第18話 俺争奪戦が始まる前触れ?

 玲那さんの告白の練習をしてから、姉ちゃんの様子がおかしい…気がする。というのも、平日は夜遅く帰ってくるのが当たり前だったのに、最近は夕食を一緒に食べる回数が増えたのだ。


つまり帰宅時間が早くなったことになる。これだけなら『真面目になろうとしている』で片付くんだが、俺をチラチラ見ることが多いんだよな…。


それに何と言うか…、視線が前と違うように感じる。俺、疲れてるのかな?



 そんなある日の放課後。帰りのホームルームが終わり自席で帰る準備をしていると、携帯に姉ちゃんからの〇インが来ていた。すぐにチェックするか。


『今、玲奈の家の近くにあるファミレスに来てるんだけど、あんたと玲那ちゃんもどう? 話したいことがあるから』


話したいことって何だ? 訳が分からないけど、玲那さんに伝えないと。そう思ったら、向こうから俺の席まで来てくれた。


「須藤君。姉さんからこんな内容が来たんだけど…」

彼女はそう言って、俺に携帯を見せてきた。


『私達、家の近くのファミレスにいるの。伝えたいことがあるし奢ってあげるから、貴弘君と一緒に来てね♪』


玲奈さんも俺達に来て欲しいのか? 一体どういうつもりだ?


「実は、姉ちゃんからも似た内容が来たんだよ」

俺は玲那さんに、姉ちゃんの〇インを見せる。


「…本当ね」


「玲那さんが良かったら、俺と一緒に来て欲しいんだけど…」


「もちろん良いよ。アタシも気になるし」


こうして、俺と玲那さんは2人がいるファミレスに向かう。



 ファミレスに入ると、テーブル席に姉ちゃんと玲奈さんがいたのですぐに向かう。6限後は夕食には早い時間なので、人はまばらだ。なのですぐ発見できた。


…今まで会ったことがない女性が、2人と向かい合う形で座っている。暗めの金髪と黒いメガネが印象的で、かなり胸が大きい。この中でトップだな。


「この子が綾ちゃんの弟君と玲奈ちゃんの妹ちゃんか~。初々しさが残ってて良いね」


女性は俺と玲那さんをジロジロ見てくる。この人誰なんだよ? 俺は姉ちゃんに目配せする。


「あんたにはちょいちょい話したよね? この人が澪だよ」


橋場はしば みお。綾ちゃんと玲奈ちゃんと同じ大学1年だよ。気軽に名前で呼んでね、2人とも」


「はぁ…」


俺と玲那さんは顔を見合わせた後、澪さんに挨拶を済ませた。



 「姉ちゃん。俺と玲那さんはどこに座れば良いんだ?」


現在、俺達はテーブル席のそばで立っている状況だ。いくら人がまばらとはいえ、通行の邪魔になりかねない。早く座ったほうが良いよな。


「ワタシのそばにおいで、弟君。妹ちゃんも座って良いからね」

澪さんは空席部分をポンポン叩く。


「ちょっと待った。貴弘はあたしの弟なんだからあたしの隣でしょ?」

どういう訳か、姉ちゃんが異議を唱える。


「貴弘君は私が“女慣れ”の指導をした生徒よ。先生と生徒は隣同士じゃないと♪」


「そっちは2人でワタシは1人なんだから、こっちに座らないとバランスが悪いじゃない。5人だから3:2は避けられないし」


「そんなのわかってる。だからジャンケンで勝った順から座るところを決めてくよ。良いね、玲奈? 澪?」


「良いよ」


「ワタシ、絶対負けない!」


…何故か大学生3人が言い争っている。誰がどこに座るかで、こんなにヒートアップしなくて良いだろ?


「玲那ちゃんは貴弘の隣確定だから安心して。お似合いの2人を引き離す野暮なことはしないから」


姉ちゃんが玲那さんを観て微笑む。


「ありがとうございます…」


ちょっと待てよ。玲那さんが隣確定で、姉ちゃん達が俺の隣を争うってことは、俺の真ん中は決定事項なの? 文句を言いたいが、そんな雰囲気ではない…。


「いくよ、ジャーンケーン…」


姉ちゃんの掛け声を合図に、ジャンケンが始まる…。



 ジャンケンの結果、俺の両隣に玲那さんと姉ちゃんが座った。俺と向かい合うのは澪さんになり、玲奈さんは玲那さんと向き合う形になった。


この段階で疲れたんだが、こんなのは序の口なんだろうな…。姉ちゃんと玲奈さんがここに呼んだ理由を聞いてないし、長期戦を覚悟しないと!

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