐに月子がこちらの加勢に駆けつけてくれそうではあるが、それまでに眼前のAとC、どちらか一人くらいはそろそろ倒しておかないとな。
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