theater15: 闇バイト 

■■<ヤス・3>■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 コラァ、ヤスッ!!さっきからカッチャカチャカチャカチャカチャ、グラス鳴らしてんじゃねーぞ!背すじ伸ばしてアゴ引いて、シャキッと立ちやがれ!言っとくけどな、テメェの持ってる盆の上のグラス、10万近くする超高級品だから。全部で、じゃねえぞ。1つ10万だからな?シノギの少ねぇ俺たちに、兄貴が回してくださった有難い仕事だ。ウェイターの経験あんだろ?ぜってぇヘマすんなよ。

 それにしても、すっげえウチだな。ってか、もう城?ヨーロッパのどっかからそのまんま持ってきたって、海外の金持ちはやることがスゲーや。チンケなクルーザー貸切ってイキがってる日本のパリピに見せてやりてえよな。ってわけで家主も客も外人ばっかだけど、そんなに緊張すんなよ。黙って盆持ってウロウロしてりゃ、適当に向こうさんがグラス持ってってくれるから。


 え?緊張して震えてんじゃない?

 

 ワイン補充しに地下に降りたら黒い棺桶?の中から人が?……ああ、あの暖炉の前で立ってるロマンスグレーのイケオジ。ここの家主だって。終活準備じゃね?あんだけガタイがいいと出来合いの棺桶じゃムリだろ。オーダーメイドで早目に準備たぁ恐れ入るね。いざという時にも慌てない、いい心掛けじゃねぇか。


 外から飛んできたコウモリが変身して、あっちのマント姿のイケメンに?……うん、たぶんマジシャン。パーティの余興に雇われたんだろ。舞台に立つ連中って、よくあんなカッコしてんじゃん。さすが本場ヨーロッパ人、バッチリ決まってんな。


 みんな鏡に映ってない?ま、美男美女過ぎて鏡もコピーすんのに時間がかかるんじゃね?その証拠にホラ、俺達はきっちり映ってんじゃん。あっさりのっぺりな東洋人種なんてやだねー。


 え?俺は酒運ばなくていいのかって?

 バーカ、俺の仕事は半分済んでんのよ。

 なんの仕事かって、大きな声じゃ言えねぇんだけどさ……「処女」を集める仕事。しかも、若くて見た目もいいのを10人以上とか、もう大変だったんだからな。いちいち確かめるわけにもいかねぇから申告制だけど。良心?ねぇよ、そんなの。真夜中のパーティのコンパニオン日給5万円っていったらホイホイ集まってきやがった。うまい話にゃウラがあるって教訓を学ぶいい機会だと思ってほしいね。

 あ、そうそう。「童貞も可」って言われたんで、お前も数に入れてっから。12時過ぎたら2階の薔薇の間に来るように、だとさ。泣くな、男になってこい。 

 おっと、アクセサリーは禁止だった。お前、十字架のネックレス着けてたろ。預かってやるから外しとけ。何で駄目かって?さあ、よく分からねえけど、色々事情ってもんがあんだろ。


 あとの半分?夜明け前に屋根の上の鐘をついてパーティのお開きを知らせるだけの簡単なオシゴトでーす。ってな。それまでは手酌でチビチビやっとくから、お前はさっさとあっちに酒配りに行きな。


       ( Party of Vampires ・ Fin )


 


 

 







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