第29話 明日の俺は疲れ果てているかも知れない。


「ようやく着いたな」


前世と違い、車も新幹線も無いから、旅は凄く大変だった。


「私達、此処で暮すの?」


「結構な田舎だね」


「はははっ、本当に田舎だね」


此処はコハネ。


山だけど、結構有名な温泉があって近くに海も湖もある。


それに此処は入り口だから栄えてないが、温泉街まで進めば、それなりに開けている筈だ。


暫くは宿で暮らしながら、住みやすい家を探して購入。


この辺りが目標で良い筈だ。


「まだ、入り口だからだよ、温泉近くには温泉街、海の近くにも街があるから、もう少しは開けている筈だよ、まぁ観光地でもあるからな」


「それで、此処でなにをする訳?」


「何か仕事でもするの?」


「僕も何かしようか?」


「いや、三人にはゆっくりして貰うつもりだ、温泉に浸かって、美味しい物を食べてな、そうすれば、かなり痛みもやわらぐ筈だ、あと此処を拠点にして、俺は狩りを中心に剣の腕を磨くつもりだ」


正直に言えば、三人を治す手段はある。


そして、必要な物は『くすねてある』


「なんだか、凄く悪いね…こんな体でごめん…」


「私も、迷惑ばかりだよ」


「僕迄、面倒見て貰って、本当にごめんなさい」


「良いって、良いって…治ったらその分こき使うからな、気にするな」


「「「リヒト」」」


3人とも感動しているが、俺には打算がある。


三人を治す方法は既に思いついている。


それには二つ必要な物がある。


1つは、死んでなければ何でも治す薬、エリクサール、本来なら此奴で治りそうだが、恐らく聖剣で斬られたから効かない。


なら、どうすれば良いのか?


簡単だ。


聖剣で傷ついた傷、内臓を一気に切断して、すぐにエリクサールを振りかける。


これで平気な筈だ。


必要な二つ目、それは剣の腕だ。


傷を斬り落とす様な攻撃。


という事は傷を挟む様に体を抉らなければならない。


つまり、聖剣で傷ついた傷を挟むような2撃を放たなければならない。


恐らく1撃でも、タイミングによっては死にかねない斬り方を2撃。


残念ながら、俺もエルザも出来ない。


チャンスは1度。


失敗したら死なせてしまう。


だからこそ、もっと経験を積む必要がある。


そこに辿り着くまで、どの位の時間が掛かるか解らない。


だから、こそ、少しでも痛みがやわらぐように湯治を思いついたんだ。


「なんて顔しやがるんだ?別に恩にきる必要は無い! 充分恩なら別の形で返して貰っているからな」


「そうかしら? 全然足りてないと思うわ、それなら今からでも…」


「そうだよ!全然返しきれていないから、それじゃ…」


「それなら僕も!」


「待て!待て! 此処は人通りもあるし、温泉宿の泊るつもりだから、その時で良いから…その分、沢山楽しませて貰うから」


「そう、解ったわ、夜が楽しみだわ」


「今日は寝かしてあげないからね?」


「うんうん、それじゃ夜どうし頑張ろうか?」


嬉しいんだが…多分明日俺は太陽が黄色く見える位疲れていそうだな。

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