カメラ行徳にっき

行徳のり君

第1話 吊るしたコウモリ

フィクションです。



 男は金に困った事はない。

 されども貧乏と無縁かと言えば大いに異なる。給料日前はいつも赤貧で、給料日は概ねお大尽。

 貯まる金は無いくせにギャンブルに投じる金には迷いがない。よって日々オケラ街道を突き進む。男は文筆の末席で飯を食う身なれども、彼のペンは金を産まず業務でしかない。

 キーはすり減り、残高は崩れた。

 なのに賭ける馬鹿。つまり狂人だ。



 祖父は丁半、闘茶。

 父は競馬にパチスロ。

 氏より育ちと言うけれども男は後ろ向きに立派なギャンブル一家の子として生まれた。

 反抗期に男は父の趣味など真似するものかと思ったのに気づけば立派な中毒者。

 茫然、愕然、後悔したが納得した。

 嗚呼己もクズであると、して賭けるのは生活費そのもの。あいや、もとより現世に期待などない。なので男はクズで賭ける馬鹿なのだろう。

 人から指を刺されて笑われると知るのだけど、不思議とそれで良いと思う。汚点で結構、泡銭を得ると言うより快楽を得たいのだ。

 当たるから楽しい、負けてもほぼ平気なのは快楽を求めてであろう。



 日本のお上は賭博を認めぬが、人類の友は酒と遊戯と異性である。親友である犬、同志である猫よりも私は遊戯を推す。

 余暇を得た人間なぞ碌でも無いのだ、よって碌でも無い遊戯は楽しい。


 さてボーナスが無くなった、どうしよう。

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