第21話 旅行先で使うでしょ?

 姉ちゃん・玲奈さん・澪さんの大学生3人と玲那さんを合わせた4人で旅行することになった俺。プランは大学生メンバーが決めてくれるので、決まるまで待とう。



 放課後にいつも通り、玲那さんの家まで付き添う俺。そんな中、彼女の母親の玲美さんと家の前でバッタリ会った。挨拶だけ済ませるつもりだったが「渡したい物があるの」と言ってきたので、お邪魔することにした。


「玲奈から聴いたわよ。夏休みに温泉に行くそうじゃない」

ダイニングテーブルについた後、玲美さんが俺に声をかける。


「ええ」


「良いわね~。今しかできないことはたくさんあるし、楽しんできてちょうだい」


「はい」

姉ちゃんが言った通り、今年しかチャンスはないからな。


「そんな須藤君にプレゼントがあるのよ」

玲美さんは立ち上がり、近くの棚から何かを取り出した。


そして、取り出したケースを俺に手渡す。何が入ってるんだ?


が入ってるの。旅行先で使うと思ってね」

わかってない俺に解説する玲美さん。


「お母さん、何を言い出す訳!?」

玲那さんは少し取り乱した様子を見せる。


「だって男1人と女4人の旅行でしょ? そういう目的もあるんじゃないの?」


…そういえば、玲美さんは玲奈さんに近い考えの人だったな。すっかり忘れていたよ。(4話参照)


「もう準備済みかもしれないけど、はたくさんあって損しないし、気にせず受け取ってちょうだい」


「わかりました。ありがとうございます…」

お守りとして、一応旅行先に持って行こう。



 後日。旅行のプランが決定したようなので、前回と同じファミレスに5人が集まる。だが、メンバーの座る場所は前と違う。玲奈さん・澪さんのリクエストにより、再びジャンケンで決める事になったのだ。


俺が真ん中固定なのは変わらないが、両隣は玲奈さん・玲那さん姉妹になった。ちなみに、玲那さんの隣も固定になっている。大学生が高校生相手にのが理由らしい。


俺の正面には姉ちゃんがいて、その隣に澪さんがいる。…姉ちゃんは俺を直視しようとせず、少し視線をそらすのが気になるなぁ。


「日程は8月上旬で、2泊3日にしたわ。ワタシ達大学生の夏休みは、始まりが遅いのよ。2人は早めに夏休みの宿題を終わらせてね」


澪さんが俺と玲那さんを観る。


「了解です」


「はい」


「お金はワタシ達3人で何とかするつもりだけど、できればある程度用意してもらえると嬉しいわ」


「わかってます。そこまで甘えるつもりはありませんよ」

一応バイトしてるから、ちょっとは出せる。


「アタシも須藤君と同じ気持ちです」


「2人とも良い子だね~。この旅行で貴くんはもちろんだけど、妹ちゃんとも親睦を深めたいと思ってるの。ワタシ、あなたのことも気になってるから」


「そうですか…」


俺達5人は同室だし、親睦を深める機会はいくらでもあるよな。



 「それはそうとみんな。勝負下着は買った?」

澪さんが女メンバーを観て言う。


俺がいるのに何を訊いてるんだ? この人は?


「もちろん♪」

先陣を切ったのは玲奈さんだ。


「一応…」

玲那さんは小さい声でつぶやく。


「……」

無言を貫くのは姉ちゃんだ。


「綾ちゃん買ってないの? 同室で着替えるんだから、ほぼ間違いなく貴くん観てくれるよ?」


「かもしれないけど、勝負下着はムードが大事って言うか…。見せるタイミングがあるでしょ?」


「見せることで良いムードになるかもしれないじゃない♪貴弘君も綾の勝負下着見たいよね?」


姉ちゃんの勝負下着? 興味ないんだが、全員の視線がそう言うのを阻止してるような…。


「少し気になるけど…」

これぐらいの表現で良いか。


「だって♪ 綾もすぐ勝負下着を準備しないとね♪」


「うん…」


姉ちゃんは頷いたが、所詮建前だよな。本当に準備するとは思えない。


「貴くんには誰の勝負下着に一番興奮したか訊くから、ちゃんと見るんだよ」


なんかよくわからないことに巻き込まれてる!? 旅行前から波乱の予感しかしない。本当に大丈夫か…?



 旅行のプランを全て聴いた俺達は現地解散した。まさか玲那さんも勝負下着を買っているとは思わなかった。玲奈さんの差し金かもしれないけど。


彼女達の勝負下着を観るってことは、俺の下着も間違いなく見られることになるだろう。家にある物で良いやと思っていたが、俺も新しいのを買うか。


そして時は流れ、旅行当日を迎える…。



※次回から数話にわたって“旅行編”の予定です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る