全てを愛して見せますわ

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第1話



「俺は、真実の愛を見つけることが出来た!!ずっと、胡散臭い笑顔を浮かべ、説教たれるような女はいらん、婚約破棄だ!!」

「キャー格好いいーーフレッドーーー!!」


あら?そんなに大きな声を出されなくても、すぐ近くにいるのですから、聞こえますわ~。

広間に響くほどの大きな声で私に婚約破棄を突き付た方は大陸の覇者であるインダミア帝国の唯一の王子で皇太子であるアルフレッド様。帝室特有の輝く金髪と淡いエメラルド色の瞳をお持ちで、幼い頃から、注目を一手に集められております。


お隣で同じように、大音声を発していらっしゃるのは、男爵令嬢のマルガさん。桃色の髪をお持ちで、とても愛らしく、男性の方々が見とれていらっしゃいますわ。


「な、殿下....それはどういうこ「黙れ!カイル!!主の言うことくらい、黙って察しろ!」


殿下も、難しいことをおっしゃいますわね~。カイルも困っていらっしゃいますわ。カイル様は殿下の側近で帝国の近衛団長子息。真っ赤な髪と蒼い瞳が特徴で、剣はもちろんのこと、たくさんの武術に精通していて、とても頼りになるお方。お屋敷も近く、幼い頃から交流があり、今でも仲良しさんですわ。


「主が間違っている行動を起こしたときにお止めするのも、側に仕える者としての使命でございます。」

「.......何を言うのかと思えば......俺が間違っていると!?無礼であるぞ!!」

「カイルの言うとおりでございます。どうか、お考え直し下さい。」


ざわざわ........

「ソフィア様と婚約破棄だなんて.......考えられませんわ」

「一体何をお考えなのか??」


カイル様に続いて、宰相子息のジュード様。そして、この夜会にお集まりの方々も続々と声を上げます。帝国の将来についてこんなにもたくさんの方々が声を上げて下さるなんて......!!帝国の将来も安泰ですわね。


「黙れ!!皆はソフィアの本性を知らぬから、そのようなことが言えるのだ!!ソフィアは、俺とマルガの関係に嫉妬し、マルガに対して、悪質ないじめをしていたのだ!!帝国の将来の皇后が嫉妬に溺れるなど、言語道断!!また、権力を振りかざし、下の立場の者をいじめるなどあってはならないことである。よって、ソフィアを、国外追放とする。」


「なっ................殿下!もう一度、お考え直しを、殿下!!」


私、マルガさんをいじめるなんて事しておりませんし、そんなことに興味は無いのに、何を殿下は何を勘違いなさっているのかしら?


「ソフィア嬢からも何か、言ってくれ。」「お前、馬鹿!!」


ジュード様に話を振られてしまいましたわ。カイル様も何か言っておられますが、この際、気にしないでおきましょう。では、失礼して.......


「あらあら、大変ですわ~~~。」


ドテン!!


何故か、皆様こけていらっしゃいますわ。怪我が無ければ良いのだけれど.......


「なんで、こんなにも能天気なんだ.........!!君は、今の状況を理解しているのか!?」


一番派手にこけながら、カイル様が私に問われました。転ばれる事なんて滅多に無いのに.........疲れていらっしゃるのかしら?


「もちろん理解しておりますわ。けれど、殿下がそうお考えならば婚約破棄で全然構いません。真実の愛を邪魔する悪魔になんてなりたくないですもの。ですが、マルガさんへのいじめは、私は関わっておりません。具体的な証拠も無く、私をいじめの犯人にされても、それで国外追放とされても困りますわ。」


「ぐぬぬ........」

「で、でも、確かにソフィア様は私に嫉妬して、いじめを........「まぁ、こんなにも愛らしいマルガ様をいじめるわけがありませんわ。きっと勘違いをなっさておられます。」

「...............ちっ」


舌打ちが聞こえたような気が........まぁ、よろしいですわ。私はただ、夜会を楽しみたいだけですのに、何故こんなにも話を延ばすのかしら?だんだん気が遠のいていきますわ~。


「婚約破棄は承りました。これからも、皇太子殿下のご健康をお祈りすると共に、幸多からんことを願っております...........暗いお話はこれまでにして、食事を楽しみませんか?美味しそうな物を前にして食べれないなんて、それこそ悪魔の所業ですわ。せっかくですし楽しみましょう!」

「ソフィア.......君は本当にそれで良いのか?君の今までの努力を無下にされ、冤罪までかぶせられたのに、婚約破棄を受け入れるなんて。」


カイル様が私をいたわるような、それでもって芯の強い声で私に尋ねられました。

確かに、皇太子妃......ゆくゆくは皇后として厳しい毎日を送り、血のにじむような努力をして参りました。また、皇太子としての自覚が薄い殿下への小言もたくさん言いました。だって、そうしろと......帝室に嫁ぐ者は伴侶の行いを常に確認し、支え、正すべきだと幼い頃から言われてきたんですもの。ずっと。

けれど、殿下が私を不必要と申されるなら、お力になれなかった私に非があります。

あぁ、殿下を早く解放して差し上げねば!


「カイル様、私は大丈夫ですわ。殿下の気持ちが第一ですわ!!

婚約破棄、了承いたしましょう。私がここに宣言いたしますわ。では、殿下。書類を近日中に準備し帝城にお送りいたしますわね。」


「あ、ああ。やっと、お前から解放される。さっさと俺たちの前から消えろ。そして、二度と姿を見せるな!!」


「はいーはいですわ~。」


周りの方々は呆然として黙り込んでいらっしゃいます。


「ソフィア..........................」


カイル様!そんな、この世の終わりみたいな顔しないでくださいまし。

心配して下さるのは嬉しいけれど、私は本当に大丈夫ですわ。




だって、私が皇后になるのはもうですもの。

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