第11話(2)陸海空待機中

                  ♢


「なんで僕らだけ別室なんだろう?」


 天空が呟く。


「さ、さあ……?」


 陸人が首を傾げる。


「……なにか理由があるのでは?」


 椅子に座って、腕を組みながら目を瞑っていた大海が目を開いて反応する。


「理由って?」


「さあ、そこまでは分かりません。ただ……」


「ただ?」


「なんらかの意味はあるはずです」


「なんらかの意味?」


「ええ」


 大海が頷く。


「意味ってなんだろう?」


 天空が陸人に視線を向ける。


「う、う~ん……?」


 陸人が首をさらに傾げる。天空が大海に尋ねる。


「大海っぴ、何か分かる?」


「大海っぴ⁉」


 大海が面食らう。


「ん? どうかした?」


 天空が首を傾げる。


「い、いえ……考えられることは……」


「おっ、なになに?」


 天空が身を乗り出す。


「私たちは経験者だということです」


「……経験者?」


 天空が顎に手を当てる。


「ええ、トリニティアタックの」


「ああ、そっちの経験?」


「? そっちって、どっちだと思ったのですか?」


 大海が不思議そうに首を傾げる。天空が手を左右に振る。


「いいや、なんでもないよ……ねえ、陸人っち?」


「い、いや、そこで話を振らないでよ!」


 陸人が戸惑う。


「? とにかく、今回のこの部屋割りを決めたのは隊長のお三方です。なんらかの意味は必ずあるはずです」


「あ、そうなの?」


「そうですよ、ご存知ありませんでしたか?」


「全然ご存知なかったよ。そっか~隊長さんたちが……」


「ふむ……」


 天空と陸人が揃って考え込む。


「どうかしましたか?」


 大海が二人に尋ねる。天空が口を開く。


「大海っぴさ……」


「はい」


「多分だけど……」


「はい……」


「隊長さんたち、そこまで考えてないと思うよ」


「えっ⁉」


 天空の言葉に大海が驚く。


「右に同意……」


「ええっ⁉」


 陸人の呟きに大海がさらに驚く。


「だって、うちの隊長はそういうことに興味なさそうだし……」


 天空が自らの顎をさすりながら話す。


「ふ、深海隊長が?」


「うん、自分の研究とか、そういう方が大事だと思うよ」


「み、三丸隊長は?」


 大海が陸人に尋ねる。


「何も考えてない」


「断言⁉」


「はっきり言って脳筋だし」


「脳筋⁉」


「あ、こ、これは言わないでよ! 内緒でお願い!」


 陸人が慌てる。


「ううむ……信じられない……」


「大海っぴ、夜塚隊長のことを考えてみなよ?」


「……確かに何も考えてなさそうですね」


「そうでしょ?」


 大海の返答に天空が笑みを浮かべる。


「では、なおさらのことですが……」


「うん?」


 天空が首を捻る。


「私たちが考えておかなければなりません」


「考えるって……何を?」


 陸人が問う。やや間をおいて、大海が答える。


「……それを考えましょう」


「ええ……」


 陸人が困惑する。


「まあ、暇つぶしにはちょうど良いかもね~」


 天空が後頭部を両手で抑えながら、椅子の背もたれに寄りかかる。


「……とりあえず喫緊の課題は……」


「う、うん……」


 大海の話に陸人が耳を傾ける。


「私たちのトリニティアタックのネーミングに関してです」


「そ、それが喫緊の課題⁉」


「え~『真剣拳波』で良いじゃん~」


 驚く陸人の横で天空が両手を広げる。


「見直しが必要かと……」


「大海っぴはどんな名前が良いの?」


「それはこれから考えますが……」


「陸人っちは? このまま? 見直す?」


「ど、どっちでもいいかな……」


 陸人は素直な思いを口にする。


「ふむ、平行線ですね……」


「こうなったら……」


 大海と天空がそれぞれ両手を重ね、揉み手する。


「「相撲で決める!」」


「ええっ⁉ 相撲⁉ じゃんけんの流れかと……」


 陸人が戸惑う。


「よしっ! 陸人っちも脱いで上半身裸になって」


「な、なんで俺も⁉」


 天空の言葉に陸人がさらに戸惑う。そこに警報が鳴る。


「! ん? メッセージが……石川隊だけ出動せよ……? 失礼!」


「た、助かった……」


 部屋を出る大海の背中を見ながら、陸人が胸をなでおろす。

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