第4話 意外な人と会う俺

 日曜日に玲奈さんの胸に触れてから約1週間後。今日は土曜日になる。高校生の俺と大学生の姉ちゃん・玲奈さんの生活スタイルは違うので、土日に女慣れの練習をすることになった。


姉ちゃんが言うには、平日は講義とバイト中心で土日は〇フレと遊ぶのがメインらしい。それが本当かは知らんが、年下の俺が心配することじゃないな。



 今回の女慣れは玲奈さんの家でやる事になっている。家の住所は彼女から聴いているから安心だ。時間は午前を指定されたので、それに従う事にする。


もうそろそろ玲奈さんの家に着くな。そう思って住宅街を歩いていると…。


「貴弘く~ん」

家の前に玲奈さんがいて、俺に手を振ってくれた。


待たせるのは悪いので、駆け足で彼女の元に向かう。


「おはよう♪ 迷子にならなかったみたいね♪」


「事前に調べましたから…」

〇ーグルマップでな。


そういえば、玲奈さんと2人きりになるのは今回が初めてだな。いつもは姉ちゃんがそばにいるし…。


「貴弘君には悪いけど、私の部屋に行く前にリビングに寄って欲しいの。お母さんが君に会いたがってるから♪」


「まぁ…良いですけど」


こうして俺は、玲奈さんの家にお邪魔する…。



 玲奈さんに続いてリビングに入ると、4人掛けのダイニングテーブルがある。…キッチンで物音がするから、向こうにお母さんがいるのか?


「貴弘君は座って待っててね♪」

玲奈さんはそう言うと、キッチンに向かっていく。


掃除が行き届いてキレイなリビングだ。俺は座って見渡せる範囲で観察する。


「何か気になるところあった?」


俺に声をかけたのは、お母さんの方だ。玲奈さんと共にリビングに戻って来たか。


「いえ、キレイなリビングだと思いまして。俺の家よりキレイです」


「ありがとう」

玲奈さんのお母さんは微笑んだ後、俺と向かい合うように座る。


玲奈さんは…、俺の隣か。


「良い子そうだし、女慣れなんてさせなくても今のままで良い気もするけど…」


「え? どうしてその事を…?」

俺・姉ちゃん・玲奈さんの3人しか知らないはずなのに。


「私が話しちゃった♪ 秘密って言われてないし…」

彼女は悪びれる様子を見せずにてへぺろする。


「心配しないで。お母さんは私寄りだから♪」


ということは、玲奈さんの〇ッチはお母さん譲り? …若々しい外見だけじゃ判断できん。人は見かけによらないよな~。


「わたしがもうちょっと若かったら、玲奈と一緒に手取り足取り教えたかもね」


玲奈さんだけで手一杯なのに、2人同時なんて考えられない…。



 「そういえば、まだ自己紹介してなかったわね。わたしは玲美れみっていうの。よろしくね」


「須藤貴弘です」


俺達は簡単に自己紹介を済ませた。


「貴弘君。簡単なもので良かったらだけど、お昼一緒にどう?」


「お昼…ですか?」

昼代が浮いて助かるが…。


「君みたいな若い男の子と話せる機会ってほとんどないのよ。おばさんに色々教えてちょうだい」


「俺で良ければ…」

あんな嬉しそうな顔されたら断りにくい。


「やっぱり良い子ね~。…玲奈、わたしは買い物に行くから後はお願いね」


「わかった」


玲美さんは近くにあるカバンを手に取り、リビングを出て行った。



 「お母さんに貴弘君を会わせたし、私の部屋に行こっか♪」


「そうですね」


リビングでの用が済んで立ち上がろうとした時、足音が近付いてくるのを感じた。そしてその足音は、リビングに入って来た。


玲美さんが忘れ物をしたとか?俺は足音のほうを観る。そこにいたのは…。


白鷺しらさぎさん。どうしてここに?」


彼女は俺のクラスメートだ。話したことはないが、珍しい苗字なので覚えている。ラフな格好をしていて、制服のギャップが際立つ。


「どうしてって…。ここアタシの家だし」


「え? 2人は知り合いなの?」

俺達の顔を何度も見てくる玲奈さん。


「ただのクラスメートだよ」


「あの玲奈さん。妹がいるって言ってましたよね? まさか…」


「うん。玲那れなのことだけど…」


俺は1回たりとも、玲奈さんのフルネームを聴くことはもちろん観ることもなかった。だから白鷺さんと玲奈さんが姉妹なのを見抜けなかったのだ。


「綾は『高2の弟がいる』としか言ってなかったから、私も同じように伝えたの。2人がまさか同じ高校で、同じクラスだったなんて…」


小・中と違い、高校は通学に時間をかけても不思議じゃない。みんながみんな、家から近い高校に行くとは限らないからな。玲奈さんが驚くのも無理はない。



 「須藤君。ウチに来た理由教えてくれる?」

白鷺さんはそう言ってから、玲奈さんの前に腰かける。


彼女に女慣れのことを話せと? クラスメートだから少しわかるが、彼女は真面目なタイプだ。玲奈さんが前言ったことは、嘘でも間違いでもない。


玲奈さんのサポートなしでは説明は無理だが、余計な事を言わないと良いな…。俺はそう思いながら、頭の中で説明のシミュレーションをする。

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