我ら柄物党
@ishikawa0330
第1話
「それでは、柄物党定例会を行う。」
リーダーの大塚が話し始めた。服装はアロハシャツ、下はボーダー柄のズボン、体格は大柄な男だ。
「わかっているとは思うが、今の日本は無印党が与党になってから、国が無地の服を推奨し、柄物の着用を禁じた。食卓に鶏ガラを使用した料理も禁止。これは我ら柄物党が、以前行われた選挙で大敗したことが原因である。今や、生ぬるいことなど言っていられない。なんとしても、あの腐った無印党を引きずり下ろすのだ。」
党員の松下が、後に続いた。大塚に比べれば小柄な男だ。
「しかしながら、先の選挙で大敗した原因は皆様もわかっているでしょう。裏切り者が党に紛れ込み、我が党員達を無印党の思考に染め上げたのです。」
選挙活動前の時点で、所属議員数500人を超えていた柄物党だが、その裏切り者のせいで、現在の議員数は100人程。柄物党は衰退の一途をたどっている。その裏切り者の正体は判明していない。
「我が党のリーダーとして、この定例会で裏切り者を見つけ出したいと考えている。皆には何か最近おかしい動きをしていた奴がいなかったか教えてほしい。」
大塚がそう言うと、少しの沈黙が流れた。要するに、裏切り者を探すため、仲間の密告をしろと命じているのだ。
1人の党員が沈黙を破った。
「ついこの前、同胞の鈴浦が無地の白Tと黒パンツで歩いているのを見かけました…」
名指しされた鈴浦もそれに続いて、
「俺だって、この前山本が白スキニーで歩いているとこを目撃しましたよ!!」
山本も続く、
「安藤さんだって、温泉で無地のタオル、無地の下着、無地の靴下でしたよ!!」
「太田もこの前味噌汁飲んでたよな!!俺たち柄物党の公式は鶏ガラスープなのにな!!」
そこからも党員同士の密告は後を絶たず続いた。
——翌日———
NEWSです。
先ほど、柄物党が解散したことを発表しました。
この速報を耳にした無印党の代表は「柄物党の皆様は人柄が良くなかったのでしょう。柄が悪いのは世間の常識ですからね。」とコメントをしたそうです。
我ら柄物党 @ishikawa0330
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます