魔族マートへようこそ!堕ちモノと卒論編
魔族のためのコンビニエンスストア、魔族マート。
そこへお使いに行かされた人間と意識高い魔族店員の
サクッとできるホラーコメディです。
だいたい10分くらいです。
※内容が変わるほどの改変不可。
※両役共に性別不問。一人称、口調変更可。
<登場人物>
・店員
魔族マートの学生アルバイト。高圧的、意識高い魔族。
・客
先日リストラされて無職、友人、恋人共に無し。
家族には縁を切られている。
----お話はここから----
-魔族のためのコンビニエンスストア、魔族マート
店員:いらっしゃいませー!
魔族マートへようこそ!
客:すみません、これってありますか?
メモもらったんですけど文字読めなくて…
店員:ん?このやりとり…最近多いんですよねー
なんで読めない文字のメモ持たされてるんですかね?
なに?バカなんですか?
客:なんだこの人、こんなに困ってる客に対してすんごい失礼!
店員:この人?この私を下等な人間風情と同列にするとは…
あなたこそ失礼極まりないですね
客:下等な人間風情??あんた何言ってんだ?
店員:あなたこそ何を言ってるのかさっぱりですね
客:(すごく食い気味に)というか、買い物頼まれてるんです!!でもメモが訳わかんなくて!!
店員:いきなりすごい勢いでめちゃくちゃぐいぐいきやがりましたね、この人間…
客:店員さんがめちゃくちゃ失礼だけど…もう、なんでもいいや
早く買い物終わらせて戻らないといけないんですよー
店員:あなたの事情はどうでもいいですが、
店舗の売上は必須ですので承りましょう
…本当は下等な人間風情に我々魔族が接客するなんて
魔界中でもこの魔族マートだけですよ
客:ん?…魔界中?
店員:(めっちゃ食い気味に)そう!!この魔族マートの入っている魔族マートアンドホールディングスは魔界の企業の中でも超超超大手!!
客:な、なんだいきなり!!目の色が変わったぁ!!
店員:我が子に働いて欲しい企業ランキング、就職活動に有利なアルバイト経歴ランキング殿堂入りの魔族マートアンドホールディングスで働いているこの私も魔族の中でもエリート中の超超超エリートなのです!!
客:あー、あれかな?エイトイレブンアンドホールディングスのような大企業なのかな?
店員:ちなみに、人間界のエイトイレブンアンドホールディングスは魔族マートアンドホールディングスが暖簾分けをした企業です、はい
客:え?!!人間界の超大手企業って魔界発信なの?!っていうか魔界ってどこだよ!!
店員:ええ、そうですよ!!
誇り高き我ら魔族の方が人間よりも種族としてはるかに歴史があり、比べ物にするなんておこがましいほど種族として優れているのです!
客:(ボソッと)…この人本当疲れるなあ
店員:なにかおっしゃいましたか?
客:いえ、別に…
というか話戻させろや!!買い物頼まれてるんです!!でもメモの文字が読めなくて困ってるんです!助けてください!!
店員:あー、あなたメモの文字すら読めない下等な人間ですもんね
今は勤務時間内ですので、対応しますよー…仕方ないんで、本当は魔族相手にしか接客なんてしたくありませんけど…あ、メモ借りますねー、少々お待ちくださいませ
客:我慢…我慢…我慢だ…ぐっ……!!
それにしても目が覚めてからおかしな事しか起きてないんだよな…
風邪で自分家で寝込んでただけだったはずなのに、気付いたら病院というか診療所みたいなとこにいて…
客:お医者さん…だよな、目の前にいたの…色白で少し耳がとんがっていたような…まあ、美人だったから悪い気はしなかったなあ
でも誰が寝込んでた俺を運び出したんだ??…先日リストラされて無職、友人、恋人共に無し、家族には縁を切られたし…
店員:(被せて)あなた、相当なアレですね
客:わ!いきなりなんなんだ!!
店員:おっと、失礼しました
客:びっくりさせないでくださいよ!しかも相当なアレってなんなんだよ!とりあえず悪口ってことはわかるけど!!
店員:先ほど無職と聞こえましたが、これらの支払いは出来ますか?
客:メモの物用意してくれたんですね、ありがとうございます
支払いはー…えーと、いくらですか?というかメモと同じで「円」じゃないとか?
店員:はぁ(ため息)…あなた、何語で話してます?
客:日本語………あ!
店員:下等な人間はこれだから嫌なんです
客:なんだろう…めちゃくちゃ悔しい!!
…お?電子マネー使えるんだ
店員:人間に出来て魔族に出来ないことはございませんので
-ピッ
客:チャージ金額内で助かったー、あとで買い物金額を現金で返してもらおう
店員:電子マネーで頂きました
このご時世にエコバッグも持っていないのですね…まあ、当店の売上になりますから別に良いですけど
客:エコじゃなくてすみませんね!
でも、すごく助かりました!ありがとうございました!
店員:礼節はわきまえているようで…当店のご利用、誠にありがとうございました
店員:それにしても、最近本当に増えましたね
瀕死の魂を魔界へ連れてきて自分の配下にしようとする悪い魔族の方が…
あの人間、いま自分がどのような状況にいるのか分からないまま買い物へ行かされたのでしょうね
客:えーと、ここの角を曲がって…
それにしても懐かしいな
まさか運ばれた先が卒業した大学の近くだったなんて
学生時代、あの中華料理屋へよく行ってたなあ
店員:人間界と魔界の地理が瓜二つというのも、難儀なものですね
客:暖簾かかってる!これは営業中だな!少し寄り道させてもらおう
ラーメン一杯五百円は変わらずかー、いやー助かる!
店員:人間が魔界の食べ物を口にしたらどうなるか…
客:店の人は変わってるけど、この店のラーメンの良いにおいは変わらないな
店員:ちなみに魔族は人間、とくに人間界の日本在住者よりも美食家です
余談ですが魔界の旅行では「人間界日本ツアー」が一番人気なのですよ
客:ぷはーっ!これこれ、この味!
人は変わっても店の味は変わらないねー
店員:さて、そろそろ退勤時間ですね…
この後は帰宅後、卒論を仕上げなければなりません…学生時代よりアルバイトで魔族マートアンドホールディングスへ貢献し、就活を有利に!エリート魔族は学生時代から私のように努力家だらけなのです
客:美味しかったー!小銭があったから半チャーハンも追加しちゃったなあ……今月から収入はゼロだけど…体と心は温まったから良しとしよう、うん
店員:あの人間、道中で魔界の食べ物を口にしていたらどうなりますかね…
客:…あ……え?……目眩が…
店員:私たちと同じ誇り高き魔族となるか
客:頭が、頭がぁ!!……ぐわんぐわんして、……気持ち悪い!!
店員:人の形を失くし魔に堕ちるか
客:…だ…だ、誰か……たす…けて……
店員:おや?先ほどのお客さ…
いえ、今の私は魔族マート店員ではありません、いち学生です
客:…あ…あ、んた…さっき…の……クソ失礼な…コンビニ…店員……
店員:クソ失礼とは失礼な
客:なあ、…助け…て…くれ…!!
店員:あなた、何か口にしました?
客:は?…な…んで分かる…んだ…?
店員:なんでって、あなた自分が今どんな状態になっているか
わかってます?
客:…どんな状態…って?……とにかく救急車!!…
助けて…くれ…、気持ち悪くて立てないんだ……
店員:はぁ(ため息)…そこの店のショーウィンドウに映った自分の姿を見てみてください
-ショーウィンドウには変貌した姿が映っている
客:…お……おい……な、なんなんだよ!!…これ!!……自分が一体何をしたって言うんだよ…!!……なぁ、助けてくれよ……!!
店員:文句なら、あなたの魂を魔界へ連れてきた魔族へ言ってください
客:は?…魔界?……ま、魔族…?何言ってんだ?
店員:お可哀想に…本当に何も知らないのですね
ですが、人間界でも言うではありませんか
客:…何をだよ……
店員:「知らぬは罪」と
客:あんた…俺に恨みでもあんのか?
店員:はい?おかしなことを言いますね
誇り高きエリート魔族の私が、あなたのような下等な人間の知り合いがいるわけないじゃないですか…知り合いでもないのに恨むなど、それこそ外道です
客:…なんでもいいから!!…早く…はやく!ハヤク!!!タスケテ…クレ…
-客、気を失う
店員:これが噂の「堕ちモノ」ですか…
「堕ちモノ」とは、人間ではなくなったモノのことを指します
私の卒論の内容に共通項があるので、使わせて頂きますね
人間界ではクズ同然のあなたがこの誇り高きエリート魔族である私の役に立てるのです…良かったですね
店員:私はそろそろ失礼します
魔界へお越しの際は食べ物にお気をつけてくださいね、では…ククククク…(笑)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます