第32話 ライバル出現
「ビニ公爵家はメドフォード国において非常に影響力がある家柄です。そのため、跡継ぎがいないことは王家にとっても懸念事項でした。しかし、幸いにもライオネルはビニ公爵夫妻を尊敬し養子となり、その爵位を継ぐことを望んでいます」 カサンドラ王妃殿下はボナデアお母様を真剣な表情で見つめ、この提案の重要性を伝えた。
「もちろん、以前からそのようなことになるだろうと予感はしておりました。ですから、ソフィを私個人の養子に迎えたのです。ライオネル殿下とソフィの恋物語が実を結ぶ未来予想図はもう手に入れました。なんの問題もありませんわ」
「ふふっ。私もその未来予想図を期待していた一人です。やはり年頃の男女は親がレールを決めてお見合いさせるよりは、自然に交流させて機が熟するのを待ったほうが良い結果になりますわね」
どうやら、このお二人は私がビニ公爵家にお手紙を送った時から、このような展開を目論んでいたようだった。このような展開とは、もちろん私とライオネル殿下が好意を持ち合うということよ。
次の試練は、私がライオネル殿下に相応しいかどうかを証明するということだった。
「今回のようにビニ公爵夫人個人の養子になるのとは意味合いが全く違うのですよ」
カサンドラ王妃殿下はそう切り出して、さらに説明を続けてくださった。
第二王子がビニ公爵家を継ぐ場合、その妻の選定には王国内の主要な貴族や政治的な利害関係者が、より深く介入することが考えられること。ビニ公爵家の影響力はとりわけ高いので、その継承には政治的な意味合いが強く、適切な妻の選定は王国全体に影響を及ぼす可能性があるということ。そのため、王家は慎重に検討し、様々な要因を考慮して妻を選び、政治的な安定や関係の維持に努力しなければならないということ。
このようなわけで、これからいくつかの試験を王宮で行い、私がその地位に値するかどうかを判断されるということだった。決して気を抜かずに、絶え間ない努力を続けることが、今の私には必要なのだった。でも、それは嬉しい試練で、やり甲斐のあることだと確信できた。
私はますます学業に力を入れ、未来のビニ公爵夫人になるべく努力を重ねていたある日、メドフォード国の北に位置するカロライナ王国から王妹カメーリア殿下が文化交流と友好関係の促進を目的として、メドフォード国を訪れた。
彼女はメドフォード国の豊かな歴史や芸術、音楽、政治に興味を持っており、それに触れる機会を求めていた。この視察の一環として、メドフォード国の宮廷で行われる公式なイベントや文化プログラムに参加し、国同士の友好関係を深めるための交流を積極的に行った。
文化プログラムでは、美術展示、音楽コンサート、伝統的な舞踏、料理の試食、ワークショップなどが催された。その際、ライオネル殿下は絵画を出展し、王立音楽会ホールでヴァイオリンを演奏することになった。
王立音楽会ホールの中にはたくさんの貴族と招待客が座り、ライオネル殿下の演奏を待ちわびていた。その中央に立つライオネル殿下は、堂々とした姿勢でヴァイオリンを抱え、その楽器を繊細に奏でる。
最初の音が響き渡ると、ヴァイオリンの音色が大ホールを満たし、ライオネル殿下の指は弦を巧みに操っていく。演奏は情熱的で感情豊かであり、聴衆を引き込む力にあふれていた。
彼の金髪は柔らかな照明の下できらめき、青い瞳は深い海のような神秘さを秘めていた。いつにも増して、ライオネル殿下の素晴らしさが際立っていたのよ。
ホールに響く心を揺さぶるような芸術的音色に、すっかり私の心は魅了された。けれどその麗しい容姿と、奏でる美しい旋律は、王妹カメーリア殿下の心をも鷲づかみにしてしまったのだった。
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