弓木奈於とかいう想定外でカオスで救世主みたいな女

@antedeluvian

弓木奈於とかいう想定外でカオスで救世主みたいな女

 ここ最近、私のXのトレンドワードに「奈於ちゃん」がずっと居座っている。なにか怖いので、今日は弓木奈於のことを書こうと思う。それで成仏とさせていただきたい。


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 笑いは想定外なところからやって来る。


 俳句では、兼題と呼ばれるメインテーマを表した言葉と、それとはかけ離れた言葉を同居させることを「取り合わせ」というらしい。それがかけ離れていればいるほど面白みや深みが増す。そういう興味深さとか面白みと笑いとはかなり似たような構造を持っているのじゃないかと思う。


 弓木奈於は、予測不能なカオスだ。


 人によっては、「またバカみたいなこと言ってらぁ」とか思うかもしれないが、よくよく調べてみると、彼女が口にする言葉は事実を連想的に繋げた結果が出力されている場合が多々あることが分かる。


 例えば、キックボクサーの小比類巻貴之さんの話をしている時に、弓木は「ディーン・フジオカさんですか?」と突拍子もないことを言う。「パンドラの果実 ~科学犯罪捜査ファイル~」というドラマがある。その主人公は小比類巻祐一という。そのキャラクターを演じていたのは、ディーン・フジオカさんだ。

 弓木はドラマ好きだ。だから、情報の一部を切り取って「ディーン・フジオカ」が出力された。実は裏にはちゃんとしたロジックが走っているのだ。


 弓木の記憶の多くは画像情報によって支えられている節がある。文字も画像化して記憶領域に保存されているのだ。


 西九州新幹線「かもめ」の名前を思い出そうとして、弓木は「『あ』というひらがなが入ってますか?」と聞いている。おそらく、「め」という文字情報が誤って記憶されたのだろうと想像される。その画像情報が様々な感覚に連想的に波及して、弓木独特の解釈がなされているのだろう。


 弓木の記憶の基本的な部分を支えているもののひとつに、彼女自身の聴覚的な経験がある。英語の発音然り、中学生の頃のスピーチリサイタルの発表内容を未だに覚えていたり、何らかのテーマソングやリズムネタはもちろん、自らが歌ったオリジナルソングの再現性も異様に高い。

 ちなみに、弓木はレギュラーアシスタントを務めている「沈黙の金曜日」内でオリジナルソング禁止令が出ているが、そんな意味の分からない禁止令を公布されている人間を私は知らない。つまりは、今の弓木は能力の一部を制限された状態で戦っているようなもので、それでも火力を保ち続けているのは化物と言ってもいい。アニメなんかだと相当な強キャラだ。


 弓木の脳の中では、これまで得てきた様々な情報が互いに手を取り合って、あちこちでニューロンの発火が起こっている。そのせいだろうか、マントルピースを作ったり、動画を作ったり、リコーダーをやってみたり、○ルバニア○ァミリーの家を塗装してみたり、ペンキでテーブルを塗ったりと何らかの表現を積極的に行っている。頭の中の情報をどうにかして形に出力することを弓木の脳味噌は求めているのだ。それが結実したことは、「プレバト!!」での活躍を観れば一目瞭然だ。

 そういう表現の出力のきっかけとなっているのは、実家で料理を担当していたことも関係しているかもしれない。料理は一種の表現手法でもあるからだ。


 弓木を「三代目頭NO王」をもって頭の悪い人間だと思っている人も多いだろうが、彼女の理解能力はちょっと群を抜いている。そのことは「東京パソコンクラブ」を観れば分かる。物事の整理・言語化能力があるのだ。おそらくは、既存の知識に囚われずに自力で考えることが多かった弓木は思考能力が常人よりも高いのかもしれない。


 弓木を知っている人間はメンバーもファンも含め、彼女の言葉の中に何か真実みたいなものを見出す。「こいつはウソを言わないな」という直感が働くからかもしれない。(そこまで頭が回らないだろうと考えているわけではない)


 弓木は何か真に迫っている感じがする。彼女の言葉や立ち振る舞いにはウソがなく、そんな彼女に触れてきた彼女の周囲の人物がかなり影響を受けていることが弓木のエピソードトークからは垣間見える。

 家庭教師のみさこも、正社員にスカウトしてきた飲食店の社員も、弓木を採用した塾の人事も、バイト先のコンビニの店長も、みんな彼女に肩入れしてきた。それはもう弓木に人の心を掴む力があるとしか言いようがない。目を離すと危ないと思ったのかもしれない。


 急かされていないシチュエーションでの彼女の言葉や思いは真っ直ぐで、中学生以来憧れ続けてきた乃木坂46という場所で生きる覚悟を感じる。覚悟を感じすぎてちょっと怖い時もある。


 キャラが知られるというのは諸刃の剣だが、弓木の場合は彼女のみかたをかなり増やした。みかたは、味の方向と書く。初めの頃は、同級生だった和田まあやさんや伊藤純奈さんとの関係性が広く知られておらず、そのことで弓木もずいぶん悩んでいた。それが、今や広島グリーンアリーナや明治神宮野球場なんかを沸かせている。アイドルっぽいことをやらずに、あれほどまでに会場を沸かせられるアイドルは滅多にいない。


 みんなおもちゃ箱が好きだ。何が飛び出すか分からないワクワクがあるから、箱を開ける時は期待でいっぱいだ。弓木が口を開くとワクワク感が増すのは私だけだろうか。


 そのワクワク感は、ヒーローがやって来る時のような高揚感に似ている。



written by antedeluvian

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