第2話 試行錯誤
スライムは強ければ強い程色が付いて行くものらしい。
しかし俺は今回、最も弱くてだからこそ色が付いておらず無色透明なスライムを召喚して置いておく事にした。
それのスポーン位置を、ちょうど入り口の上辺りに設置。
つまり冒険者が現れた瞬間、頭の上から降って来るようになっている訳である。
無色透明なスライムの出来る事は、まとわりつく事のみ。
無論、普通に遭遇したのならばこれは全く以て脅威にはならないだろう。
普通に倒されるか、そもそも移動速度がナメクジなみにノロノロとしているので避ける事も出来る。
だが、今回のスライムは重力に引かれて降って来るのでスライム自身の動きの速さは全く関係ない。
そもそも頭の上からの襲撃を初見で事前知識もなしに防ぐ事は間違いなく不可能だろう。
薄暗いこの洞窟ダンジョンでは、透明なスライムを視認する事も難しいだろうし。
そうして頭に直撃したスライムは、そのまま頭にまとわりついて、そして口と鼻を塞ぐ。
完全に呼吸をさせず、そのまま窒息死させる訳だ。
スライムは最弱ではあるが、文字通りスライム状のボディは掴みづらい。
襲撃を突然食らってパニックになっている状態ならば、猶更だ。
ただまあ、今回はかなり運良くいった結果だとは思う。
普通、あそこまで上手くいくかどうかは五分五分な気がする。
とはいえ成功した事には変わりないし、そして手に入れたダンジョンポイント『1000』を使ってダンジョンを大きく開拓していくとしよう。
……『1000』ポイントはかなり多い。
これはあの倒した冒険者がたまたま強い奴だったのか、あるいはこれが普通なのか。
なんにせよ、ありがたく使っていこう。
さて。
とりあえずここから何をすれば自身の命を守れるのか。
ダンジョンを広げる。
そうすれば出来る事は間違いなく増えていくが、しかしただひたすらに広げただけだとダンジョンの防衛に使うポイントがなくなってしまう。
そして何より、案外ダンジョンを広げるのにはポイントを使う。
最初の初期フロアを作った時は全くポイントを使わなかったが、ここを広げるのにはいきなり『300』ポイント使うし、新しく隣接した場所に一番小さいフロアを作るのには『200』ポイントを使うらしい。
とすると、やはりここはトラップを作るのが一番か。
あのスライムトラップはソロの冒険者にしか機能しない訳だし、多数の冒険者にも十全に効いて排除してくれるトラップが望ましい。
……冒険者は倒してもリスポーンして復活するのだし、それなら生け捕りにするのが一番かと思ったが、しかしそれをすると間違いなく救助隊が組まれて文字通り殲滅される可能性が高い。
なのでやはり、ここは現れる冒険者をプチプチこまめに潰していくのが良いだろう。
うーん、コスパ度外視のエロトラップを作れるくらいポイントに恵まれたい。
俺だって一応男なので、エロトラップに興味がない訳ではないのだ。
話を戻そう。
ダンジョンを拡大するのはなし、現在の小さなフロア内に確実に冒険者を倒す事の出来るトラップを作る。
現在の『1000』ポイントで出来る事。
モンスターの配置。
今のポイントで置けるのはスライム、スケルトン、グール、レイス。
スライムは最弱なので省くとして、スケルトンとグールは物理攻撃、レイスは魔法攻撃に長けている。
スライムは『50』ポイントで、それ以外は『100』ポイントで一体ずつ召喚出来、強化個体を召喚する為には更に『50』ポイントが必要になって来る。
ただ、これらはすべていわゆる『雑魚モンスター』であり、だから一体だけでは足止めにすらなるか分からない。
環境変化。
現在、水を一面張るのに『300』ポイントを使った。
それを毒にするのにはまた『300』ポイント使う。
毒の付与にはどれも『300』ポイント消費し、またそれを強化するのには『100』ポイントを使うみたいだ。
うーん、どうしよう。
猛毒エリアを形成するのはあり。
だが、強力な猛毒でも『毒無効』スキルなんてのが出てきたら一発でアウトである。
そもそも猛毒で倒れるまで冒険者が待ってくれるか分からないし、解毒ポーションや回復ポーションなどを持っているかもしれない。
トラップの典型、落とし穴も作れるみたいだが、即死レベルのものは作れない。
その時点で作り損だ。
確殺出来るトラップが欲しい訳だし、ここはやはり創意工夫が必要だ。
……ああいや、別に落とし穴もアリと言えばあり、なのかな。
ただ問題は、現在このフロアは水を張られた状態だが、落とし穴が起動した場合その水はすべてその穴に流れていくのだろうか。
流れていくのならば水攻めに……水を使って昇ってきそうだし、やっぱなし。
いっその事、一度水を排除してみる?
移動しにくいエリアという特色は失われるが、どうやらエリアを元通りにしたら使った『300』ポイントは戻って来るみたいだし。
そして、それを使って落とし穴を作る。
落とし穴で倒す事は出来ないけれども、だけどその場所に足止めをする事は可能だ。
一応、最低ランクの落とし穴でも完全に身体が見えなくなるレベルの穴は作れるみたいだし――よし。
そしてここはやっぱり、スライムの出番だな!
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