あの日の君へ
@k_motoharu
第1話 捜索
都古が失踪してから丸二日が経った。
連絡を試みるが、何度かけても繋がらない。
「やっぱり出ない…か…」
携帯の通話画面を見ながら、ぽつりと呟く。
流石の俺も、電話をかける動作だけはすっかり手慣れてしまった。
ふと、小さい頃の記憶が頭を過る。
昔、俺が怪我をした時に一人で薬草を取りに都古が遠くまで行った時のことだ。
あの時もかなりの大事になったが、今は子どもの頃とは違う。
仮に迷子になっていたのだとしても、乗り切る術はいくらでも考えられるはずだ。
だとしたらこれは誘拐?もしくは何かの罠?
何かの事件に巻き込まれた?
思いつく限りの可能性を考える。
…いや、考えるのは後でもいい。
とにかく今は、少しでも多く手がかりを見つけることが優先だ。
そう思い直し、俺は歩き始めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あっ!!サガミさんいた!!サガミさーん!!!」
背後から聞き慣れた声がした。
「…圭介?」
「よかった…サガミさんまでいなくなったかと思った…」
「今までどこ行ってたんすか、何回教室行ってもいないし」
「結鶴まで、どうしてここに?」
この二人が一緒にいるのは、少し珍しく感じた。
「サガミさんなら都古のこと、何か知ってるんじゃないかと思って。ずっと探してたんすよ」
「俺も結鶴も何回か電話繋がらないか試してるんですけど、全然出なくて…。サガミさん何か心当たりないですか?」
「生憎、俺も何が起きているのか全く分からない。電話も出ていない」
「そうすか…」
「まぁでも…サガミさんが繋がらないのに俺らが繋がるわけないか!」
場の空気を明るくしようとしたのか、圭介は笑いながら話す。
「さっさと手分けして探した方が早そうだな!」
「あぁ。サガミさんは今までどこを探したんすか?」
「…学校内とその周辺には、恐らくもういない。実家にも帰ってないらしい」
「え、ちょっと待ってください…?学校内とその周辺って、一人で見たんですか?」
「…あぁ」
「…ここ軍属学校だから施設も多いし、敷地も広いのに…。あたしらも探したっすけど、圭介と分担してやっとでしたよ」
「探すなら言ってくださいよ~!俺達のことも頼ってください!」
圭介は真っ直ぐな瞳でこちらを見つめる。
俺は思わず目を反らした。
「でもまぁ、ここら辺はあたしらとサガミさんで少なくとも二回は見てるんだ。ここにはいないと考えていいんじゃねぇか?」
「じゃあ、次に可能性がある場所は?」
「電車とか、交通機関を使わないと行けない場所だろう」
「ちょっと範囲が広すぎますね…」
「そういやあいつ、最近新しくオープンした花屋に行きたがってたな」
「じゃあ、結鶴はそことその近辺をあたってくれ。俺は都古がよく行くカフェとその周辺をあたる」
「なら俺は…それ以外で行きそうな場所見てみます!」
話がまとまり、俺達は駅の方に向かった。
向かっている途中で、結鶴と圭介は花屋の場所や図書館、その他の中高生に人気なお店等を調べていた。
電車の方向は二人とは逆だった為、集合場所と時間を決めて改札口で分かれた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「あ、来た来た」
集合場所に戻ると、既に結鶴と圭介は合流していた。
「…どうすか?」
「…思うような収穫はなかった。だが、失踪する前日に都古はあのカフェを訪れていたらしい。注文したものもいつもと同じで、特に変わった様子もなくその日は帰ったそうだ」
「じゃあ、事が起きたのはその後ってことですね」
「カフェにいた時間とかって分かりますか?」
「17時か18時くらいだったと店員は話していたが」
「放課後に寄ったって感じだな」
「特に不自然な点は見当たらないすね」
その後も結鶴と圭介それぞれの話を聞いたが、有力な手掛かりは得られなかった。
「じゃあ島津は、もっと遠くにいるってことですか?」
「…分からない。どこかを見落としているのかもしれない」
しばらく沈黙が続く。
「…終電も近いし、今日は一旦解散しますか?」
「だな…俺もこれ以上進むと帰れなくなる」
そう言って中身がスカスカになった財布を見せる圭介。
「高校生が探せる範囲なんてこんなもんかー、くそー」
「…サガミさんはどうするんすか?」
「…俺はもう少し探してみる。お前らは先に帰ってろ」
「…分かりました。気を付けてください」
「何かあったら連絡してくださいね!」
「…あぁ」
俺達が別れようとした、その時だった。
三人の携帯が一斉に鳴り始めた。
「おわっ?!?!」
「なんだ…?SMS…?」
「三人同時に鳴るって気味悪いな…」
突然の状況に驚きながら、中身を確認する。
″島津都古様の現在地″
その一文の下にはマップのURLが記載されていた。
「な、なんだこれ…いたずらか…?」
「…いや、いたずらにしては少し妙だ」
「…。」
「サガミさん、こういう怪しいURLに飛んで個人情報抜き取られるっていうケースもあるので、ここは慎重に…」
圭介の言葉を遮るように俺はリンクを押した。
「あーっ!!サガミさん?!?!」
「…普通のマップすね」
「ここからそう遠くはないな」
三人で携帯の画面を覗き込む。
「でもこれ、本当に信じていいんですかね…?ただのデマかもしれないし、何かの罠だったりしたら…」
「まぁ嘘なら嘘で、こっちの探す範囲が減るだけだ」
「何かあったら返り討ちにすればいい」
「こえーよ二人共…」
大体の場所を把握し、携帯を閉じる。
「…俺は行くが、お前らはどうする?」
「勿論行くっす。少しでも可能性があるのなら、行って損はないはずです」
「…圭介は?」
「…俺も行きます。このメールを信じるのは怖いですけど、二人が一緒なら心強いし。それに、島津を助けたいって気持ちは同じなので……大事な友達、だから」
「…そうか。なら、急ぐぞ」
そして俺達は再び移動を開始した。
この先で何が起きているのかも知らずに。
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