第10話 隣にいる男は誰だ?

 玲奈れいなさんの家に行った2日後。今日は月曜日なので、俺は高校に登校した。


この5日間、クラスメートの玲那れなさんと何度も顔を合わせたものの、1回も会話をしなかった。あの時初めて話したんだから、急に距離が縮まる訳がない。


俺達の関係が変わるには、きっかけが不可欠だろう…。



 そして同じ週の土曜日。今日は玲奈さんと服を買いに行く日だ。昨日の夜に連絡を受けたんだが、あの時の話を本当に実行するとは思わなかったぞ…。(7話参照)


大型ショッピングモールの入り口に現地集合することになっている。「お金は私が出すから心配しないでね♪」ということらしいが、俺もある程度持って行こう。


彼女に任せるのは、何か不安なんだよな…。



 約束の時間10分前に集合場所に向かうと、玲奈さんは既にいた。今回の発案者が遅刻する訳ないか。


「おはよう♪ ちゃんと早く来て偉いね♪」


「10分前なら常識レベルでは?」

どこが偉いんだよ?


「そんな事ないよ。悪びれる様子もなく遅刻してくる人って意外にいるからね。そんな人は〇フレにしたくないよ!」


玲奈さんのプンプン怒ってる様子から察するに実体験かな?


「…そんな話は良いから行こ♪」


「そうですね」


こうして、俺と玲奈さんは大型ショッピングモールに入るのだった。



 「貴弘君。服の選び方だけど、1着は一緒に選んでもう1着は別々に選ぶのはどう?」


服コーナーに向かってる途中に、隣にいる玲奈さんが言う。


つまり、互いに2着の服を選ぶことになる。俺はその2着とも買ってもらう事になるか…。


「わかりました。そうしましょう」


「…そうだ忘れるところだった。貴弘君、下着を1つ選んできてね♪」


「どうしてですか?」


「玲那のお土産にしようと思って♪」


「…は?」

また意味不明な事を…。


「本当は貴弘君が今履いてる下着が良いんだけど、さすがに嫌でしょ?」


「当たり前です!」


「新品でも君が選んだ下着なら、玲那のになると思うから」


オカズどころかゴミに近くないか? 使い道がないんだから。俺がブラを受け取るようなもんだろ。


「玲那といえば…、学校ではどう? 話すようになった?」


「全然です。前と変わりませんね」


「今の子ってシャイだよね~。やっぱり私がサポートしようか?」


玲那さんとの距離感がわからないのに、一方的に詰めるのはマズイな。嫌われる可能性がある。そうなると、今言うべき言葉は…。


「俺が頼んだらお願いします」

これが無難な回答だな。



 ようやく服コーナーに着いた。場所によって男向け・女向けの服に分かれてるが、下着屋のような「異性立ち入り禁止!」みたいな雰囲気は感じない。


これから一緒に選べそうで安心だ。


「最初は別々にしよっか。それを観て好みを知ってから、一緒に選んでみようよ♪」


「そうですね」


着いて早々、俺と玲奈さんは服コーナーで別行動をとる。



 今までの俺は服を適当に選んでいた。サイズと材質しか考えてなかったからだ。しかし、ここのところ私服姿で玲奈さんと会うことが多くなった。


そうなるとデザインも意識して買うべきなんだが、何がカッコ良くて何がダサいかがサッパリだ。どのデザインもカッコいい気がするし、ダサい気もする…。


う~ん、どうしたものかな~? 余計な事を考えたせいで、選ぶ手が止まる。


「貴弘く~ん」


俺を呼ぶ玲奈さんの声がしたのでそのほうを観ると、彼女の隣に知らない男がいる。一緒に向かって来るってことは、玲奈さんの知り合いか?


身長は俺より高く、短く刈り上げた茶髪とラフな格好が印象的だ。本人には言えないけど、遊んでそうなタイプだ。もしかしてあの人…。


いや、思い込みは良くないな。玲奈さんに詳しく聴いてから考えるとしよう。

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