第6話「王太子との結婚式」




結婚式当日。


朝早くに起こされ、髪を手荒く梳かされ、顔に原型がわからなくなるようなけばけばしいメイクをされた。


式場の花嫁控室に連れて行かれ、ウェディングドレスに着替えさせられた。


ウェディングドレスは、私の想像の斜め上をいく派手なデザインで、金色の布地にビーズが縫い込まれ、見てるだけで目がチカチカした。


「あのメイドに、いちごなど果物の種が、必ず喉に突っかかる魔法をかけてやりたいのだ!」


フェルはジャネットに対して終始プリプリと怒っていた。


式場に入ると、参列客からどよめきが起きた。


「清楚な妹王女ではなく、浪費家の姉の方が嫁いで来たというのは本当だったのだな」

「浪費家な王太子妃などこの国は不要だというのに」

「体の良い厄介払いをされたな」

「なんとセンスのないデザインのドレスだ」

「心だけでなく顔も不細工とはな……」


会場のあちこちからため息が漏れる音が聞こえた。


フェルだけが「みんなアリーのこと何も知らないくせに、勝手なこと言うななのだ!」私の味方だった。


彼の存在は心強い。


一人だったらきっと挫けていた。


ありがとうフェル、あなたがわかってくれただけで十分よ。


私の斜め上を飛んでいるフェルに向かってニッコリと微笑む。


祭壇の前で待っている王太子の横に並ぶ。


王太子殿下は漆黒の礼服に身を包んでいた。長身の彼に黒い服は良く似合っていた。


王太子はこちらをちらりとも見もしない。


「なんじ病める時も健やかなるときも…………新婦を愛し続けることを誓いますか?」


「誓います」


「なんじ病める時も健やかなるときも…………新郎を愛し続けることを誓いますか?」


「誓います」


形だけの誓いの言葉を述べた。


「よろしい、では誓いのキスを」


はぁ……とうとうこのときが来てしまった。


本当に口づけするのかしら……?


王太子は私のヴェールを上げると、真紅の瞳で私をギロリと睨んだ。


嫁いでくると思っていた可憐な代王女ではなく、評判が悪い第一王女が嫁いできて、その上モンスターから助けたのに「化け物」と言われたのだ……睨まれても仕方ない。


王太子は顔を近づけ、「安心しろ本当にはしない。フリだけだ。化け物に触れられたくはないだろう? 俺もお前に触れたくはない」口づけするふりだけして、顔を放した。


「二人をここに夫婦と認めます」


神官様がそう宣言し、会場からまばらな拍手が起きた。


横に立っている王太子殿下を見上げる。


彼は冷たい顔をして会場を見ていた。


王太子殿下は「化け物」と言われたことを、相当気にしているみたいだ。


関係の修復は難しいだろう。


どうしよう? 庭園の使用許可を取りたいのに、どうやって許可を貰おう?



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