第6話(2)各々の自己紹介

「はあ、はあ……」


「はあ……」


 陸人と竜がなんとか立ち上がり、肩で息をする。


「休憩は十分だな?」


「い、いや、今日はもう上がって良いですか?」


「良いわけがないだろう。これからが本番だ」


「そ、そんな……」


「せ、殺生な……」


 三丸の言葉に陸人たちは愕然とする。


「ゲートバスタ―ズの隊員ならば、これくらい普通だろう」


「い、いや、俺は射撃専門ですから……」


「ぼ、ぼくは分析班です……」


「それがどうした」


「ど、どうしたって……」


「一度戦場に出れば、そんなことは通用しないぞ。イレギュラーどもは聞く耳など持ってはくれんからな」


「む……」


「大体、戦闘が長期戦に及ぶケースも想定出来る。体力が尽きましたと言って、素直に首を差し出すつもりか?」


「むう……」


「見てみろ、女子二人はいたって涼しい顔だぞ?」


「……」


「………」


 三丸がマラソンを走り終えた花と蘭を指し示す。


「う、ううむ……」


「男として情けなくはないのか?」


「そ、それは……」


「もう少し根性を見せることだな」


「お、お言葉ですが……」


「うん?」


「『適材適所』という言葉もあります……」


「まず適材になってから抜かせ」


「うぐっ……」


 三丸の返す刀に陸人は黙り込むしかなかった。


「ス、スパルタだなあ……」


 天空が小声で呟く。


「……それじゃあ、顔合わせですし、自己紹介と行きましょうか」


「うむ」


「オレは深海破竹、富山の第四部隊の隊長です。よろしくお願いします……」


「ワタシは三丸松、福井の第四部隊の隊長だ。よろしく頼む」


「富山側から自己紹介しましょうか。それじゃあ雷電隊員から……」


 深海が天空を促す。


「は~い♪ 雷電天空で~す、よろしく~♪」


「!」


「痛っ⁉ な、なんで足踏むのさ、雪っぺ~」


「もっとしゃんとしなさいよ!」


「……見た目通り、チャラいですね……」


「いや、分からんぞ……」


「え?」


 花が蘭の方を見る。


「ああいうのが、戦場において高い実力を発揮するもんだ……夜塚隊長のようにな」


「ああ……似ているといえばそんな感じもします……」


 花が納得したように頷く。


「宙山雪です。どうぞよろしくお願いします」


「うん……どうだい、竜くん?」


 陸人が竜に話しかける。花が聞き耳を立てて呟く。


「珍しく真剣な表情……」


「……ポニーテールはいつの時代も正義!」


「それな!」


「‼」


「あだっ⁉」


「あでっ⁉」


 花が陸人と竜の頭を小突く。


「な、なんだよ、急に頭を殴ってきて~」


「真面目に聞きなさい……!」


「佐々美葉です。よろしく……」


「……どう思う?」


「巫女さんは神秘!」


「それ……でっ⁉」


「真面目に聞け……もう一度マラソン走りたいか?」


「い、いいえ……!」


 蘭に睨まれ、陸人と竜が震え上がる。


「それじゃあこっちの紹介だな、氷刃隊員から」


「は、はい、氷刃陸人です! よ、よろしくお願いします!」


「なんか泣いている?」


 雪が首を傾げる。天空が首をすくめる。


「僕たちと会えての嬉し涙じゃないかな?」


「絶対に違うと思うわ……」


「宇田川花です。よろしくお願いします」


「宇田川竜です。よ、よろしくお願いします」


「双子ちゃんだ~」


「え、ええ……」


 天空の反応に花がやや面喰らう。


「どっちが年上?」


「ワタクシです」


「だろうね」


「そうでしょうね」


「秒で分かった」


 花の返答に天空たち三人が揃って頷く。竜が声を上げる。


「ええっ⁉ 皆さんなんかちょっと酷くないですか⁉」


「そのぶっちぎりの低評価は訓練で覆せ……」


「隊長! ぶ、ぶっちぎりって!」


「最後は……」


「はい、志波田蘭です! よろしく!」


 蘭の声が響き渡る。


「おほ~すごい迫力♪」


「気合のノリが良いな。鬼と呼ばれるだけはあるということか……」


 笑顔の天空の横で、葉がうんうんと頷く。蘭がそこに近づく。


「鬼退治はさせねえぞ?」


「……なにか勘違いされておられるようだが、今日は合同訓練だ。模擬戦ではない」


「ふん……」


「それでは……」


「ああ、合同訓練ポイントに移動するぞ」


 深海に促され、三丸が指示を出す。


「え? ここじゃないんですか?」


「基地内じゃつまらんだろう? どうしてもマラソン希望なら考えるが……」


「いいえ! 移動しましょう! 今すぐ!」


 天空がしゃきしゃきっと動く。

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