ショートホラー・シアター

theater１： トンネル怪談

■＜ヤス＞■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

　コラァ、ヤスッ！！さっきからカッタカタカタカタ、壊れたカスタネットみてぇな音出して歯ぁ鳴らすなっつってんだろが！運転に集中できねぇだろ！！

　いいか、怖い怖いと思ってっから怖いんだ。幽霊の正体見たら何とかってことわざがあんだろ？あれだよ、あれ。

　窓に手形がいっぱいついてるぅ？近所のガキがベタベタ触りやがっただけだろ。

　後ろから白い着物のババアが走ってくるだぁ？そりゃあ、３年前に死んだお前のバアさんが守護霊になろうと追っかけてくれてんだろ。ありがたいねぇ、迎えに行ってやれよ。ムリ？冷てぇ奴だな、おい。

　お前の隣に座ってる女？おう、ミラーで見えてる。出る前に後ろのトランクルームに詰めたのにおかしいよな。一人が寂しくて出てきちまったかな。そんなんだから兄貴にドタマかち割られるんだよ、うっとうしいってな。埋めるときゃ深めに穴掘らねぇと。

　うぉっ、またあの警備員来やがった。右行け右行けって、もう１８回目じゃねぇか。参るぜ、ホント。

　でも何が参るかって、１時間も前にガソリン切れてんのにスピード落ちない上にブレーキも効かねえんだよな、これが。

　……おい、ヤス。目ぇ開けたまま寝てんじゃねぇよ……何かしゃべってくれよ、ヤス…………。

　　　　　　（In the tunnel ・ Fin)