ショートサシ劇台本

HARIKOMI・スタイル

ベテラン先輩刑事と新米刑事の張り込み現場での話。

コメディサシ劇、10分ほどです。

※どちらの役も性別不問です。

※一人称変更可。

※アドリブ大歓迎。

※内容が変わる程の改変は聞き手さんに優しくないので不可とさせて頂きます。

＜登場人物＞

・カブラギ

先輩刑事。ツッコミ。

一人称、口調変更可。

・ホリゴメ

後輩刑事。いろいろずれている。

－－－－お話はここから－－－－

－張り込み四日目

カブラギ：毎回すまないな、ホリゴメ…

ホリゴメ：いえ、余裕です！先輩！

カブラギ：ホリゴメ…これは一体何の冗談だ？

ホリゴメ：ん？どうかしましたか先輩？

カブラギ：あのな、買ってきてもらってる立場でこんなこと言うのはお門違いなんだが…

張り込み始めて四日目の朝、

その前の三日間の朝昼晩含め合計十食…

カブラギ：なんで毎食アンパンと牛乳なんだよ！！！私は気が狂いそうだよ…

ホリゴメ：え？先輩、張り込みといったら…

カブラギ：お前、刑事ドラマじゃないんだよ

別にアンパンと牛乳が悪いと言っている訳じゃあないが…普通に弁当と茶でもいいんだよ

ホリゴメ：先輩、自分はやるならとことん形から入るタイプなんで！

カブラギ：おいおい…趣味始める初心者じゃあないんだ、形から入るって…お、お前…

ホリゴメ：先輩、今気づいたんですか？

自分、刑事になったらこのカーキグリーンのモッズコート着るって決めてたんで！

ホリゴメ：夜は使えませんがこいつも携帯してます！(サングラスを出す)

カブラギ：はぁ…(深いため息)

ホリゴメ：あとこれも！コルト・ガバメントです！

カブラギ：……(深いため息)…ん？！！

ホリゴメ：これすごくないですか？！手に入れるのすんごく大変で

カブラギ：お前、ホイホイとチャカ見せびらかすんじゃあねえ！

ホリゴメ：わ、先輩！危ないですよ！

カブラギ：没収するぞ

ホリゴメ：大丈夫です、これモデルガン型のライターなんで、ほら

カブラギ：…そんな重たいライターよく持ち歩けるな

というかお前、仕事中にカチャカチャうるさいのそいつのせいか？

しかも右側ポケットがやたらと下に引っ張られてるし、この前なんか走りで逃走中のホシを逃すし…

ホリゴメ：すみません、先輩！コルト・ガバメント重くて、走るときコートばさばさするじゃないですかー

そうすると右ポケットに入れたこいつが足にバンバン当たってめっちゃ痛いんですよー

カブラギ：お前…筋金入りのあれだな…

ホリゴメ：ん？あれとは？

カブラギ：はぁ…(深いため息)

ホリゴメ：先輩、さっきからため息ばっかですねー

カブラギ：誰のせいだよ！

ホリゴメ：まあまあ、まずは朝食食べましょうよ

腹が減っては張り込みも出来ませんよ！

カブラギ：…ホリゴメに罪はあるがアンパンと牛乳には一切罪はない…

ホリゴメ：自分になにか罪状上がってるんですか？

カブラギ：だぁーー！！もう！とりあえず黙って朝メシ食え！

ホリゴメ：了解っすー！

カブラギ：了解っすー！じゃねえんだよ、ノリが軽いし後輩なのに先輩に敬語じゃねえし

ホリゴメ：先輩…

カブラギ：あ？どうした？

ホリゴメ：…このアンパン…(小刻みに震える)

カブラギ：おい！ホリゴメ、しっかりしろ！

ホリゴメ：ウグイスあんです！！！

カブラギ：見て買ったんじゃねえのか！

ホリゴメ：アンパンという文字しか目に入ってなくて…その…すみません…

カブラギ：別にいいわ、むしろ若干違う味のアンパンでホッとしてる自分自身に腹が立つわ！！

ホリゴメ：先輩ほんとは北海道十勝産の小豆使ったアンパンじゃないと嫌ですよね？？

カブラギ：ん？いや、ウグイスあんでいいよ

ホリゴメ：でいいよって妥協してるじゃあないですか！！！

カブラギ：妥協してねえよ

ホリゴメ：すみません！自分、コンビニに行って返品交換してきます！

カブラギ：おい！落ち着け！

ホリゴメ：小豆のアンパン以外アンパンじゃないって…警部補が言ってました！

カブラギ：警部補、いつの間に余計なことこいつに吹き込みやがったんだ？

ホリゴメ：とりあえず自分行ってきます！！

カブラギ：お前！これ以上持ち場を離れるのか

ホリゴメ：はい！

カブラギ：ここでその元気な返事はいらねえんだよ！戻れ！

ホリゴメ：新米刑事の自分にとって警部補の意見は絶対なんです！

カブラギ：この現場は私が指揮してんだ、まず私の意見を聞け！

ホリゴメ：先輩、…

カブラギ：私は部署で何と呼ばれている？

ホリゴメ：カブラギ巡査部長…です

カブラギ：警部補がいないこの現場では私がトップだ、落ち着け、ホリゴメ

ホリゴメ：なおさらウグイスあんのアンパンはダメじゃあないですか！！！コンビニ行ってきます！！

カブラギ：ホリゴメーーー！！！

カブラギ：走ってるのにやたら遅い！！

カチャカチャうるさいのこっちまで聞こえてきやがる！

しかもコートのサイズ感間違ってるから風の抵抗受けまくって、ただでさえ遅い走りに拍車がかかってる！

－ホリゴメ、戻ってくる

ホリゴメ：はぁ…はぁ…

カブラギ：ホリゴメ戻ってきてくれたな…

ホリゴメ：…先輩、自分…

カブラギ：ん？

ホリゴメ：…もう…走れません…

カブラギ：馬鹿野郎！

ホリゴメ：とりあえず…朝食のアンパンと牛乳、飲み食いしてもいいですか？

カブラギ：早く食え！！

－犯人が建物から外を見渡す

ホリゴメ：先輩、めっちゃ怪しまれてませんか？

カブラギ：…くっそー

ホリゴメ：自分たちただ朝食食べてるだけなのに

カブラギ：その朝食からさっきのドタバタは始まったんだがな…

ホリゴメ：先輩、北海道十勝産の小豆使ったアンパンじゃないうえにウグイスあんのアンパンだったからって怒りすぎですって～

カブラギ：論点はそこじゃあねえんだよ…

ホリゴメ：あれ？犯人窓開けましたよ

カブラギ：気付かれたか？！

ホリゴメ：窓から逃げるんですかね

カブラギ：あそこ五階だぞ…足場になるようなものも外壁にないのに…どうやって降りるんだ…？

ホリゴメ：外へ向かって何か投げました

カブラギ：おいおい、こっちに何か向かってくるぞ

完全にこっちに気づいていやがるじゃねえか…

ホリゴメ：おっと！危ない！

カブラギ：ナイスキャッチ、ホリゴメ！

ホリゴメ：どういたしましてです！

カブラギ：で、その投げられた袋の中身は？

ホリゴメ：赤飯にぎりとほうじ茶のペットボトルが二つずつ入ってます

カブラギ：…あの野郎、嫌がらせか？

ホリゴメ：めっちゃ良い人じゃないですかー、もぐもぐ…(赤飯にぎりを食べる)

カブラギ：お前！犯人から投げられたもんだぞ！よく食えるな！！

ホリゴメ：いや～、正直アンパンと牛乳以外のもの食べてなかったから、ありがてえな〜って…もぐもぐ

カブラギ：毒とか盛られてたらどうするんだよ！警戒心ゼロだな、お前！

ホリゴメ：毒？盛られてたらそんときはそんときです…もぐもぐ

カブラギ：いつまで食ってるんだよ！

ホリゴメ：先輩、ご飯は最低二十回は噛まないとダメですよ…もぐもぐ

カブラギ：食うのも走るのも遅くてなんで張り込みこいつに任せたんだよ警部補！恨むわまじで！

ホリゴメ：ゴクゴク…プッハー！うまい！…あれ？これほうじ茶の味じゃない…なんか…頭が…

カブラギ：おい！ホリゴメ！！しっかりしろ！！吐き出せ！！

－犯人が窓からロープを使って降りてきた

カブラギ：ホリゴメ！！チクショー！！

ホリゴメ：…先輩…

カブラギ：お前はとりあえずさっき食ったもん吐き出せ！それと救急車呼べ！私はホシを追う！！

ホリゴメ：自分に…犯人確保、行かせてください！…

カブラギ：ホリゴメ！ダメだ！！

カブラギ：ホシの野郎…！！絶対この手で捕まえてやるからな！！

ホリゴメ：うぉおおおおおらぁあああああああ！！！

カブラギ：ほへ？

ホリゴメ：待てやオラァあああああああああ！！！

カブラギ：…うそだろ？！足のクソ遅いホリゴメがあんなに速く走ってやがる…！！

ホリゴメ：チャーチャラチャッチャッチャッチャーチャラチャッチャッチャー(鼻歌)

カブラギ：踊れない大捜査線のテーマを歌いながら追いかけて…！

カブラギ：お！ホシを捕まえた！

－ホリゴメに駆け寄るカブラギ

カブラギ：ホリゴメ、よくやった！

ホリゴメ：チャーチャラーチャーチャーチャチャーラッチャーデデテンチャーラッチャーチャーラッチャー(鼻歌)

カブラギ：今度は太陽に吠えないのテーマ…

ホリゴメ：先輩！犯人確保っす！

カブラギ：お前、ホシが投げたペットボトル持ったままなうえに

サイズ感間違ってるコートにクソ重いコルト・ガバメント型ライター入れてよくあんなに走れたな…

ホリゴメ：それが自分でも不思議で…てへっ☆

カブラギ：なんかお前エナジードリンク臭いぞ

ホリゴメ：先輩ー、人のこと臭いとか酷くないですかー

カブラギ：このペットボトルか…このニオイは……はっ！

ホリゴメ：どうしたんですか、先輩？

カブラギ：これの中身…レッドブルッテルじゃねえか！

あの羽根を授けるってコマーシャルやってるあれじゃあないか！

ホリゴメ：ほおおお…自分それ飲んだから光の速さで犯人確保出来たんですね！

カブラギ：それでいいのか…？…まあ、良いってことにしよう…

最近の新米刑事、やるときはやるんだな…

ホリゴメ：(Ｍ)この事件以降、自分の勤務する刑事課では、張り込みの定番が朝食のみ赤飯にぎりとレッドブルッテルになりましたとさ☆

ホリゴメ：レッドブルッテル～羽根～を授けるぅ～(鼻歌)

－完－