110-2
「2件目は孤児院の養子の件」
「養子?今回の旅と何の関係があるんだ?」
そもそも護衛で行ってる以上、尤もな反応だ
「こっちもたまたま。孤児院のセシリオが騎士になりたがってるのは知ってる?」
「もちろんだ。俺達も時々剣を教えてやってるからな」
「だよね。その事で領主の騎士団に入る方法をルークが訊ねたのがきっかけで、今回護衛で来てた騎士のジーンさんが養子にしたいって」
「騎士が?珍しいな?」
この世界、騎士の家には何故か子供が多い
だから敢えて養子をとることは無いというのが定説だ
「奥さんが3人目以降止められたらしいよ。でも息子が欲しかったのと、どうせなら剣を使える子がいいって希望があったんだ」
「なるほど?まぁ、剣にしろ魔法にしろ自分のガキとやり合いたいのは男親あるあるだからな」
言い切るアランさんに苦笑する
そう言えばヘンリーはやたらと連れ出されていたような気がする
俺達はそうでもなかったけど理由があるんだろうか?
「ただ、孤児院で剣や魔法を教えてる事は知らなかったみたい。つまり…」
「その辺を広めれば引き取り手が増える可能性がある…か?」
「そうね。剣に限らず引き取って一から教えるのは大変だけど、基本的なことを理解してる状態で引き取れるのは大きいかもしれないわね」
「同じ適性の騎士の養子になれればきちんと育成までしてもらえるし、騎士になる可能性も高まるんじゃないかと思って」
「どっちにとっても損はなさそうね」
「この件はコーラルとも話しておこう。勿論孤児院側にもだ」
カルムさんが頷きながら言う
今までは引き取り手の無かった場合に冒険者になる子が多かったし、その為の生活魔法や剣、魔法の使い方の育成だった
でも剣や魔法に興味や適性があることで引き取り手が増えるならそれに越したことは無い
「で、3つ目は?」
少し間が開いたタイミングで父さんが先を促した
「薬屋のルーシーさんがケインを弟子にしたいって。ケインも乗り気。一応これを預かってきた」
ルーシーさんから預かった手紙を母さんに渡す
「…ルーシーの素性も聞いたのか?」
「ファシスネーションフラワーの研究をしてることも含めて聞いたし、その事はコーラルさんにも伝えた」
「そうか」
カルムさんは頷いて母さんと父さんが手紙を読み終えるのを待った
「ケインの薬草に関する知識欲と、知識量に見込みがあると判断したらしい。この先ケインが望み、俺達が許可するなら弟子にしたいとさ」
「ルーシーに認められるなんてケインは大したものね?」
「そもそもなんでルーシーの店に?」
「大した理由はないよ。ケインが薬草が見たいって言うからギルドで良質な薬草を扱う店を聞いただけ。その時教えてくれたのがルーシーさんの店だった」
「なるほど?シアの事を分かった上での紹介か」
「今後の事を踏まえて顔つなぎしたいってのもあったんだろう」
「それは充分あり得るわね。で、ケインはどう思ってる感じ?」
母さんはそっちの方が気になるらしい
「行くつもりみたいだ」
「そう…」
「ただ、自分が情緒不安定なのは自覚してるみたいで、一人でも大丈夫だと思えたらって自分から言い出した」
「ケインがそんなことを?」
「ああ。それにシャノン達にそのことを指摘された時もシエラがいるからお兄ちゃんになるって宣言してた」
その言葉に俺たち同様嬉しさと寂しさが混じった複雑な表情をするのは父さんと母さんだ
「ケイン、すごくイキイキしてたよね」
「ああ。そこら中から集められる薬草に目が輝いてたな」
おもちゃを前にした子供と変わらない
ただ、そのおもちゃが薬草なだけ
「少なくとも直近の話ではないだろうからゆっくり話を聞いてやってよ」
「そうだな」
「もちろんよ。ルーシーとも連絡を取りながら、ケインにとっていい結果になるようにしてあげないとね」
「サラサちゃんは子離れの準備をしておかないとなんじゃない?」
メリッサさんの言葉に母さんは苦笑する
ケインがそのうち薬草関係の道に進むのは予想していただけに受け入れられるのも早くて何よりだ
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