1.誕生日プレゼント

1-1

“おめでとー”

大勢の声で祝われているのは双子の弟妹の誕生日


この家には20人も住んでるし、今日は別の家に住んでるマリクとリアムも来てるから22人がこの場にいる

改めて数字にするとかなり多いな…


「シアどうかしたの?」

「何でもない」

母さんの言葉に首を振ってこたえながら父さんの横に座る


「俺も酒飲みたい」

「まだ早い。成人してからだな」

父さんはそう言いながら母さんの漬けた梅酒を一気に飲み干した

梅酒はこの世界には存在してなかったけど母さんが作り始めてから爆発的に広まった

特に女性陣に人気が高いらしい


「ルーク、シャノン」

「「何?」」

「これは私達からのプレゼントよ」

母さんはそう言いながら2人にウエストポーチ型のマジックバッグを渡した


「いいの?」

「やった!」

2人は嬉しそうに腰に巻く


「所有者限定と隠蔽を付けてあるからそのタグに魔力を登録してから隠蔽って念じてみて」

「わかった」

「うん」

言われた通り素直にタグを手に取ったちょっと後にはマジックバッグが見えなくなっていた


「なんかずるくね?マリクとリアムもヘンリーも14歳の誕生日にマジックバッグ貰ってたじゃん」

俺は去年の誕生日にそんなもの貰ってない

父さんも母さんも、俺を愛してくれてるのは分かってるけど、これは地味に凹む


「お前にはインベントリを教えてやったろ?」

「あ…」

そう言えばあれ誕生日の時に教えてもらったんだっけ?

確か誕生日の朝に父さんが『今日は魔法を教えてやろう』って言って教えてくれた

魔法は母さんの方が得意だから、いつもなら母さんが教えてくれてたのに不思議だったんだよな


「インベントリは時間遅延があるからマジックバッグより便利だろ?」

「まぁ…確かに」

だから俺にはマジックバッグが無かったのか…


「シアそれをずっと気にしてたの?」

「う…」

母さんの言葉にちょっと気まずくなったのは仕方ないと思いたい

何か無茶苦茶情けない息子になった気分だ…


「上位互換とは言え一人だけ違ったら考えちゃうか。ちゃんと説明してあげればよかったわね」

「…わかったからもういいよ。実際インベントリのが便利なのは分かってるし」

そう言うと母さんは昔から変わらない笑みを見せる

俺は子供のころからその笑顔を見るのが好きだ

この笑顔を見ると不思議と安心して幸せな気分になるから


「お前が成人したら拡張の仕方を教えてやるよ」

「拡張?そんなことできんの?」

「お前の魔力次第だけどな。まぁサラサの血を引いてるから問題ないだろ」

父さんは少し考えてからそう言った

それは滅茶苦茶嬉しい


「これは僕から」

バルドさんがそう言いながら採取用の弁当箱タイプの籠を2人に渡した

これは母さんが以前開発?したもので、今では冒険者の必須アイテムになってる

ただちょっと高いから買うのは後回しになるタイプの道具だ

だってなくても採取は出来るからね


「ありがとーバルドさん。これ、お母さんにねだろうと思ってたの」

「僕もシアが使ってるの見てずっと欲しかったんだ」

「ああ、シアとヘンリーには去年プレゼントしたからな」

バルドさんは笑いながらそう言った


「俺も13の時にもらった気がする」

「俺もだよ。ひょっとして皆で結託してる?」

マリクとリアムの言葉に父さんたちが笑い出す


「やっと気づいたか」

トータさんがニヤリと笑いながら言った


「10歳で魔道具の水筒とランプ、11歳で魔物と薬草の図鑑、12歳でミスリルの剣、13歳でマジックバッグと採取用の籠、14歳で魔力で拡張できるタイプのテント、だな」

アランさんが言う

確かに貰って来た物ばかりだった

マジックバッグ以外だけどな…

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