9階 6

 え、人形に関する話?Bってば急にそんなの聞いてどうしたの?うーん……あ、一つあった。いや、オチとかないから期待しないでね?


 昔の話なんだけどね。

 子供の頃って夏休みの自由研究があるじゃない?あれ、最後の3日になって思い出したから何も用意してなくて。半べそかきながら親に相談したんだけど、お母さんは全然取り合ってくれなくてさ。今言われても無理!みたいな。で、ダメ元でお父さんに頼みに行ったのね。そしたらお父さん、手伝ってあげるって言ってくれてさ。

 初めは確かお父さんの育ててた花の観察日記にしようとしたんだけど、あと3日しかないからちょっと無理かなって。で、色々考えて、人形作ることにしたの。ほら、自由研究って工作でも良かったじゃん?だから裁縫も良いかなって。ちょうど、その頃友達と話してたおまじないにも人形が必要だったし。

 とりあえず1体作ればよかったんだけど、なんかお父さんも作るって言い始めてさ(笑)。今思うと、ガーデニングが趣味だったし、可愛いものが好きだったのかな。

 そこからは大変だった〜〜今でも覚えてるもん。とりあえず布と糸を買ってきたのは良かったけど、私まだその頃小3でさ、裁縫とか習ってなかったじゃん?お父さんはあの時代の人だから、学校で裁縫習ってなくて。2人でとりあえず布を切ったは良いものの、玉結びすらできなくてさ……。

 結局、お母さんにヘルプに入ってもらって完成させたんだよね。お父さんと2人で怒られながら(笑)なんで人形なんか作ろうとしたの!って。で、完成させる直前に紙に好きな人の名前書いてたんだけど、その時お父さんに何してるか聞かれてさ。恥ずかしかったけど、宿題手伝ってもらったし、おまじないのこと教えたんだよね。そしたらお父さんも紙を用意し始めてさ。え、誰の名前書いてたかって?どうだろ、覚えてないや。お母さんの名前じゃない?

 あー、あの人形残ってるのかな。うん、お父さんの部屋、まだ残してあるんだよね。私1人だと手が回らなくてさ。お母さんは、ほら、まだ精神的に辛いみたいだし。私もだけどね。

 お、あったあった。なんか結構汚れてるなー、なんでだろ?うわ、背中の糸ほつれてるじゃん。やっぱ下手だったよね(笑)えーと、紙……おっ、出せた。ん〜〜?

 あ、いや、思ってたのと違ってさ。知らない人の名前みたい。うーん、男の人だと思うけど。え、お父さんってそうだったのかな……うん、あれだね、故人のものは面白半分で触らないほうがいいよね。戻しとこっと。

 話逸れちゃったけど、これで人形の話は終わりだよ。オチとかないってば。え?紙に書いてあった人の名前?Bも趣味悪いな〜……えっと、Nさんだって。……あ、この人、知ってるかも。お父さんの葬式の時に来てた気がするんだよね……いや、曖昧な記憶なんだけど。

 うん、いや、全然大丈夫だよ。Bの役に立てたなら良かった。

 ところでさ、最近Aから連絡ないけど忙しいのかな?なんか不穏な投稿の後SNSも更新してないし。何もなければ良いんだけど。うん、それじゃおやすみ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る