女御国の攻防 1
森 三治郎
第1話 馬の背
改暦1250年、4月、女御国、馬の背
「隊長、賑やかですね~」
「隊長は止せ。今回はあくまで秘密裡の偵察で、ワシらは観光旅行客だ」
「そうでした。すみません」
「それにしても、ここは女の人が多いですねえ。女の人が活発に動いていて、男は遠慮がちに居やがる。影が薄いや」
「それが
「情けない」
「女の腐ったような・・・・いや、ここでは男の腐ったようなと、言うのかな」
「ははは、そんなようなところかな」
羅漢国の第一隊隊長、
三人は旅行客を装っていたが、かなり女御国では浮いている。そもそも、女御国で活発に動いているのは、ほとんど女性で男はほとんど見かけない。そこへ、イカツイ男が三人も連れ立って歩いていれば、否が応でも目立ってしまう。
好奇の目に
「ちょっと、そこの人・・・・」
『
見ると、机に『占』と染め抜いた布の前で手招きしていた。
「俺・・・・?」
「そう、あなた。見てしんぜましょう」
副長がふらふらと吸い寄せられるように、近づいた。
「手を・・・・」
占い師は、差し出された手をしげしげと見つめていた。
「羅漢国から来なすったか」
「えっ、どうしてそれを」
「これでも、占い師をしています」
「う~ん」
隊長と伍長は、イカツイ、むさくるしい男が羅漢国の男、それも兵士であることに察しがつきそうと思ったが、副長が驚いているので黙ってみていた。本当は驚いているフリかもしれない。
「名前は」
「
「ほう、ヌマッチ ヒロシねえ。手を出して」
占い師は、沼地の手をジッと見た。すると、見る間に眉間に深いたて皺を刻み、固まってしまった。
「何か良くないことでも」
ハッと占い師が沼地に視線を戻すと、「この占いは、無かったことに・・・・、お代はいりません」と言った。
「えっ、どういうこと」
「今日は、もう店じまいじゃ」
呆然とする三人をしりめに、机やイスを片付け始めた。その時、「不吉だ」「良くないことが起きる」と小さく呟いているのを三人は聞いてしまった。
―女御国、統合庁舎、総長室―
「女御さま、
「うん、槐殿が・・・・・」
訝しく思ったが、事前の通知も無く面会を求めるとは、事は緊急を要するらしい。
「通して下さい」
槐は通される早々「見ました」と言った。
「何を見たのです」
「あっ、失礼しました」
槐は最初から説明を始めた。
満の町で不審な三人組を見たこと。旅行客を装っているが、羅漢国の兵士らしいこと。
その中の一人、沼地 広を呼び止め手相を見たこと。そして、凶相が出たこと。
「私の占いが、外れていれば良いのですが」
「う~ん。槐さんの占いは当たるからね~」
「内内で
「う~ん、取り敢えず、緊急幹部会議を招集します。槐殿もご参加を願います」
「承知しました」
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