臆病な蛹

仁城 琳

臆病な蛹

ひとりぼっちの蛹がいました

仲間はみんな飛んでいきました


花が尋ねます

どうしてあなたは蛹のままなの


蛹は答えます

何にもなれないと嫌だから


どうして何にもなれないと嫌なの

何にもなれないことは虚しいから


飛び回る仲間が羨ましくないの

本音を言うと羨ましいけれど


だったら飛び出せばいいのに

できればこんなに悩んだりしないよ


このままで良いの

良くはないけれど


このままだと後悔しないの

するかもしれない


何もせずに終わっていくの

それも嫌だ


何もしなければ何にもなれないままだよ


蛹はようやく蝶になりました

大きな羽根を羽ばたかせ

ゆっくりと飛び上がります


蛹から飛び出して見た景色はとても素敵で

臆病だった蝶は自分を笑いました


何にもなれなくてもいい

だって世界はこんなにも色鮮やかで美しい




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