17.誘惑

17-1

朝受けた依頼の報告前に依頼ボードに目を通す

「シア、これもあるよね?数足りる?」

シャノンが指さしたのは今週攻略してるフロアのドロップ品の依頼

「あぁ、ギリあるな」

要求は7つでインベントリの中も同じ数

10個とかだったらアウトだな


「やった。コレ手持ちで完了できる」

「え?それ先月のフロアの分でしょう?ルーク手持ち残してたの?」

「うん。最近はシアのマネして全部売るのは控えてるんだ」

ルークの言葉にシャノンがずるいと責め立てる


「シャノンもこれからすればいいじゃん。最近入りが大きいんだし全部売らなくても問題ないだろ?」

「そうなんだけど~」

この様子からすると問題ありってことか?

けど俺らの収入は普通の奴らと桁が違うはず…

武器屋防具を頻繁に変えるルークでも余裕があるのにシャノンに余裕がないこと自体がおかしい

「お前入ったもん全部使ったらとんでもない金額だぞ?一体何に使ってるんだよ?」

「…」

「シャノン?」

黙り込み俯くシャノンの顔をのぞき込む


「賭け」

「「は?」」

「かけ…ってまさか賭博?」

「うん…」

ダメなことは多分分かってるんだろう

だからこそうしろめたさを隠しきれてない


「何でそんなとこ出入りしてんだよ?いつから?」

「1か月くらい前に誘われたの。最初大当たりして10倍になったの!その後は負けてばっかりなんだけど…」

まさかの理由に俺は呆れた


「でも負けた分は取り返さないとって思ったらどんどんはまっちゃって…」

「シャノン、最近ルークとの別行動が増えたのは年のせいだと思ってたけど…それが理由か?」

俺が尋ねるとシャノンは頷いた


「だって絶対反対するでしょ?」

「当たり前だよ。シャノンだってそう思うってことは悪いことしてるって自覚はあるんだろ?」

「それは…」

ルークの尤もな言葉に言葉を詰まらせる


「まさか貯金以外全部消えたとかじゃないよな?こないだのオークの褒賞だって…」

「…消えた。だからその分を取り返さなきゃって…」

最悪のパターンに陥ったわけだ


「これは確実に母さんたちに報告するやつだな」

「やだ!お願いシア、お母さんたちには言わないで」

「それは無理だな」

「シア~」

シャノンが泣きそうな顔で見て来るけどこれは譲ったらダメなやつだ


「未成年を賭博に誘うこと自体が問題なんだよ。そもそもお前をカモにしてる時点で悪質極まりない」

「うぅ…」

「とにかく完了報告して帰るぞ」

依頼ボードを見るのは次回にして今日のところは無理矢理でも連れて帰ることにした


「あら、シャノンちゃんちょっと」

「え?」

職員に小声で招かれたシャノンはさっきの話のせいかビクビクしていた


「ランクアップできるけどどうする?」

「え?本当?」

「ええ」

「あ、じゃぁお願いします」

どうやら周りに配慮した行動らしい

そういやギルマスから周知されてるんだっけ


「何であんな小声?」

「俺の称号の事を報告したからだな。お前らのランクアップも早くなるはずだから」

「なるほど。変に絡まれないようにってこと?」

ルークの言葉に頷いて返す


「シャノンは嬉しいけど賭博の事で素直に喜べないって感じだな」

「シアが黙ってたげれば喜ぶんじゃない?」

「それは無理だな。シャノンの他にもカモがいるはずだし」

「あ~なるほど」

シャノンだけの問題じゃないとわかったらしい

この世界の賭博場は法的に認められてるけど、未成年の出入りは禁止されてる

未成年を入れた賭場は閉鎖を余儀なくされるから滅多に誘われたりはしない

つまりシャノンが出入りしているところは悪質な裏賭博場ということになる

ランクアップを祝ってやりたいのは山々だけど賭博の問題が解決してからになりそうだな

そう思うと少し気が重くなる

俺達は手続きを全て済ませて家に帰った

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る