没落男爵令嬢ですが、父の借金で婚約破棄させられ、ガマガエル爺の妾にされる所を、宗家当主に助けられました。
克全
第1話:婚約破棄
神歴808年・公国歴72年4月21日ベーメン公国公都貴族街ロイトリンゲン男爵邸:ダニエル視点
「グッヘへへへ、どうでしょう、アンネリーゼ嬢との婚約を破棄して頂けるのなら、10万ペクーニアをお渡ししましょう」
下品極まりない初老の豚が、僕に婚約破棄を迫る。
この場で怒りに任せて斬り殺したいが、できない。
フランク帝国だけに止まらず、南北大陸にまたがる大商会の当主に詰め寄られると、弱小男爵家の後継者程度では逆らえない。
「私が婚約破棄したらアンネリーゼ嬢はどうなる?
それに、10万ペクーニア程度では、婚約破棄の賠償金には少な過ぎる」
「グッヘへへへ、婚約破棄に賠償金など必要ありません。
そもそもフェルクリンゲン男爵家はアンネリーゼ嬢の持参金を用意できない。
それを理由に婚約を破棄されればよい」
「そんな事はどうでもいい、お前ならどのような非道を使ってでも婚約を解消させるだろう。
僕が本当に聞きたいのは、アンネリーゼ嬢がどうなるかだ」
「グッヘへへへ、余計な事を知ろうとしたら、フェルクリンゲン男爵のようになりますぞ、それでも良いのですか?」
「お前か、フェルクリンゲン男爵を陥れたのはお前なのか?!」
「グッヘへへへ、何の事でしょうか?」
「私は知っているぞ、陥れた貴族家に養子に入れると言って、本当はその家の令嬢を自分の妾にしている事を!」
「グッヘへへへ、そんな証拠が何所にあるのですか?」
「おのれ、貴族の誇りにかけて斬り殺す!」
「止めろダニエル、我が家を潰す気か?!」
「父上?!」
「グッヘへへへ、賢明な判断ですな、ロイトリンゲン男爵」
「お前にほめられても、全くうれしくない。
それに、我が家を低く見積もってもらっては困る。
お前の商会の力なら我が家を潰す事くらい簡単だろう。
だが、我が家でも、多少の損害を与える事くらいできるのだぞ!」
「グッヘへへへ、いくら欲しいのですか?
ようするに、息子の婚約者を売る金を増やせと言っているのでしょう?
10万ペクーニアでは安すぎるからもっと寄こせと言っているのでしょう?」
「そうだ、公国有数の美少女と評判のアンネリーゼ嬢を自分の妾にして、フェルクリンゲン男爵家を乗っ取る手伝いをさせるのだ。
1000万ペクーニアはもらわないと話にならない」
「父上、それでも栄光あるロイトリンゲン男爵家の当主ですか!」
「未熟者は黙っていろ、男爵家の当主だから家の利益を優先しているのだ!」
「グッヘへへへ、息子さんにも言いましたが、欲をかき過ぎるとろくな事になりませんぞ、自分の力を分かっておられるのかな?」
「ふん、お前こそ自分の力を過信し過ぎだ、愚か者。
カール大帝陛下は毎年外征されている。
公王陛下に従って私も参戦しているのだ。
常に大帝陛下の馬前にはせ参じて軍功を積み重ねている我が家と、ろくに戦功をあげられなかったフェルクリンゲン男爵と同じにするな。
その気になればカール大帝陛下に直訴できるのだぞ!」
「……いいでしょう、100万ペクーニア払いましょう」
「話にならん、1000万ペクーニアから1ペクーニアもまけられん!」
「カール大帝陛下に話を通せるのは貴男だけではないのですよ。
大帝陛下が毎年外征ができるのも、我が商会が金や食糧を用意しているからです。
その気になれば私も大帝陛下に話をつけられるのです」
「ほう、だったらどちらの話を聞いてくださるか、一緒に大帝陛下の所に行こう。
フェルクリンゲン男爵もそうだが、大帝陛下は戦えない貴族が大嫌いなのだ。
お前が乗っ取った貴族家、1度でもまともに戦っているのか?
戦えない子供に貴族を継がせるお前を、金と食糧を用意するからと言って、優先してくださると本気で思っているのか?」
「グッヘへへへ、よろしいでしょう、一緒に行きましょう。
息子が戦えなくても、戦える奴隷を用意すればいい事です。
その気になれば1000でも2000でも奴隷兵を用意できるのですよ」
「……分かった、200万ペクーニアで手を打とう」
すまないアンネリーゼ、ガマガエル爺だけなら剣にかけて君を守れたが、父上に家の為だと言われてはどうにもならない、すまない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます