110.盛りだくさん
110-1
「で、今回もお前たちの事だから色々あったんだろう?」
帰ってきた翌日、朝から父さん達に捕まった
『弾丸』夫妻が勢ぞろいしてるだけに逃げれる気がしない
ルークとシャノンは早速マリクたちと連携依頼を受けに行って既にいない
前もって知らせていたとはいえ、昨日コーラルさんの屋敷の前で依頼完了するなり俺達と別れた
家には既にマリクたちが待機していて食事だけ受け取って出て行ったらしい
それには流石に母さん達も呆れていた
「まぁ確かに色々あったかな。でもとりあえずチビ達もいるから土産を先に出すよ」
報告はその後に回す
「土産?隣町だろ?」
『弾丸』も何度も足を運んでいるだけに特に目ぼしいものがないだろうと言いたげだ
「俺もそう思ってたんだけどさ」
そう言いながら取り出したのは魚
「え?」
「これ、魔物じゃないわよね?」
「川魚…かしら?隣町に売ってた?どこで捕れたのかしら」
ナターシャさんと母さんが真っ先に食いついた
「山のふもとの湖から流れて来るらしいよ。数は少ないって言ってた」
「でもそれなりに種類は有るのね?これなら湖に捕りに行った方がいいのかしら?」
母さんがそう言った時ケインが俺を見た
さも、思った通りだねと言う表情に苦笑する
「次は野菜。ゴーヤとオクラ」
「初めて聞くわ」
「どんな野菜なの?」
皆興味津々である
「ゴーヤは苦みがあるかな。調理次第で何とでもなるから子供達でも食べれるわ。オクラは食感が面白いの。シア、これもそれなりの量があるのかしら?」
「ああ、店の人に確認して買い占めてきた」
さっきの魚も含めて一部を残して母さんに渡していく
食材に関しては母さんが一番うれしそうだ
「で、こっちもなんだ」
「ライチ?これこそどうやって?」
「やっぱ母さんもわかるよな。南の端から嫁いできた人が苗を移植したらしいんだ。すぐに傷んで捨てるだけだって言うから残ってるの全部引き取ってきた」
「すごくおいしい果実水だったよ!」
ケインが思い出したのか幸せそうな顔で言う
「じゃぁ早速作りましょう。皆で飲んでみないとね」
この様子だと今日中には出来上がるな
「チビ達が楽しめるのはここまでだな」
「え~」
「残念ながらこの後は報告ばっかりだ」
「つまんない。じゃぁリトスと遊んでいい?」
「って言ってるけどリトスはどうする?」
『あそぶー』
肩に乗っていたリトスは皆の頭の上を飛び回る
外に飛び出していくのを見送って俺は再び母さんたちに向き直った
「大きな報告は5つなんだけど」
「5?」
「お前は相変わらず…」
「あ、いつもみたいな俺に直接関わるのは1つだけだから」
そういうと皆不思議そうな顔をした
「まず軽いのから。偶然だったんだけどリンクさんの店に行った」
「お、元気にしてたか?」
真っ先に反応したのは父さんだ
「元気そうだったよ。それで母さんに確認」
「何かしら?」
「昔俺達に作った動物の着ぐるみ?売ってもいいかって」
「あら?あれはレシピとして登録してあるはずだけど」
何でも一時ブームになったらしい
俺は全く覚えてないけどな
「まぁいいわ。今度連絡しておくわ」
母さんが連絡するならこの件は終わりでいいかな
「ところでお前もあいつの店で服を買ったのか?」
「流れでそうなった」
「流れ?」
「…レティたちが俺の服を選ぶと言い出したんだ。結局リンクさん達も選んで5セット買ってきた。ついでに皆でレティの服を選んでそっちも5セット」
「ルークとシャノンは自分で選んだのを1セット、シアが買ってあげてました」
レティが付け足すと皆が吹き出した
これはどうとればいい?
「お前リンクに気に入られたな」
「へ?」
「ヴィアはともかくリンクは気に入った相手にしか服を選ばないのよ」
「冒険者の伝手で訪ねても大抵相手にしてもらえないな」
「そーなのか?」
そんな感じには全く見えなかったけど
「もちろん買うっていうものは売ってくれるみたいだけどね。完全に精算係りに徹するみたいよ」
「シアには自分から選んでやるって言ってたのにね」
レティが呟いた
俺としては嫌われるよりはいいということで気にしないことにした
少なくとも父さん達の知り合いとお近づきになって損することはまずないからな
+-+補足+-+
動物の着ぐるみに関しては「ある日突然『異世界を発展させて』と頼まれました」の「第24話 動物になった子供たち」でお楽しみください
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