16.報告

16

希望するタイミングでエンドレスを出現させることが出来るようになった俺達に持ちあがる問題が一つ

どう考えてもランクアップが早くなるってことだ

そこで俺は弾丸と依頼をこなした後に、カルムさんと父さんと共にギルマスと話をしにいくことになった


俺達がギルドに足を踏み入れるなり職員には応接室に通された

後から入ってきたギルマスはこっちを見据えてから口を開いた

でもその目は少し揺らいでる

「…で?」

カルムさんと父さんが揃うとギルマスの顔はいつも引きつっている

昔何か怒らすことでもしたのか?

そう思いながらも聞くわけにもいかず、俺はいつもその様子を見てるだけだ


「シアの事でちょっと報告しとこうと思ってな」

「シアの?報告?」

意味が分からないという顔のギルマスに、この先の言葉を聞いたらどうなるのだろうかとちょっと心配になった


「実はだな…」

カルムさんが言いかけつつも言葉が続かない

「お前らが揃ってるくらいだからとんでもないことなんだろうが…それほどなのか?」

「まぁ…」

父さんが苦笑する


「その…なんだ、こいつの称号に面白いものが追加されてな」

「称号?二つ名が付いたりスキルを極めた時に付くあれか?成人前に増えるなんて聞いたことないが…」

「その称号だ」

「…一体何が?」

「“エンドレスの申し子”」

「は?」

ギルマスは完全に固まった


「これまでシアがかなりの確率でエンドレス引いてたのはギルマスも知ってるな?」

「あ、あぁ…」

「それがシアの望んだタイミングで引けるようになったらしい。先週こいつらが迷宮に潜ったのは3日、エンドレスを引いたのは3回だ」

「…へ?」

あ、ギルマスが壊れた?

カルムさんの言葉にキョトンとしながら間抜けな声を出すギルマス

正直あまり見たくなかったかも

普段の冒険者に怖がられてるギルマスは一体どこに行ったんだ?


「なぁ、そんなことがあり得るのか?」

「信じたい気持ちは分からなくもないが…あり得るから表示されてるんだろうが」

「父さん…」

呆れたように言う父さんに苦笑する


「とにかくだ、そのおかげでシアは勿論ルークとシャノンは、ランクアップの一番のネックになる累計討伐数を稼ぎやすくなるわけだ。マリクたちのパーティーもたまに同行してるみたいだが…そんなに頻繁じゃないから大した問題にはならないだろう」

「ギルドカードに記録される以上不正のしようがないとは言え、変な言いがかりをつけられても面倒だからな」

「…言いたいことはわかった。職員には周知しておく。勿論口外しないという魔法契約も交わしておこう」

「助かるよ」

「あんがと。ギルマス」

俺が言うとギルマスは恨めしそうな目を向けて来た


「何だよ…?」

「…全く…サラサで充分驚かされてたと思ってたんだがな」

「え~」

「サラサとレイも大概だからな。その血を一番濃く引いたシアが平凡なわけがない」

豪快に笑いながらカルムさんが言った


「一番濃くって…」

「ルークとシャノンはまだましだからな。と言っても規格外には変わりないが」

「ひでぇやカルムさん」

「お前は少し自覚を持て。ソロで成人前にBランクになってる時点で前代未聞だ」

「…」

「父さんだって似たようなもんじゃん」

「俺は時々弾丸に同行してたからな。それでもBになったのは成人した後だ」

「実力は成人前からBだったはずだが?」

「…」

ギルマスの言葉に父さんも黙り込む


「やっぱ父さんのせいでもあるじゃん」

「あーうん。そうだな。そういうことらしいからもう諦めろ」

その言葉に俺は項垂れる

変な称号も付いたし流石に自覚はあるけどあんま認めたくない


「ま、こうなったらとことん突き進め」

「そうだな。次は何が出て来るか楽しみにしとくよ」

カルムさんとギルマスがそう締めくくってこの日の話は終わった

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