第30話

俺が、近くのベンチで休憩しているとムスッとした顔で咲希が俺の前に立ち、おれを見つめていた。


「御兄様やっと見つけました。試着して気に入ったので会計に行ったら御兄様が、見当たらず困ってしまいました。なんで、急にいなくなったんですか?」


この娘は一体なにを、言っているんだ。咲希が試着に、行った時点で俺一人になるのに、男一人で下着屋でたくさんの女の視線を耐えられるわけ無い。だから、俺は悪くないはずだ。


「私のスポブラを、買いに一緒に来てるんですから堂々としていたらいいんです。逆に恥ずかしがっていると怪しい人に見られてしまいますよ」


言っていることは理解出来るが、今の俺にはそんな勇気はまだない。色を選びに入っただけでも勘弁して欲しい。


「仕方ないですね、御兄様も、今回は初めての経験だと思いますし、次からはもう少し頑張って待ってください。私も、御兄様を長くは待たせませんので。」


今後も、俺は咲希の下着を買うたびにこんな目にあうのか。それなら思い切って本当に堂々としたほうがいいのかもしれない。

 下着だってその時で店を変えるじゃなく決まった店に行くものだろう。同じ店なら慣れてしまえば店員も俺の顔を覚えてくれるだろうし。

 しかし、今はスポブラで済んだがあれがいつかブラになった時にも、俺に下着を選ばせるのだろうか?咲希が俺好みの下着をつけてどうなるんだ?どうせならいつか出来る彼氏と下着屋に行ってほしいものだ。そうしたら、下着屋から解放されるだろう。彼氏を生贄にだがな。


次はどうしようかな?まだ時間はあるし、ゆっくり見て気になる店があれば入る感じにするか?俺はどうしようかと咲希に訪ねようかと思い顔を見ると、

どこか、遠くを見ていてなにかを発見したのか顔がどんどん焦りだして右往左往している。

 それから、諦めきれないのか俺の後ろに隠れて顔を押し付け少しでも隠れようとしていた。


「見つけましたわ。この可憐な幼女の甘い香りを出しつつ大人っぽさを出そうと頑張っている雰囲気をかもしだしているのは私の愛しき咲希ちゃんですわね。まさかお休みにこんなとこで出会えるなんてやっぱり私達は神様に認められた二人なんですわ。性別なんて私達二人にはささいなこと、さー仲良くしましょう。」


うわ〜なんか濃くてやばいのが来たよ、しかも後ろから慌てながらこちらに、申し訳ない顔をしながら保護者?いや、雰囲気的にSPみたいな感じの人が謝りながら駆けてくる。どうやら、咲希につめよるこの濃い変人は似たようなことを幾度かしてこの人達を困らせているのだろう。


「さて、先程から咲希を、困らせてるあなたは一体どこの馬の骨ですか?いくら咲希ちゃんが可憐で愛しい子だと分かる良き目を持っていてもこの私の目が黒い内は一歩たりとも手を触れさせませんよ。」


凄いなこの変人言ってることはヤバイ奴なのに立派なナイト気取りとは。女の子だからナイト扱いはおかしいのか。しかし、さっきから咲希が大人しいなどうしたんだろ?あれっなんなぐったりしてないか?まてまてこの変人が抱きついて首が閉まってるんだ、ぐったりするまでなんてやばいぞ。


「すまないがちょっと手荒に行くぞ。後でいくらでも謝ってやるから」俺は、すぐさま抱きついている手を掴み咲希を、解放する。


「ぷは~、やっと息が出来ました。御兄様ありがとうございます。色々説明したいことがありますが少しお待ち下さい。私にはまずやらなければいけないことがありますので」

 俺は静かにうなずき後ろに下がる。静かにだがこの怒り方はあかんヤツやと理解出来る顔をしていた。絶対咲希は、怒らせちゃだめなタイプだ。俺も気をつけよう。

 さて、この変人は、どんな目に合うのか、心から同情するよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る