【完結】「妹の身代わりに殺戮の王子に嫁がされた王女。離宮の庭で妖精とじゃがいもを育ててたら、殿下の溺愛が始まりました」

まほりろ

第1話「殺戮の王太子に嫁ぐことになりました」




「アリアベルタお前には、ノーブルグラントの第一王女として、ヴォルフハート王国の王太子に嫁いでもらう。よいな?」


「っ……?」


突如、玉座の間に呼び出され陛下から告げられた言葉に、驚いて声が出なかった。


「レオニス様って殺戮の王太子とか、戦鬼とか呼ばれているのでしょう?怖〜〜い。わたくしが嫁ぐのではなくて良かったわ」


異母妹のシャルロットが、美しい顔を歪めクスクスと笑っている。


「愛人の娘であるアリアベルタでも、ようやく役に立つ日が来たか」


異母兄のバーナードお兄様が、美しい金髪をかきあげ、フッと笑った。


「国境の付近でモンスターの襲撃に遭い、運良く隣国の王太子に助けられた。その折に、『王女を嫁がせる』と約束してしまってな」


「お父様のお話を聞いて、わたくしびっくりしたわ。隣国は貧しい小国、しかも王太子自ら剣を取り戦い、その身はモンスターの返り血で汚れているというではありませんか。わたくし、そのような方に嫁ぎたくありませんもの」


「そうだな。可愛い娘をそんな男のところには嫁がせられん。しかし約束は約束だ。そこで思い出したのが、お前のことだ。愛人の子とはいえ、お前も一応は王女だからな。シャルロットの代わりに、隣国に嫁いでくれるな?」


陛下の有無を言わせぬ物言いに、私は頷くしかなかった。


バーナードお兄様とシャルロットは正室の子で、ふたりとも顔立ちが美しく、プラチナブロンドの髪にアイスブルーの瞳、陶磁器のようにきめ細やかな白い肌をしている。


対して私は陛下が街場に散策に出た折に、立ち寄ったカフェで働いていた女性の娘で、髪は茶色く、瞳は緑の目、顔立ちも平凡、顔も程よく日焼けしている。


レモンイエローの可憐なドレスをまとった妖精のように愛らしいシャルロットと、母の古着を直して着ている冴えない私。


陛下にとってどちらが大切なのか、一目瞭然だった。





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