第11話(4)突然の……

「ブオオッ!」


「戦闘機の影が飛んできます!」


 雪が声を上げる。


「ちっ……」


「佐々美隊員、ちょっと待ってください」


 前に進み出ようとする葉を深海が制す。


「はい……?」


「ここは任せてもらいます……!」


「ブオオッ⁉」


 戦闘機の影が数機、コントロールを失い、地面に墜落して、霧消する。


「こ、これは……⁉」


「コックピットにハッキングして、計器類をいじらせてもらいました……」


 自らの側頭部を抑えながら、深海が雪の問いに答える。


「ブオオッ‼」


「まだ何機か残っています!」


 葉が上空を指差す。


「ちいっ、さすがに数が多いですね……」


 深海が舌打ちして呟く。


「宙山隊員! ここは自分たちが行くぞ!」


「ええ!」


 雪が葉の呼びかけに応える。


「待ってください! お二人の力は温存しておいてください……」


「し、しかし……」


「で、ですが……」


 葉と雪が戸惑う。


「大丈夫です! 雷電隊員!」


 深海が自らの手首に着けたブレスレットを見せる。天空が驚く。


「それは⁉」


「行きますよ!」


「おっしゃあ!」


「……今です! 拳を振るって!」


「そらあっ!」


「ブオオオッ⁉」


 深海が動きを停止させたところに、天空の振るった拳から雷が放たれ、戦闘機の影を撃墜し、霧消させる。深海が満足そうに頷く。


「さながら『超雷撃砲』ですか……」


「シャアッ!」


「巨大ワニの影が数匹、こちらに近づいてきます!」


 花が声を上げる。三丸が手袋を着けながら冷静に応える。


「宇田川花隊員、より正確な報告を……全部で何匹だ?」


「は、はい! 全部で十匹!」


「こちらに向かってきているのは?」


「四匹です!」


「そうか……宇田川竜隊員、どうする?」


 三丸が竜に尋ねる。


「は、はい! やはり脚部を攻撃し、機動力を奪うべきかと!」


「良い分析だ……参考にさせてもらおう。あくまでもだが……」


「あ、あくまでも?」


「はああっ!」


「シャアアッ⁉」


 巨大ワニの影の群れに突っ込んだ三丸が、巨大ワニの影の頭部あたりを次々と殴りつける。強烈な攻撃を食らった巨大ワニの影は吹っ飛んで霧消する。三丸が呟く。


「まずは四匹……」


「ぶ、分析の意味⁉」


「へへっ! 分かりやすくていいぜ!」


 戸惑う竜の横で蘭が笑う。


「シャアアッ!」


「も、もう二匹向かってきています!」


 花が慌てて声を上げる。


「氷刃隊員!」


 三丸が自らの手首に着けたブレスレットを見せる。陸人が驚く。


「そ、それは⁉」


「行くぞ!」


「は、はい!」


「……今だ! 撃て!」


「はい!」


「むん!」


「シャアアッ⁉」


 陸人が銃弾を乱射したところに、三丸が拳を叩き込む。巨大ワニの影は倒れて、霧消する。


「ふん、『弾拳乱撃』といったところか……」


「ははっ、別にツインアタックとか必要ねえんじゃねえの……?」


 蘭の笑いが苦笑に変わる。


「鬼、戦闘機、巨大ワニ、それぞれ四体ずつに減りました!」


 花が皆に報告する。


「ふむ、一隊につき一体として、後は早い者勝ちかな?」


「甘くみないほうが……」


 夜塚に深海が注意する。


「我が隊だけでも十分だ……」


「ははっ、松っちゃんだけの間違いじゃないの?」


 両手の指をポキポキと鳴らす三丸を見て、夜塚が笑う。


「ほ、本当にやってしまいそうだから怖い……」


 深海が小声で呟く。


「……早い者勝ちで良いな?」


「そうだね」


 三丸の問いに夜塚が頷く。


「それは困るねえ……」


「‼」


 三隊と影たちの間に水仙が現れる。蘭が首を傾げる。


「……誰だ?」


「水仙一子さん、ボクらの上司……つまりはこの第四部隊の総責任者だ……」


 夜塚が淡々と呟く。


「へえ、クールビューティーだねえ……」


「そんなことを言っている場合か……!」


 軽口を叩く慶を葉がキッと睨み付ける。


「……困るとはどういうことですか?」


「夜塚、君は分かっているだろう……薄々勘付いていたみたいだからね」


「念のための確認です」


「はっ、念のためね……色々とデータは取れたから、君たちにはそろそろご退場願おうと思っていたんだよ……ふん!」


「グウウ……」


「ブオオ……」


「シャアア……」


「⁉」


 四体ずつ残っていた、鬼と戦闘機とトカゲの影たちが融合して、四体の一回り巨大な影になった。深海が驚愕する。


「じ、人為的に融合させた⁉」


「せっかく結成した部隊だが、ここで消えてもらう……」


 水仙が不敵な笑みを浮かべる。

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