第17話 姉ちゃんのことが好きだ!
俺の部屋で、玲那さんに告白する練習を姉ちゃん相手にすることにした。本番で失敗しないよう、気を引き締めて頑張るか!
「玲那さんのことが好きです…」
何だこれ? 実際に言葉に出すと全然違うぞ! 恥ずかしさが想像以上だ。
「声が小さいし、俯いちゃダメ!」
早速姉ちゃんに怒られた。しかし練習だから問題ない。もしこれが本番だったら…、考えるだけでテンションダウンだ。
「そんな自信なさげな告白、誰も受けないよ!」
姉ちゃんの言う通りだ。今度は姿勢を正して声を大きくしよう。
「玲那さんの事が好きです!!!」
「今度はうるさい! 叫べば良いってもんじゃない!」
またしても怒られる俺。理不尽だろ?
「さっきのと今の間ぐらいが、ちょうど良いかな~」
「わかった。…玲那さんの事が好きです!」
「声の大きさはそれで良いと思う。他は全然ダメだけど」
思いのほか、姉ちゃんが辛口コメントでへこむぞ…。
「場所はその時次第だから何とも言えないけど、他のアクションも一緒にしなさい」
「他のアクションって何だよ?」
「例えば…、手を握るとか」
姉ちゃんは俺の手を握り、自身の胸辺りにキープする。
「手を握られて貴弘を意識してる時に告白すれば、成功率上がるんじゃない? 『つり橋効果』みたいな感じでさ」
「なるほど…」
参考になるかもしれないし覚えておこう。
「手を握るなんて序の口だから、ホントはハグしながらやってほしいけどね~」
「ハグ!? それはいくらなんでも厳しいぞ…」
緊張し過ぎて告白どころじゃない。
「でしょ? あんたの身の丈に合う告白をすれば良いのよ。無理に背伸びするとバレて逆効果だから」
姉ちゃんはそう言うが、玲那さんにOKしてもらうにはドキドキを高めたほうが有利な気がする。手を握るよりハグのほうがドキドキするのは、言うまでもない。
「さて、これで最後にするよ。今までの話を踏まえて、あんたのベストな告白をしなさい!」
相手は姉ちゃんだ。失敗しても失うものはないし、積極的にやろう。
俺は彼女にハグしてから耳元で言う。「姉ちゃんのことが好きだ」
「なっ…」
姉ちゃんが呆気にとられるのは当然だ。なぜなら…。
「間違えた!」
“玲那さん”と言わないといけないのに“姉ちゃん”と言ってしまった。
俺はすぐさまハグを止める。これは我ながらひどすぎるぞ!
「……」
姉ちゃんは未だにボンヤリしている。一体どうした?
「お~い、姉ちゃん~」
俺は彼女の肩を掴んでちょっと揺らす。
その衝撃でハッとしたようなので、すぐに放した。
「あんた、いきなり何を言い出すのよ!?」
「ただの言い間違いだって!」
「これが本番だったら、どんな良い雰囲気も台無しになるよ。気を付けなさい!」
「わかった…」
今失敗したから良かったと思うしかない。
「ねぇ貴弘。ちょっと訊きたいんだけどさ…」
姉ちゃんは柄にもなく、恥ずかしそうにしている。
「なんだ?」
「あんた、あたしを『姉』として見てるよね? それ以上ってことはないよね?」
「? 言ってる意味がわからないが?」
「澪が言ってたのよ。『弟は姉をエロい目で観てる』って。だからさっき言い間違えたんじゃないの?」
「そんな訳ないだろ!? 澪さんって人のデタラメだよ!」
とんでもないことを言う人がいるんだな…。
「なら良いけどさ…」
「姉ちゃん、澪さんとは仲良くないってこの間言ってたろ? (15話参照)」
「あの時はそうだったんだけど、大輔の件から数少ないH好きの女同士、〇フレの情報交換をするようになったんだよ。その時にね…」
「そうか…」
「んで、あたし・玲奈・澪の3人でランチしてる時に、さっきのを言い出したって訳。Hしてるとよくわかるんだけど、男と女は考えが全然違うからさ~。『そんなはずない!』って言い切れなくて…」
男女の考え方の違いか。体付きが違うんだから、思考も異なっていてもおかしくない。
「…あたしはそろそろ帰るわ。言い間違えがなかったら、さっきので良いと思うから」
姉ちゃんは疲れた様子を見せて、俺の部屋を後にした。
姉ちゃんの話を少し聴いただけで分かる。澪さんはヤバい人だと。姉をそんな目で見るはずないだろ!
とはいえ、接点は1つもないから関わることはない。そんな変態の相手をさせられたら、俺の心身はボロボロになるだろうな。
なんてあり得ないことを考え終わった後、再びリラックスすることにした。
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