第22話 温泉旅行① 勝負下着の準備OK?

 今日は2泊3日の温泉旅行の日だ。着替えなどのかさばる荷物は事前に旅館に送ってある。楽で助かるぞ。


今日の予定については移動中の新幹線で説明するらしい。乗る時間は朝早めなので、俺と姉ちゃんは集合場所の駅前に向かう。



 集合場所に向かうと、玲奈さん・玲那さん姉妹が待っていた。澪さんは…いないな。


「おはよう須藤君、寝坊して綾さんに迷惑かけなかった?」

可愛らしい笑顔で挨拶してくれる玲那さん。


「かけてないよ。自分でちゃんと起きたからな」


「そうなんだ。姉さんは寝坊したから、アタシが起こしたのよ。しっかりしてほしいよね」


「だって、旅行が楽しみで全然寝付けなかったんだもん…」


遠足前の子供と同じじゃないか!?


「玲奈。澪がいないけど、まだ来てないの?」

辺りをキョロキョロする姉ちゃん。


「綾達が来るほんの少し前に来て、トイレに行ったよ。すぐ戻ってくるって」


その言葉通り、澪さんは間もなく戻って来た。


「みんな来てるね。今から新幹線のチケット渡すからなくさないでよ」

澪さんは全員にチケットを手渡した。


「澪さんはしっかりしてるな…」

玲奈さんとは大違いだ。


「伊達メガネをかけてる澪はなのよ」

俺の独り言に小声でフォローする姉ちゃん。


まさか聞かれているとは思わなかった…。


「あれ伊達メガネなの?」


「うん。『キャラづくりのため』って言ってた」


そうなのか、知らなかったぞ。


「2人でコソコソ話してどうしたの? 貴くん・綾ちゃん?」

いつの間にか、澪さんが俺達に意識を向けている。


さっきまで玲奈さん達と話していたのに…。


「何でもないですよ!」


「そうそう!」


「ふ~ん…、まぁ良いけど。そろそろホームに行って乗ろうか」


澪さんが先導し、玲奈さん・玲那さん姉妹が続く。俺と姉ちゃんも置いて行かれないように後を追う。



 新幹線は指定席だが、座る前に澪さんが座席を回転させた。これで5人が向き合って座れる。座った結果…。


俺が3人の真ん中は変わらず、両隣は澪さんと玲那さんになった。向かいは玲奈さんになり、姉ちゃんは斜め向かいだ。


「チケットを取ったのはワタシだから、貴くんの隣にしちゃった。やっと隣になれたよ~」


澪さんの言う通り、2回にわたるファミレスの席決めで唯一隣になってなかったな…。


「澪ちゃんが『新幹線の座席予約は絶対ワタシがやる!』ってはりきってたのは、そういうことだったんだね。納得だよ」


疑問が解決したので、玲奈さんはスッキリした表情を見せる。


「それも大切な事だけど、みんなに今すぐ確認したいの。小声で話したいからよく聴いてね…」


何を訊く気なんだ? 澪さんは?



 「みんな、今勝負下着着てる?」


「…は?」

思ったよりくだらない事だった。


「旅館に着いたら、浴衣を試着するでしょ? 貴くんに勝負下着を見せる最初のチャンスなんだから、確認しないとね」


澪さんは女メンバーの顔色を窺う。


「私は大丈夫♪」


「アタシも問題ないです」


玲奈さん・玲那さん共にOKみたいだ。確認してる張本人が忘れる訳ないし、後は姉ちゃんだけなんだが…。


「一応着てるけど…」

姉ちゃんの表情は晴れない。


「自信ない感じ? 良かったら、ワタシが事前チェックするよ?」


「事前チェックってここでする気なの? 貴弘に見られちゃうじゃん!」


「じゃあ、貴くんの隣にいる妹ちゃんに目隠ししてもらえば良いよね?」


「綾さん。アタシやりますよ?」


「……やっぱやらない。ぶっつけ本番で良いわ!」


姉ちゃん、やけになってる?


「貴弘君。私が口出ししなくても、綾の勝負下着を観た時どうすれば良いかわかるよね?」


「なんとなく…」

玲奈さんからすれば、これも“女慣れ”の一環なんだろう。



 おしゃべりをしているうちに新幹線は発車した。ここから本格的に旅行が始まる。


「貴くんと妹ちゃんに、今日の予定をざっくり教えるね。綾ちゃんと玲奈ちゃんは復習のつもりで聞いて」


澪さんの今の状態が真面目モードか…。本当にしっかりしてるしじゃないの?


「新幹線を降りたら、軽くお昼を済ませるわよ。その後はタクシーで観光スポットを2か所ぐらい巡ってから、早めに旅館に着く予定ね。山奥にあって行くのに時間がかかるし、新幹線の移動も疲れの元だから」


「なるほど。よくわかりました」


「貴くんはすぐ旅館に行きたいかもしれないけど我慢してね」

ニヤニヤして俺を観る澪さんと玲奈さん。


「そんな事です! 観光地を巡るのも旅行の楽しみですから」

2人の頭の中はお花畑なんだろうか…?



 一通りの話が済んだ後、トランプやUNOで時間を潰す俺達。スマホがあればいくらでも時間は潰せるが、たまにはこういうのも良いよな。


そしてあっという間に下車したい駅に着き、俺達は降りるのだった…。

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