第30話 コハネにて


「うんめい!刺身うまい! 寿司最高!」


此処すげーな…日本食が普通にある。


醤油は微妙だけど、納豆まである事はある。


絶対にこの場所は転生者か転移者が関わっている筈だ。


「その生魚でなんで感動するのよ!」


「生で食べて大丈夫なの?」


「このハンバーグの方が美味いよ」


彼女達は和食が気持ち悪いらしく、和食洋食で洋食を選んだ。


ちなみにセシリアの食事介助は俺、イザベルの食事介助はエルザがしている。


手が真面に動かないから仕方ないよな?


「豆腐も、納豆も美味い!この美味しさは、まぁ俺の境遇しかわからねーよな!」


「その腐った豆がうまいわけないわよ!」


「うん、流石にそれは気持ち悪いよ」


「僕もそう思う!」


この味が解らないだと? 


まぁ、そりゃそうか?


俺の昔の友達にも『腐れ豆』と言って食べない奴が居たな。


「まぁ解らないなら仕方が無い、美味いのに…まぁ好きな物を自由に食べたら良いさ」


「「「リヒト」」」


最近、この程度で泣きそうな顔をするのな…


気にしなくても良いのに。


◆◆◆


しかし、これ本当に凄い。


畳みまである。


流石にテレビは無い。


かなり贅沢な内風呂付の部屋を選んだ。


流石に刺青の入った、ほぼ動けない2人を連れて露天風呂や大浴場は無理だ。


だから、家族用の内風呂付の部屋にした。


結構な金額が掛かるかと思ったが、長期の利用だと割引が効いて、通常の宿屋とあまり変わらない金額になった。


1か月宿泊予定にして、売り家を探す事にした。


◆◆◆



「介助頼まなくて良かったのか?」


「お金掛かるし、どうせ、その後ヤル事やるんだから要らないわ」


「うんうん、必要ないよ!」


「それじゃ、僕がイザベルをお風呂に入れるからセシリアは頼んだよ」


エルザは、イザベルの方が小柄だから、速攻でイザベルを選ぶ。


まぁ、いつもの事だ。


「此処の内風呂は露天風呂でなかなかだぜ! 座っているのが辛いなら俺が抱いていてやるから、景色を楽しもう…ほらよ」


手早く、セシリアの服を脱がし、軽く湯で流してやり、湯に浸かった。


「リヒト、熱いよ!熱いって」


「まぁそれは我慢だ、すぐに良くなるから」


「確かに、丁度よくなった気がするわ」


「だろう? エルザもイザベルもほら来いよ!」


湯の中に体育座りで座りセシリアを前に抱えながら、2人を呼んだ。


「だけど、熱いんだよ」


「そう、熱いんだよ」


「最初だけだから、すぐに気持ち良くなるからな…まぁ自分のペースで入れば良いよ、ほらセシリア、景色見て見ろよ、凄いだろう?」


此処、コハネは海も有れば山もある。


前世で言うなら、箱根と小田原が混ざったような感じだ。


此処からの眺望は海と山が見えて凄く絶景だ。


「綺麗…」


「だろう? 取り敢えず、今迄大変な旅をして体もボロボロなんだから、暫くはゆっくりしても良いんじゃないか? 綺麗な景色を見て、楽しい事して美味しい物食べてゆっくりすれば良いと思うよ!」


「そうね…ありがとう…リヒト」


「なに、2人で世界作ってんのかな?」


「僕たちがお風呂に入るのを躊躇していただけで…」


「いい加減、もう入れよ! 入れば直ぐに慣れるし、此処の温泉は傷にも良いんだからな!」


「だって、熱いんだから仕方ないじゃないか?」


「そうか…悪い、セシリア、此処に捕まっていてくれ」


セシリアに湯舟に捕まって貰った。


「リヒト、どうするの?」


「こうするんだよ!ほらよっ!」


「熱いっ、あつっ、リヒト酷いよ!」


俺はお湯を手で救いエルザにぶっかけた。


「仕方ないな、ほら貸せよ!」


イザベラをエルザから分捕り、そのまま、一緒に湯舟に沈んでいく!


「リヒト、熱いって火傷しちゃうよ!」


「しねーから」


抗議するイザベルを無視して湯に浸かっていく。


「熱いって」


「すぐ慣れるからな」


「ううっ、熱いけど…大丈夫…かな」


「そうだろう? 後は..」


「僕は良いよ、ちゃんと自分で入るから」


「駄目だーーっ」


俺はエルザの腕を掴んで湯舟にダイブした。


「熱いっ!熱いよ、火傷しちゃうから」


「大丈夫だから」


そのまま肩を押さえつけていたら諦めたようだ。


◆◆◆


「温泉って初めて入ったけど、ふぃー気持ち良いわね」


「最初は熱かったけど、今は丁度良いね」


「僕も同じ、景色も良いし最高だね」


「そうだろう? ただのぼせるといけないから、もう充分だと思ったら言えよ、拭きあげて浴衣を着せてやるから」


「景色も良いし風が気持ち良いから大丈夫よ」


「そうそう、涼しくて気持ち良いよ」


「うんうん、海も見えて最高!」


「そうか?体調が良かったら、明日は海に連れていってやるからな」



今迄苦労したんだから、これ位良いだろう。





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